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中国茶・台湾茶と旅行 あるきちのお茶・旅行日記(旧館)

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2014.10.24
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ここ数日、ペットボトル茶と国家標準を題材に、プーアル茶の少し詳しい話を書きました。

すると翌日、某ネットショップさんが、


雲南省のお茶=大葉種と呼ぶのは的外れです。


という記事を挙げてきました。


他の情報発信者を「的外れ」と断じるとは、穏やかな表現じゃありませんね(^^;)


冷静にその記事を読み返すと、かなりバイアスがかかっています。

端的に言えば、こちらは「総論」で話をしているのに、「各論」で否定をしてきています。
噛み合ってません。

マニアの方と話すと良くこういうことありますね。
「一般的にはそう言われているけれども、私はこういうのを見てきた」と。
一般論より先の詳しい知識を知っていることアピール(笑)です。
不毛な議論になる典型的なパターンです。


それを見て、思いました。


「ネットショップとか茶商の情報は、確かに有益である。しかし、知識として仕入れるなら、気をつけて吸収しないといけない」


という注意喚起は必要ではないかと。


<在来種に小さい葉のものがある>

私は雲南省のお茶全般の傾向を話しておりました。

基本、初心者さん向けに分かりやすく伝えるるため、雲南省で使われているお茶の多くは、大葉種であるという、趣旨の文章でした。

あくまで「総論」の話をしています。「各論」を否定するものではありません。
※雲南省に小葉種は無いと断じてなどいませんよね。

 

が、件のブログでは、在来種の一部には葉っぱが小さいものもある。
ゆえに「雲南省=大葉種」というのは間違いである、と述べています。
「各論」を取り上げて、「総論」を否定するパターンです。


そりゃ、在来種は、繁殖を重ねているうちに、他の品種の形質を引き継いだり、変異したりして、そういうものも出るでしょう。
小さい葉のお茶があっても、何ら不思議ではありません。
#もっとも栄養状態が悪いから、葉の育ちが小さくても、品種は品種。大葉種は大葉種なんですけどね。太っていた人が急に痩せたら別人格になるわけでは無いのと同じです。

だからといって、その小さい葉のお茶とやらは、「総論」に影響を与えるほど、大きな比率を占める存在なのでしょうか?

そこを雲南省全体で見たときの視点が欠けています。


<雲南省全体で、多いのは大葉種?小葉種?>

問題は、小さな葉のお茶の比率が、雲南全体で見たときにどうか?です。

全体に占める比率がかなり低いのならば、「主に大葉種」という表現は認めていただかないと。
雲南で最近どんどん面積が拡大している品種茶の茶園は、全部綺麗に大葉種で揃っているわけですから。


ここで大葉種の比率がかなり大きいことを示す、根拠となる数値を一つ提示します。
残念ながら正式な政府統計が入手できなかったので、新聞記事です。
#私は基本的にエビデンスで話をするようにしたいと思います。経験云々だけだと主観が入るし、水掛け論なので。


雲南省の地元紙・雲南日報が今年8月に報じたものです。

現在、雲南省で盛んに栽培を進めている茶品種に、雲抗10号という育成品種(大葉種)があります。

この雲抗10号が植えられている茶園の面積は、雲南省全体で200万畝(約13万3千ヘクタール)に達したそうです。
これは雲南省全体の茶園面積の約35%を占めたと報じています。
今の勢いだと、今後もっと伸びるでしょう。


この記事により、現時点でも、雲南省の茶園の35%は大葉種(雲抗10号)であることが分かりました。

残るは65%です。
このうち、引き合いに出されていたような、小さな葉の占める比率はどのくらいあるでしょうか?


雲南省の在来種(地方群体種)のもっとも大きな括りの品種名は「雲南大葉種」です。
そう呼ばれているのですから、常識的に考えれば、残りの大部分は大葉種でしょうね。

思い切って少なめに見積もり、大葉種は半分の37.5%だけだったとしましょう。

それでも、大葉種の雲抗10号は35%ありますから、合計で72.5%となります。
※実際にはもっと多いでしょうけどね。


7割以上を大葉種が占めているのを根拠に、雲南省のお茶の傾向を「大葉種が主です」と説明することは、「的外れ」なんでしょうか?



