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中国茶・台湾茶と旅行 あるきちのお茶・旅行日記(旧館)

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2008.02.11
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カテゴリ:お茶
今日も、思いっきりマニアックなネタを書きます(またも宣言)。

前回の続き

中華人民共和国商務部では、様々な品目の輸入・輸出統計を毎月発表している。
このうち、2006年12月の茶葉の輸出統計を見てみた。

まず、2006年1月~12月期の中国の茶の輸出量は、286,594トン(香港・マカオ向けも含む)。
前年も同程度で、ほぼ横ばいで推移している。

前回見た通り、2006年の中国の荒茶生産量は約100万トンであるので、中国では生産量の約30%弱が輸出に振り向けられていると考えられる。

次に、地域ごとの輸出量を見てみよう。
参考までに、前回の省別生産量もつけている。

省別茶葉輸出量

これを見ると、北京などのように茶産地以外の場所からも輸出されていることが分かる。
この統計は税関の資料であるため、例えば、北京の貿易会社が茶産地で買いつけて、北京の税関を通して海外へ出荷すれば、北京からの輸出としてカウントされる。

表の中で、特に注目していただくべきは、浙江省

全国2位の茶葉生産量を誇る省だが、それ以上に多くの茶葉を輸出している。
輸出量はダントツの全国第1位である。

浙江省の中心都市・杭州は大都市とはいえ、上海や北京クラスの都市と比べれば、商業規模は小さい。それなのに、この現象。不思議である。


次に、輸出されている茶の種類を見てみよう。

茶種別茶葉輸出量

特種茶というのが聞き慣れないが、これは向こうの通関上の扱いで、緑茶や紅茶以外のお茶のことである。例えば、烏龍茶や黒茶(プーアル茶など)などがこれに当たる。

右側の数量の伸びを見てみると、紅茶や特種茶は、それぞれ12%、18.5%減と大きく数字を減らしている。
しかし、緑茶は伸びている。


不思議だ。。。

紅茶ならまだしも、緑茶というのは、そんなに常飲する国はないのではないか?

日本への緑茶ペットボトル原料の輸出が増えたのだろうか?
茶禮がブームの韓国への輸出か?


など、一瞬考えた。

しかし、全くの見当違いであることが分かった。
緑茶は結構飲まれているのだ。しかも、日本人の知らないところで。

それを証明するのが次の統計である。

中国が茶葉を輸出している相手先上位10カ国


どこの国が入ってくると思われるだろうか?




答えは、こちらの表。

茶葉の輸出相手先国

これじゃ、分からないですね。。。(^^;)



日本語で書くと・・・


 1位 モロッコ
 2位 日本
 3位 香港
 4位 アメリカ
 5位 ロシア連邦
 6位 ガーナ
 7位 アルジェリア
 8位 モーリタニア
 9位 セネガル
10位 リビア


となる。


ご覧のように、

中国茶の輸出先は、アフリカ諸国、特に北アフリカの各国の存在が大きい

のだ。


・・・となると、中国茶の中で、いわば”花形”輸出商品となっているであろう、お茶の名前が1つ思い浮かぶ。


アフリカ、特にモロッコで好んで飲まれるお茶といえば、ミントティー。
さらに先に見たように、浙江省の輸出量が多かった。

浙江省の平水から出荷される、ミントティーの原料となるお茶。

平水珠茶
(別名・ガンパウダー)


こそが、中国茶の”花形輸出商品”ということになるのだ。


↑これ


煙っぽくて、日本人も中国人も、あまり好まないこのお茶。

しかし、実は、このお茶こそが中国のお茶の輸出を支えている。

統計を調べなければ、分からなかった事実である。

浙江省の緑茶といえば龍井茶だと思っていたが、これはあくまで中国人と日本人の嗜好。
グローバルで見れば、浙江省の緑茶といえば、平水珠茶なのかもしれない。



浙江省は全国一のお茶の輸出量を誇るが、その輸出緑茶の多くは、このお茶ではないかと推測される。
おそらく、地元で生産する茶葉だけでは足りず、浙江省以外の地域から茶葉を運んできて、平水珠茶として出荷しているのではないだろうか。
だから、生産量よりも輸出量の方が多いという現象が起きる。

これで不思議な現象の説明がつく。



この浙江省のようなケースがあることを踏まえて、安徽省を見てみよう。

安徽省は生産量の割に茶葉の輸出量が多い

・・・大きな商業都市がないのに、不思議である。


安徽省で海外に通用するブランド茶は、何といっても、祁門紅茶(キームン)である。

しかし、前回見たように、安徽省の紅茶生産量は2,661トンに過ぎない

これを全量輸出したとしても、安徽省の茶葉輸出量の約10%にしかならない。
安徽省の茶葉輸出量の90%が緑茶というのは、どうも現実味に乏しい。

安徽省には、黄山毛峰や六安瓜片、太平猴魁というような緑茶の銘茶がいくつもあるが、それが「海外でバカ売れ」という話はあまり聞かない(太平猴魁は1915年のパナマ万博で金賞をもらってますが)

輸出振興策としては、ブランドネームのあるものの生産・輸出を促進するのが定石であるから、”世界三大紅茶”と称される祁門紅茶への依存度は、もう少し高くても不思議ではない。


そう考えると、相当量の紅茶が他の省から流れ込んでいて、それを安徽省から祁門紅茶として輸出しているのではないかと見るのが、自然ではないかと思う。

その原料茶の出元はおそらく近隣の省ではないか。

例えば、祁門紅茶の産地とされている安徽省祁門県のすぐ隣は、紅茶の生産量全国第5位の江西省である。祁門県からは少し離れるが隣の省は、湖北省。紅茶の生産量全国第3位の省である。
この2つの省には、それぞれ、寧紅工夫、宜紅工夫(宜興紅茶とは別物である)という紅茶がある。しかしネームバリューは祁門紅茶より、はるかに劣る。

かぎりなく怪しい。。。


残念ながら、これより詳細な統計が入手できていないので、これ以上の追求は難しい。

しかし、これらの統計を見る限りでも、100%正統な祁門紅茶を買い求めるのは、なかなか難しそうだということが分かる。”南魚沼産コシヒカリ”を買うのと同じことなのかもしれない。


ちなみに中国茶の輸出先のうち、日本が2005年と比較して、大きく数字を落としている。

この理由は2006年5月から始まった、ポジティブリスト制度によるところが大きいと思われる。

この問題も、光と影の部分があり、業界的には大きい問題である。

日本にいるとあまり気づかないが、このポジティブリストの問題の大きさは、統計に直接的に現れていた。


やはり輸出統計を見ることは、中国茶の世界情勢を知る上では、有効であると思う。


中国茶に関する統計の中には、まだまだたくさんの真実が埋もれているのかもしれない。

一旦おわり。

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次回はライトにします(^^;)





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Last updated  2008.02.12 21:29:30
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