カテゴリ:Day
朝、
出勤前に少し歩いていると、どこかからピッコロのような鳥の声が聞こえてくる。 聞き慣れない声のほうを見ると、電線にツバメが止まっていた。 ツバメは短いタンギングを繰り返しながら、まるで留守の間にこの辺りがどう変わったのか 確かめるように周囲を見回し、それが済むとすーっと電線を離れ、別のところに飛んでいった。 ツバメが立ち去った方に目をやると、白い花の間から青々とした新芽が顔を出している桜が並んでいた。 夜、 そぼ降る雨の中を歩いていると、足下で何かが跳ねるのが目に入る。 立ち止まって目をこらすと、そこにいたのは小さなカエル。 カエルはしばらく身を潜めるようにじっとしていたが、やがてまたぴょんぴょんと跳ねると、 道路脇の生け垣の中に消えていった。 カエルが最初にいた辺りを見ると、小さな水たまりに桜の花びらが散っていた。 見上げても、見下ろしても、春。 この気持ちはなんだろう 目に見えないエネルギーの流れが 大地からあしのうらを伝わって 僕の腹へ胸へそうしてのどへ 声にならいさけびとなってこみあげる この気持ちはなんだろう 枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく よろこびだ しかしかなしみでもある いらだちだ しかもやすらぎがある あこがれだ そしていかりがかくれている 心のダムにせきとめられ よどみ渦まきせめぎあい 今あふれようとする この気持ちはなんだろう あの空のあの青に手をひたしたい まだ会ったことのないすべての人と 会ってみたい話をしてみたい 明日とあさってが一度にくるといい 僕はもどかしい 地平線のかなたへと歩きつづけたい そのくせこの草の上でじっとしていたい 大声で誰かをよびたい そのくせひとりでだまっていたい この気持ちはなんだろう 谷川俊太郎「春に」 *この詩に作曲家の木下牧子さんがこんなメロディを付けています。一度聴いてみてください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.04.12 00:14:30
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