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中国茶・台湾茶と旅行 あるきちのお茶・旅行日記(旧館)

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2016.01.11
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<嗜好品の飲み物には一定のニーズが>

”冬の時代”と言われて久しい中国茶ですが、だからといって悲観するものではないな、と個人的には思っています。

というのも、いわゆる”嗜好品”の飲み物には、必ずどこかで見直され、ブームの波がやってくるからです。

たとえば、お酒ならば日本酒、本格焼酎、ワイン、ウイスキー。
非アルコール飲料でもコーヒーなど。

一旦盛り上がって、忘れられた頃に必ず第二波、第三波の波がやってきたりします。
ブームが再発するきっかけは、さまざまです。

今のブームでいえば、ウイスキーならドラマかもしれませんし、日本酒は獺祭のような特定の商品かもしれませんし、コーヒーならブルーボトルコーヒーのような店だったり、サードウェーブという新しいコンセプトかもしれません。

ひょんなことから火がつき始めるので、”燃え広がりやすい状態”を整備しておくことが大切なのではないかと思います。

これまでの10年間ぐらいを見ていても、火が付きかかったケースは結構あると思うんですよね。
ただ、燃え広がるほどの環境に無かった、というのが実際のところかと思います。

時折、気まぐれに吹いてくる風を受けるような”帆”になる部分が不足していたのだろうと思います。
ちゃんとした帆が上がっていれば、そよ風であっても進むことができます。
こんなに長期間停滞することはありません。


<優れた入門書・ガイドの必要性>

まず必要なのは、初めての人が入ってきて、そのまま無理なく中級者、上級者へと駆け上がっていける道筋があることだと思います。

登山道が整備されていない山には、低い山であってもなかなか人は登りません。
おどろおどろしい、いわくめいたものがあれば、なおさらです。
#中国茶は奥が深いとか、お茶にハマると身上潰すとか、言い過ぎだと思います。

が、登山道がきちんと整備されていれば、標高3776mの富士山にだって、多くの人が登るのです。


具体的には、優れたお茶の入門書が必要なのかな、と思います。

入門書というと、分かりやすく簡単なものが良いという印象があるからなのか、簡単に書けるように思われがちです。

が、本来、入門書こそ書くのが一番難しいのです。
理解の前提となる様々な知識が無い方に、新しい物事を分かりやすく伝えるのは、ものすごく難しいからです。
様々な分野で言われているように、幅広い知識と見識を有する碩学の方でないと書けないのが入門書なのです。

これもバイブル的な本が一冊あれば、良いのです。
そこからの派生形として、より読みやすい本(たとえば「マンガで読む~」とか「図解~」とか)が出てきますから。

ただ、現在の中国茶の世界を見渡すと、現状に即した良書がなかなか見あたりません。
ここが一番の課題だと思います。


<中国茶の論拠に変化が>

きちんとした入門書を書く上では、論拠(エビデンス)が必要です。
個人の思い込みや記憶に頼ったものは、随筆・エッセイにはなるでしょうが、到底、理想的な入門書にはなり得ません。

第2次ブームの初期までに書かれた本は、論拠を定説もしくは、それ以前に書かれた本の記述の引用に頼らざるを得ませんでした。
中国の茶業自体が、実質的には1980年代からがスタートだったので、理論的な部分の整備がその当時は不十分だったからです。


ところが、中国の茶業の発展に伴い、この論拠の整備が急ピッチで進んでいます。

2000年代に入ってから、お茶に関する国家標準・地方標準といったものが続々と発表されています。
国あるいは地方政府主導で、特定のお茶に関する様々な情報を文書で定義し始めているのです。
例えば、「龍井茶とは何か」「プーアル茶とは何か」ということが、文章で明快に定義されるようになりました。

もちろん、これらの標準は数年ごとに見直されるものですし、一種の妥協の産物という側面もあるので神聖視できるものではありません。
が、それでも俗説などを頼りに書くよりは、随分マシだと思います。


しっかりした論拠をベースに組み立てることで、中国茶の世界は、かなり分かりやすくなるように思います。

もっとも、国家標準もまだまだ制定されていないお茶の方が多いのが現状です。
しかし、中国の茶業界のスピード感はかなりのものなので、じきに出揃うことでしょう。

次世代の入門書を書こうとする方は、こうした標準を意識されると良いと思います。
#評茶員の勉強をされている方は、とっつきやすいはずです。


<追い風だって吹いています>

業界の人ほど「状況が悪い、悪い」というのですが、実際にはかなり強烈な追い風もあります。

まず1つには、台湾への好意的なイメージと旅行客の増加ですね。
それも旅行社が連れて行くようなお店では無いところに行く、個人旅行客。
本当に美味しいお茶に出会い、興味を持つ方も増えています。

台湾リピーターの方は増えてきていますが、台湾もお茶の国です。
なので、お茶について、もう少しきちんとした情報が入っていたら、今まで以上に台湾旅行を楽しめると思うんですよね。
お茶を通じて話が膨らむことは良くありますから。


もう1つは、前回も触れましたが、お茶の知識を有する方が大分増えてきていることです。
こうした方々は一時のマニアのように、お店に対して道場破り感覚で行く人は、だいぶ少なくなっています(いないとは言いません)。

お茶の世界の幅広さや深さ、価値も分かっていますし、探究心旺盛だったり、お茶を広めたいという気持ちを持つ方も多いです。

以前であれば、「お茶を勉強したら、お店をやる」ぐらいしか選択肢が無かったのですが、現在では趣味としてお茶会を開いたり、お茶を飲み回ったりと、程良いお付き合いをされている方も多いです。
プロになるにしても、教室を開くなど、お茶の販売以外の方向に向いているケースが多いかと。

こうした方々の知識・経験やお茶を広めたいというエネルギーが上手く噛み合ったら、ものすごいパワーになるように思います。
かつては、マニアがお店の敵になることもありましたが、今やそういう時代では無くて、有力な応援団になります。
そういう意識で見ると、可能性は非常に大きいと思います。


物は考えよう、気は持ちようです。
見方を変えれば、冬は冬でも、春に向かう前の段階なのかもしれません。


梨山の夜明け



ひとまず、完。


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Last updated  2016.01.11 22:09:28
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