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テーマ:中国茶好き集まって!(926)
カテゴリ:お茶にかかわる本・雑誌
評判の良いこちらを読んでみました。
感想をひとことで言うと、 ものすごくイイ と思います。 下手な単行本を買うより読みごたえがありますし、細かいところまでしっかりと行き届いている特集だと思いました。 数多く面白そうなテイスティングをしているのですが、「私もやりたい!」と思いました(^^;) テイスティングに、嗜好性飲料として進んでいると思われるワインのソムリエを引っ張ってきているのは良いと思います。 お茶の業界の人にとっては、ものすごく刺激になる特集なんじゃないかと。 保存版として、長く手元に置いておきたい雑誌です。 * * * * * * ここからは雑感。 実は、最初は「何で、お茶なのに中国茶や台湾茶を入れない!」と思いましたが、読んでいくうちに「こりゃ、仕方ないわな」と思いました。 紅茶や緑茶、あるいはワインの嗜好品としての研究度合いからすると、はっきり言って「中国茶は、まだまだこれからだ」と感じるからです。 これらのお茶やワインに並べるには、嗜好性飲料としての成熟度が足りないと言いますか。 それも仕方のないことだと思います。 まず、台湾茶は1970年代の経済成長を期に、国内消費が活発化。 30数年の歴史を経て、随分洗練されてきているとは思います。 お茶に付随する茶藝などの茶文化も、始まった当初に比べたら、徐々に台湾の地元文化と違和感なく融合したものになってきていると感じますし、産地(たとえば高山茶)や茶農家、発酵度や焙煎など、きめ細やかな違いでお茶が選べるようになっていることは、そのあらわれだと思います。 しかし、いかんせん愛好者の数と歴史が違います。 国際商品として長く取引され、世界中に愛好者のいる紅茶の世界や長く連続した歴史を持っている日本茶と比べるのは、ちょっと厳しい気がします。 一方、中国茶(大陸茶)となると、さらに厳しい。 中国茶自体の歴史は長いとはいえ、清代以降、大陸中国は本当にかわいそうになるぐらいの不幸な歴史を送っています(私、隣国の国民として大いに同情し、ホントに頑張ってもらいたいと思っています) その間に、本来積み上げられてきたはずの多くが失われたり、近代的な研究というのが遅れていたことは否めません。名茶と呼ばれるものも、多くは1980年代以降に復興されたものばかりです。 これ、蓄積という面では、大変なハンデだと思います。 また、茶文化が成立し発展するには、あまりに余裕がない時代が長く続きました。 食べていくだけで精一杯の状態が長く続きましたから、良いお茶と向き合う余裕ができたのは、つい最近のこと。ハイエンド層は別なのかもしれませんが、やはり愛好家の裾野の広さという点では、まだまだ不十分と感じます。 大陸の茶藝は、まだまだパフォーマンス色が強いですし(進化の過程なので、仕方のないことではありますが) そして、各地方の名茶の研究に温度差があったこともあります。 中国全土のさまざまな名茶を楽しむという習慣は、物流が発達し、経済が豊かになってきた、ごくごく最近になってできたこと。 どちらかというと地元の名茶は地元でのみ消費される”地酒”のような傾向がありましたから、全てのお茶を網羅的に把握している人は極めて少なく、研究の方法論が十分に行き渡らないこともあり、それぞれのお茶の研究レベルがマチマチだったということもあります。 * * * * * * このような理由で、ちょっと互角に張り合うのは難しいかなぁと思います。 逆に言うと、中国茶の世界は、実はまだまだ開拓・整理の余地がたくさんあって、「だからこそ面白い!」と言うこともできるのですが。 もっとも、表面にあまり出てこないだけで、既に紅茶やワインのレベルにまで近づいているのではないか?と感じるお茶もあります。たとえば、鉄観音。 安渓では、植えられている畑の土壌の違いを茶師がきちんと把握し、その上で適切なブレンドを行い、焙煎を施して出荷しています。また、香港の茶荘に見られるように、店独自の再焙煎を行い、付加価値をつけて出荷するという慣習が根付いています。 これは鉄観音が、華僑に好まれているお茶だと言うこともありますが、連続した歴史の中で嗜好品として磨かれてきたことの証だと思います。 このような事実が、あまり整理されて伝わっていないだけで、鉄観音は十分に嗜好性飲料として成熟した要素を備えているお茶だと思います。 最近の緑茶風味鉄観音ブームで、それがやや失われてしまうんじゃないか、と懸念は持ってはいますが。。。 鉄観音のようなお茶が存在することは、中国でも今後、経済発展に伴う生活水準の向上と安定化が進み、各お茶の研究も高度化すれば、十分に嗜好性飲料としての厚みを備える可能性があることを示唆しています。 #残念ながら、今の中国のお茶の研究が、その方向を向いているとは言い難いのですが。 数多くある名茶が、鉄観音レベルまでこだわりを持ち始め、消費者がそれを受け入れるだけの水準にレベルアップしたならば、中国茶というのは本当に無限の可能性を持っていると思います。 なにしろ、広い中国のことですから、品種や製造工芸のまったく違う、様々な名茶を保有しているわけで、これをブレンドなどしはじめたら、それこそ無数のパターンの味わいと香りのお茶が誕生する可能性があります。 ・・・これは、とんでもないことですよ(^^;) もちろん、そこまで行くには、相当の年月がかかると思いますが、このような可能性の大きさを考えると、現在の中国茶の研究は、相対的にまだまだ研究の初期段階なのです。 既にある程度整理が進んでしまっている、紅茶やワインとは同列では並べられないよなぁ、と思います。 まあ、このブログが”マニアック”と言われているうちは、たぶん無理でしょうw 私自身は、飲み物として、ごくごく当たり前のことを追究しているに過ぎないと思っています。 ↑居直った たとえば、ワインのブログで、カベルネ・ソーヴィニョンとメルローの個性の違いを述べても、全然普通。 というか、「今さらですか?」だと思います。 でも、青心烏龍と青心大有の東方美人の違いを言うとマニアック・・・というのは、そりゃ、やっぱりワインと中国茶(台湾茶)の浸透度のレベルの差ですわね(^^;) ということで、みんなで研究しましょう♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.06.27 09:07:39
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