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中国茶・台湾茶と旅行 あるきちのお茶・旅行日記(旧館)

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2012.03.03
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先日のシンポジウムで知り、読まねばと思っていた本です。



読書感想画中央コンクールの中学生・高校生向け推薦図書に選ばれていた本だそうです。
図書館などでは「児童書」のコーナーに置かれています。

そのせいかルビが振られていたり、文字が開かれていることも多いです。
が、中には漢語表現であったり、ある程度の歴史的知識を前提とした問いかけもあるので、なんとも対象読者層が掴みにくい本ではあります。

では、ちょっと詳しめに内容をご紹介しましょう。

第1章は「紅茶のルーツをさぐる」ということで、おなじみの「CHA」と「TEA」の話やインドの紅茶の話などが記載されています。
お茶にディープに関わっている諸姉諸兄には、食い足りない部分もあるでしょうが、中高生向けに書かれた内容と考えると、シンプルで良いと思います。
紅茶と緑茶が同じチャノキから作られているということすらも、なかなか知られていないことですから。

第2章は「紅茶の流行の始まり」。
オランダ人が最初に紅茶を広めたことや、ヨーロッパ列強の海外進出の時代が描かれています。
この辺から第4章までの記述は、参考図書の筆頭にも挙げられている、角山先生の「茶の世界史」に大きな影響を受けていることが感じられます。

第3章は「紅茶が動かした大英帝国」。イギリス東インド会社によるアジア進出の様子とお茶の関わりについての章です。
といっても、決してお茶の話だけではなく、オランダとイギリスによるアジアにおける勢力争いなど、歴史的な事件についても記述されています。
中高生にとっては、歴史のダイナミズムが感じられると思います。

第4章は「アメリカ人と紅茶」。
ボストン茶会事件に象徴されるように、アメリカ独立に茶が一つの役割を担ったことを紹介しています。
一方で合理的なティーバッグを発明したという点も、記述されており、抜かりありません。
最近の傾向として、コーヒーパーティーの結成などという時事ネタも織り込まれ、このへんはさすが元新聞記者の方という印象です。


そして終盤の第5章、第6章は、もっとも著者の方の個性が出ているところかもしれません。

第5章は「ワカマツ・ティー・コロニー」。
ここからは視点を世界から、日本に移していきます。
明治維新後の会津藩の様子と、アメリカに渡った旧会津藩の移民団、特に「おけい」という女性の足跡を追っていく章です。
資料も少ない中、こういうところに光を当てているのは良いですね。

Wikipedia: 若松コロニー スネル兄弟

個人的には子供の頃、2年半ほど会津若松在住でしたし、その頃の家はシュネル(スネル)の屋敷があった西若松駅のすぐそばだったので、なんだか運命感じちゃいます(笑)


第6章は、「ニッポン紅茶の生まれるまで」。
維新後、日本が産業を立ち上げるのに苦労した様子を、多田元吉の足跡を追いながら紹介しています。
ダージリンへも出向いて取材をするなど、記者らしいフットワークを感じさせます。
そこから、現代の和紅茶についても記載をしていて、中高生にとっては、日本でも思いの詰まった紅茶を作ってるんだ、と感じてもらえそうな内容です。


全体を通して貫かれているのは、お茶という1つの飲みものを通して歴史を見ると、色々なものが連動して見えてくる、というところだと思います。
年号や事件だけ覚える無味乾燥な歴史教育では面白くありませんからねぇ。
生きた歴史の教材として、お茶ってのは良いですね。
↑私、大学時代は塾で社会科の講師をやっていたので、こういう感想を持ってしまいます。


課題図書にも選ばれていた本なので、どこの図書館にもあると思いますから、興味のある方はぜひ。


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それにしても、1980年初版ながら、以後出版された色々な本の土台になっている「茶の世界史」という本は、あらためて良い本であると思いました。
新書だからといって、侮れないお茶好きの必読書です。

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Last updated  2012.03.03 11:02:31
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