ポレポレ東中野で上映されている『台湾人生』を見てきました。
台湾人生 公式サイト
この映画は、台湾の日本語世代の方にインタビューをしていくという、日本のドキュメンタリーです。
新聞記者から転身された酒井監督が、取材に7年間もかけたという大変な力作。
予告編を見るだけでも、かなり強烈なメッセージがこめられていることが分かります。
スタートのシーンは花蓮縣瑞穂郷の茶畑の茶摘み風景から。
その摘んでいる様子を見て、
「おおっ、これは紅茶の品種だ」
と、まったく関係のないところをじっくり見てしまいました(^^;)
冗談はさておき。
ストーリーは、5人の日本語世代の方、それももっとも多感な時期に戦時中の強烈な教育を受けられた方々が登場し、日本統治時代の頃の学校の話や、戦争との関わり、終戦後の国民党支配について日本語で語り始めます。
どの方も、まさに台湾の激動の歴史がそのまま投影されたような経験をお話しされます。
日本統治時代の思い出話も出てきますが、良い話ばかりではなく、露骨な差別があったことなどマイナス面もきちんと話されています。
中立的な視点に配慮された構成だと感じました。
#某国営放送局にも、このぐらいきちんとした報道をしてもらいたいものです。
そして、祖国へ復帰したはずだった戦後の話。
蕭錦文さんの二二八事件の体験談は、それはそれは凄まじいものがあります。
また、スクリーンを見ていると、出演者の方が”自分でも思っていなかった本音に気づいた”と思われるシーンがあります。
予告編にもありますが、日本語世代の方々は、日本に対して本当に複雑な感情を抱いています。
そんな込み入った感情を表現しようと言葉を連ねているうちに、ポッと口を突いて出てくる言葉。
それは用意されていた言葉でも何でもなくて、心から出てきた言葉。
その言葉を自分で聞いて、自分の気持ちに気づき、感極まってしまう。
そんなシーンが度々あるのです。
これはどんな演技よりも、心が揺さぶられます。
これほどの内容を日本語世代の人たちから聞き出し、映像に収めたということに、ものすごい価値があると思います。
きっと日本語だったからこそ、ここまで深い内容を聞けたのだろうと思います。
81分とそんなに長くない作品なのですが、日本語世代の人たちの今までの苦労などを想像しながら見ていくと、かなりズシリと来る映画でした。
でも、なぜか話を聞きに台湾に行きたくなる。そんな不思議な映画です。
* * * * * *
さて、この映画を見ると、台湾は”親日的”と言われますが、それは決して単純なものではないことがよく分かります。
様々な葛藤を乗り越えての”親日”であるということ。
これは、台湾を訪れるのならば、是非知っておきたいことだと思います。
そして、好意に甘えるだけでもいけませんし、変に恐縮していてもいけません。
相手の国をもっと知ろうとすることが、大切だと思います。
お互いの国を理解するという”相互理解”。
本当の友好関係というのは、そこから生まれるのですから。
この映画の東京での上映は、今のところ7月31日まで。
10時40分~の1回のみの上映ですが、かなり混んでます。
私、平日に行きましたが、それでも早々に満席御礼。
ちょっと、ビックリでした(^^;)
ご興味のある方は、どうぞお早めに劇場に足をお運び下さいませ。
<追記>
上映が8月14日までになりました!
時間も、8月1日(土)より 14時55分~、16時35分~ の1日2回上映になります。
また、パンフレットに載っている片倉佳史さんの文章は、台湾を的確に著していて実に素晴らしいと思いました。何と言っても、台湾への”愛”にあふれています。一読の価値アリです。
興味のある方は是非♪
※このような記事を載せると、私は”大陸嫌い”だと勘違いされるのですが、決してそんなことはありません。仮にそうだったとしたら、とっくにこのブログから"中国茶"の3文字は消えているはずです。
台湾には台湾の、大陸には大陸の歴史と文化、そしてそこに住む人たちの気持ちと事情があります。
それぞれをきちんと勉強して理解し、尊重する。
他国の文化をより深く知ろうと思うならば、これは当然のことだと私は考えます。