昨日の言い訳と補足 そして 教師としての怠慢
昨日の日記を書いた後、この日記を読んで定時制はヒマなところかと思う人が出るのではないか、と、ちょっと心配になった。確かに生徒が来るまでの職員室はのんびりした空気が流れていることはあるが、それはあくまで「生徒がいないから」であって、5時以降は結構忙しい。生徒の相手や親との応対、他校との打ち合わせなど、書類作成などの事務仕事以外のものが、ほとんどが5時以降に集中するのだ。また定時制自体ギリギリの人数で動かしているので、誰かが出張や年休で休むと、途端に人手が足りなくなる。実際、今月に入って、全員が最初から最後まで揃っていたのは数えるほどしかない。先週などは3人も出張でいない日が3日もあって、授業変更やいない先生の代役など、ほとんどてんてこ舞い状態だった。教頭はしょっちゅう人手が足りないとこぼしているが、急に教員が増えることは望み薄だし、この先だって人数が減ることはあって増えることはまずないだろう。また、5時までがのんびりしているというのは、あくまで僕が勤務する学校の場合であって、5時前も忙しいという学校も少なくない。僕の知り合いには、定時制での仕事や人間関係(生徒や同僚教師)のストレスで体調を崩し、入院しているのがいる。定時制はヒマな職場でもないし、楽な職場では決してない。ヒマでも楽でもないが、定時制は全日制以上にのんびりした雰囲気が必要だと思っている。ある生徒がいる。その子は何かと用事を作っては職員室を訪れ、授業が3時間で終わる日などはぶらりと職員室にやってきては、手の空いてそうな先生を捕まえて9時までおしゃべりしていく。先週、3人の先生がいなくててんてこ舞いだった日、その子が職員室にやってきた。その時職員室にいたのは教頭と僕だけで、教頭はよそからかかってきた電話の応対をしていて、僕は今日中にまとめなければならないデータをExcelに打ち込んでいた。その子は僕の横に座り、何かと話しかけてくる。僕は彼の相手をしながらも、気持ちはPCの画面に集中していた。そのうち僕が身を入れて聞いていないことに苛立ったその子は、わざと大きな音をたてて椅子を片づけると、「なんか、すげー感じ悪い」そう言って職員室を出て行った。その子は、クラスメイトに対して距離をとってしまうことが多く、教室ではちょっと離れたところで一人でいることが多い。その子にとって、定時制で安心できるのは、教師と話している時だけなのだろう。教師であっても話し相手がいるということで、学校の中に居場所があると感じているのかもしれない。それなのに、僕は仕事の忙しさにかまけて彼の居場所を作ってやれなかった。ピリピリ忙しそうにしていては、生徒も近寄りがたく感じ、拒否されていると思う生徒だって出るかもしれない。生徒が安心して何でも話せるよう、教師は敵ではなく味方なんだと思ってもらえるよう、定時制にはのんびりした空気がなくてはならない。今はそう思っている。翌日、その生徒は授業が終わるとまた職員室にやって来た。昨日捨てぜりふを吐いたことや職員室の空気に苛立っていたことも忘れたような顔で。彼は職員室に入ってくるなり、ぐるりと見回して担任を見つけると、僕には目もくれず担任の所に近づいていった。僕も昨日の後ろめたさがあるので、じっと机の上の答案を見ていて、彼と目を合わせようとしなかった。やがてその生徒と担任の話し声が聞こえてきた。パリーグのプレーオフの話をしている。このまんまじゃ、やっぱりよくないよな。その生徒には申し訳ないのだが、その生徒のためというより自分の後ろめたさ、モヤモヤを解消するため、僕は赤ペンのキャップを閉じると、静かに席を立った。