カテゴリ:Day
明るく照らされた水槽の中を熱帯魚が泳いでいる。
あるものは光りに己の身を輝かせ、 あるものは鮮やかな衣をひらひらなびかせながら、 1m四方の閉ざされた海の中を泳いでいる。 そんな熱帯魚の泳ぐ様をぼんやり眺めていたら、 店の入り口あたりが少し騒がしくなってきたことに気付いた。 顔を向けると、浴衣を着た女性が何人もいる。 店員が次々と席に案内していくが、浴衣の群れはどんどん入ってきて、 あっという間に入り口あたりに順番待ちの混雑ができる。 ちょっとしたラッシュアワーを眺めていたら、 この近くで花火大会があったことを思いだした。 花火見物の帰り、仲間たちのおしゃべりや混み合う電車を避けるために この駅前のファミレスに立ち寄った人たちなのだろう。 順番待ちの群れはどんどん膨らみ、中には店に入ってもすぐに立ち去る人も出てきた。 それを見ていると、大きなテーブルを独り占めしていることに少し罪悪感を覚える。 僕は伝票を手に、レジへ向かった。 車に戻りながら、振り返って店のほうに目を向けると、 明るいガラスの中は、鮮やかなTシャツや浴衣が行き交う。 それを見ていたら、さっき見た水槽の熱帯魚が重なった。 あの熱帯魚たちは、ここでしばし泳いだ後、 水槽から放たれるのだろう。 夜の海へ向かって。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.08.03 01:02:37
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