深める話の続きです。
ここは敢えて、一番私から縁遠いジャンルのお話を(^^;)
<茶芸を学ぶ前にハッキリさせておきたいこと>
中国茶に興味を持った方が、わりと多く興味を持つ分野、それが茶芸です。
やはり、お稽古っぽさがあるからでしょうか。
特に女性には人気があります。
さて、淹れ方のところでも書きましたが、ハッキリ言って「茶芸」という言葉の捉え方は、人それぞれです。
ですので、茶芸を学ぼうとするのであれば、まず「何を学びたいのか」を明確にした方が良いと思います。
たとえば、こんな感じでしょうか。
・お茶を美味しく淹れる方法を知りたい
・中国茶の飲み方(作法)を知りたい
・お茶を美しく淹れる所作を身につけたい
・友人を呼んでお茶会を開きたい
・ハクがつきそうなので中国の国家資格が欲しい
・とにかく、お茶の道を究めたい
・尊敬できる茶人について学びたい
などなど・・・
実際には、目的は一つではないかもしれません。
「美味しく、美しく淹れたい。でも資格はいいや」とか、色々組み合わせパターンはあります。
いずれにしても、「茶芸を学んで、どういうことをしてみたいか」を考えておいた方が良いと思います。
それによって、学び方や選ぶべき先生が変わってきます。
もし、学びたいことが「美味しく淹れる方法」や「中国茶の飲み方」だけであれば、ある程度、独学で何とかなると思います。
「色々な淹れ方を試して、検証してみる」
「誰かが淹れているのを見て勉強する」
ということを積み重ねていけば、自分なりの美味しい淹れ方は見つかると思います。
これはカラオケの曲を自分で練習して覚えるようなものです。
「誰に見せるわけでもない」ということなら独学でも良いでしょう。
もちろん、誰かに見てもらう&教えてもらえれば、より早く習得できると思います。
工藤佳治先生のXiangLe中国茶サロンR&Dの茶藝コースなどは、美味しく&美しく淹れるに特化したクラスのようです。
経験豊富な先生の知恵を借りるというのは、良い選択かもしれません。
一方、「美しく見えるように淹れたい」とか「国家資格を取りたい」となると、独学では、なかなか難しいと思います。
先ほどカラオケに喩えましたが、この手の”見せる”茶芸を学ぶことは「振り付きで踊って歌えるようになるトレーニング」のようなものです。
そうなると、やはり踊り方などを横で見て、手取り足取り教えてくれるコーチがいた方が、心強いです。
では、どんな先生につけば良いのかですが、ここで考えておくべきことがあります。
<「中国茶芸に流派は無い」は本当か?>
どういうわけか、こういう噂が広まっているのですが。
流派はあります
ただ、日本茶道のように「うちは数百年の歴史があります」のように確立されたものは無い、というだけです。
「茶芸」なるものが始まったのは、せいぜい40年前ぐらい。
今のところは群雄割拠状態というか、戦国時代初期みたいなものです。
規模もそれほど大きいところはなく「家元一人で頑張ってます」的な流派が、まだ多い感じです。
その中でも、最大派閥なのは、台湾発祥の陸羽茶藝でしょうか。
台湾のお茶チェーン・天仁茗茶という大きな後ろ盾があったこともあり、現在では世界各国に支部を出しています。
ここは別格に大きいですね。
なお、中国の茶芸師試験については、「あまり流派はない」とされています。
が、実際のところは、指導する先生の個性というのが、かなり色濃く出ます。
養成講座では「こうやりなさい」という先生からの指導が、どこかには必ずあり、指導講師が誰かというのは、見る人が見ればわかるようです。
まあ誰に習っても、芸は”技芸”の世界なので、多少の色は付くということです。
一人の先生の個性は生徒さんから生徒さんへと受け継がれていくものなんですねぇ。
<流派の違いって?>
それぞれの流派ごとの違いですが、色々と先生のこだわりや取り決めがあります。
「自分の独自の世界を作ること」=「流派を作ること」に繋がるので、当然といえば当然なのですが。
具体的には、手の動かし方が違うとか、茶道具の配置が違うとか、茶席コーディネートのトーンが違うとか、使う茶器がオリジナルだとか、色々違うところがあります。
どこのレベルが高いとか低いというのは、見る側の主観にもよるので、評価のしようがありません。
が、とにかく「どこかが他と違う」というのが、ある意味、各流派のアイデンティティであり、誇りにもなっています。
