『たまごの旅人』~近藤史恵
新人添乗員さんのお仕事小説。本当に添乗員さんってたいへんなお仕事だと思う。どの業界だって、わがままなお客さまはいるけれど、海外旅行となると、他のお客さまにも影響することもあるし、それを添乗員さんが解決に努力する姿には頭が下がる。まったく違う話だが、コンビニエンスストアであまり日本語が話せない外国人の方がワンオペで対応していることがあり、お話が通じなくても働いてくれてありがとうと思ってしまうこともあれば、日本人でも、もう少しどうにかならないのかなと思うこともある。旅に出かけられない今、この本を読むと海外旅行気分を少し味わうことができた。日本人の98%が行かない国、スロベニアが印象に残った。私も98%の中の一人で終わると思うので、小説の中だけでも気分を味わえてよかった。たまごの旅人 [ 近藤 史恵 ]イタリアに2回行ったが、2回とも添乗員さんのことはよく覚えている。1回目はJTBのツアーで、名前まで憶えている。添乗員の仕事がいかに大変かという話をしてくれた。全体に向けてではなく、個人的に聞いたお話。本当にそうだよなぁ~と。この方は派遣ではなくJTBの社員だった。普段は海外の添乗だけど、北海道のツアーに添乗して、本当に心からこれは「ご褒美」だと思ったと笑っていた。ヘビースモーカーなので乗り継ぎの空港に着くと喫煙者をタバコの吸える場所に案内していた。労働時間が長すぎて、時給にしたらかなり安くてやってられないと話していたなぁ~。2回目はHISで、こちらの方はたぶん派遣。イタリア語が堪能で、バスの運転手さんとやり合っていた。イタリア語がわからなくても、喧嘩しているのは見ていてわかった(ツアー客のために)が、最終的には和解したようでドライバーさんも笑顔になっていたのを覚えている。自由行動でも、希望者の人には美術館を案内してくれたり、レストランの予約もしてくれた。お酒が大好きだったようで、ペットボトルを持参するとワインを樽から量り売りで格安に買えると教えてくれて、実際に実践されていた。私たちはやらなかったけど。次の日、さすがに飲み切らなかったわと話していたっけ。どちらのツアーも小説に出てくるような困ったお客さまはいなかったと思っているけれど、ヨーロッパの伝統的なホテルは、部屋がみんな違って、部屋割りにも気を遣うと話していた。ツアー客同士が仲良くなると、お互いの部屋を行き来して、こっちの部屋の方が広いとか文句を言われることもあるそうで、狭い部屋の次は広い部屋にしたりとなるべく平等になるようにはしているとのこと。飛行機の座席も同様。もしまた添乗員さんがつくような海外旅行に行くことがあったら、添乗員さんになぜこの仕事を選んだのかを聞いてみよう。