<情報はある程度、偏っているものだと思って接する>

情報というのは、どんなものでも偏っていても仕方無いものです。
公平と思われる、新聞やテレビの記事だって、書き手の思惑・主義主張みたいなモノはどうしても出て来ます。
そう思って、受け手が話を整理して、自分の頭の中に整理しないと行けません。

お店発の情報には、今回のように、細部にこだわりすぎて、全体が見えていない情報もあります。
「木を見て森を見ず」になっているケースです。
一般的なお茶の知識として自分の頭にインプットするときは、そこを注意しないと行けません。


ネットショップに限らず、茶商は、基本的に茶産地を「仕入れ」のために訪問します。

その際、訪問する産地は、当然、自分が仕入れたいと思う、好みのタイプのお茶のある産地に行きます。
参考程度に多少は一般的な情報も仕入れるかも知れませんが、思い入れの熱量は違うでしょう。
当然発信される情報の密度・詳しさも違ってきます。


この方は野生だったり自然栽培のお茶を好んで仕入れています。

そうなると、今や雲南の主力になりつつある大規模な品種茶の茶園で、「こんな素晴らしい取り組みをして、一生懸命品質を高めてます!」という情報は得られないでしょう。
「茶園のお茶はダメだ」と一刀両断して、ディスるってのが良くあるパターンです。
そして、観察の中心は、どうしても少数派である自然栽培の茶園の方になることでしょう。
仕入れたいのはそっちですからね。

発信される情報も、当然、自分の商品である自然栽培の茶園の話(それも良い話)が、主体になります。
情報提供で対価を得ているのではなく、あくまで商品の販売で対価を得ているのですから、そりゃ当然ですよね。

でも、中国の茶葉市場で売られているお茶のほとんどは、茶園のお茶という現実。
現実と知識のギャップが、ものすごいことになっているケースもあります。
#日本の中国茶情報が現地の感覚とすごいズレている、という話は、現地駐在だった方からよく聞きますね。

・・・こういうのって、知識としては、バランスが悪いと思いませんか?


<複数の情報源を活用して複眼的に見る>

茶商の方の多くは、実際に現地に足を運び、具体的で直接的な生の一次情報に触れていることでしょう。
これは非常に有難い情報で、私たちの目となり、足となって、現地の声を(日本語で)届けてくれるのです。
本当に素晴らしいことだと思います。感謝しております。


が、あくまで自分の店の商品仕入れが主な目的で、その仕入れの過程で入ってきた情報です。
現地へ行く方でも、物理的に全ての産地を同タイミングで回ることはできないので、地域や時期などで色々な偏りは必ず出ます。
これはどうやっても避けようがありません。
消費者側としては、その限界を知った上で話を聞くべきです。

もちろん、「私はここのお茶以外買わないわ」という方なら、鵜呑みにしても良いでしょう。
ただ、そこで得た偏った知識で他人に議論を吹っかけてくるのは勘弁して下さい。


「お茶をきちんと理解したい」という方なら複数の情報源を持つべきです。
その情報源は本でも、教室でも、詳しいお友達でも、他のお店でも構いません。
ある程度、納得いく説明をしてくれる、確かな情報源であることが大切です。

それらの情報源から得られた情報を、自分なりに組み合わせたり、共通点を探したりして、全体像はどうなっているのかと、俯瞰して見る意識を持つことが大切になると思います。

これは、お店の方を信用しないというわけではありませんし、お店の方の知識が偏っていると言っているのではありません。
1人の発信する情報には限界があり、限られた文章で、全てのケースを網羅することは不可能だと申し上げたいのです。
ディテールだったり、全体像を網羅し切れていないこともあるでしょう。
それは情報の受け手が補ったり、整理する必要がありますよ、ということです。


私の情報にしても、一面の話ではあるので、例外はたくさんあります。
そして、中国茶はものすごく急激に動いているので、時代によってすぐに変わります。
私の情報も含め、どんな情報でも、金科玉条のように真に受けすぎないことをオススメします。



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Last updated  2014.10.24 18:38:35
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