またもや、ざっくりした喩えで恐縮ですが・・・
「いつも靴を左から履く」と決めている人が、たまたま右から履いてしまうと「何か一日中気持ち悪い」と言います
これと同じで、どこかの流派にどっぷり所属していると、他流派のちょっと違うやり方は、何となく気持ち悪くなるもののようです。
「いつもやっていることと、ちょっと違うのを見ると違和感を感じる」
是非はともかく、これは人間の本能かもしれません。
何が言いたいかといいますと、
「所作」までバッチリ習い始めてしまうと、他へ移るのは、ちょっと大変かもしれませんよ
ということです。
一度、やり慣れた方式・習慣があると、無意識のうちに手が動いたりします。
これを意識して、別のやり方に変えていくというのは、白紙の状態から学ぶ以上に大変な作業です。
茶芸は身体で覚える、覚え込ませるものなので、先生選びは慎重に、なのです。
できれば、体験講座やお茶会などに出かけて、何人かの先生のやり方を、自分の目で見た方が良いと思います。
その中で、自分が「見ていて心地よい」あるいは「こうなりたい!」と思う先生を選びましょう。
やっぱり、先生との相性というのはありますし、感性に合わないものは習っても仕方ありません。
<中国の茶芸師資格を取りたい>
この目的がある方は、中国語がネイティブ並みに堪能という方でない限り、
茶芸師取得コースのある団体・教室
を目指すことになるでしょう。
多くのところは、事前の勉強会+1週間程度の集中講習&試験という感じで、大体、中国の杭州へツアーで行きます。
費用は滞在期間やホテルのグレード、催行人数によってまちまちですが、ざっと十数万~二十万円ぐらいかかります。
結構なお値段ですが、渡航費用まで考えたら、まあこんなものかもしれません。
この手のツアーで行くと、通訳が付き、日本語で授業を受けられるようにしてくれます。
こうした取得ツアーを頻繁にやっている、国内のメジャーな団体・お店を紹介しておきますと、
NPO法人中国茶芸師協会
NPO CHINA 日本中国茶協会(with 遊茶)
華泰茶荘(with 中国茶インストラクター協会)
日本中国茶普及協会
あたりでしょうか。
この4団体は、評茶員の取得ツアーも実施しています。
他にも実施しているお店や団体がありますので、特に地方の方はチェックした方が良いかもしれません。近い方が何かと便利ではありますから。
中国の主要都市に在住の方は、日本人向けの中国茶教室で取得できるようですね。
ちなみに、茶芸師資格がどんなものであるかは、以下を参照下さい。
中国茶の資格について考える(2)-茶芸師について
中国茶ニュース:中国人にとっての茶芸師資格とは
他国の職業資格を日本人が取得して役に立つかどうか?は、議論の分かれるところです。
各自でご判断下さい。
なお、資格取得ツアーに参加するタイミングですが、
「どこかの流派で、しばらく茶芸を習ってから茶芸師に・・・」というよりは、
いきなり資格取得ツアーに飛び込んでしまった方が、楽
かもしれません。
茶芸に関しては、白紙の状態の方が、教わったことを吸収しやすいからです。
自分の中に確立したものがあると、取得ツアーの講師に「こうしろ」と言われても、なかなか従えません。
ずば抜けて上手なら、講師も「この人はこういうスタイルなんだ」と納得してくれるでしょうが、中途半端な状態だと、「全面改造」の指導が入ることもあります。
こうなると、限られた研修ツアーの日程では大変です。。。
試験対策という意味では、何も色が付いていない方が楽なのです。
もっとも、お茶の淹れ方が全く分からない&練習をしていない状態では、いくら日本語授業といえども、授業についていけない恐れもあります。
事前にどこかで、基礎的な中国茶の勉強or準備講座は受けた方が良いでしょう。
このへんは、各ツアー主催団体に問い合わせてみると、良いアドバイスをもらえるのではないかと思います。
ご自身が茶芸師を保有している、もしくは茶芸師の指導実績が多い先生だと、事前にお話ししておけば、国家試験向きの茶芸を教えてくれるので、心配は少ないと思います。
続く。
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こういう話はあまり聞けませんよねぇ(^^;)