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カテゴリ:自選短編集あさがお劇場
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かみしばいがはじまるよー。 えのないかみしばいが、はじまるよー。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今を去る事、二十と七年。 紙芝居を作るためのストリーとして考案されたまま、 オクラになっていたお話があります。 絵を描く時間ができるのをまっておりましたが、 その見込みはまったく無く、 とりあえず、お話だけスタートしてみます。 (だって、北陸のあっこねえちゃんが、あさ・がおのオシリをたたくんですもの) ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ それでは、はじまりはじまり ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 1) それは去年のクリスマスのまえの日のことです。 北のまちの郵便配達のグスタフおじさんは、 夕方遅くに家にもどりました。 晴れて空にはたくさんの星がみえますが、冷たい冷たい風がふいています。 家のなかでは、グスタフおじさんの奥さんエリカおばあさんのシチューがぐつぐつ。 2) 「おやおや、いいにおいだねぇ。すぐごはんにしてくれるかい。」 「あら、おかえりなさい。そうね、今夜は大忙しですものね。」 「そう、わたしにうまくできるかなぁ。やっぱり、やめたほうがよかったかなぁ。 かんがえていてもしかたない。ごはんを食べたらすぐに出発するからね。」 「はいはい、でも、なれないお仕事、気をつけてくださいね。 それと、シチューはたくさんつくってありますから、はじめてのお仕事でおなかがすいたら、お夜食もできますよ。よかったら、お仲間もつれてきたらいいわ。」 グスタフさんはごはんをすますと、 あたりをきょろきょろ、だれにもみつからないように、 ひっそりこっそり、家をでました。 おそとはすっかり暗くなっているのに、いったいどんなお仕事をするのでしょう。 3) グスタフさんは、あたりにきょろきょろ、気をつけながら、 北の町のはずれにある小屋に入りました。 小屋の中にはおじいさんが6人、グスタフさんもいれて7人のおじいさんたち。 みんなで地図をみて、なにやらかにやら相談しています。 「それじゃ、みなさん、よろしくおねがいしますよ。」 いちばん小さなおじいさんが、かべにかかったふくろを、ひとりにひとつずつ、手渡しします。 5つめの、すこし小さな袋はグスタフさんに。 「じゃあ、ことしはじめてのグスタフさんは、この10個をおねがいします。」 なにやら荷物のはいった白い大きなふくろと地図をわたされたグスタフさん。 ほかのおじいさんよりは、ふくろが小さいようです。 4) ふくろを持って、5人のおじいさんは、グスタフさんに一言ずつかけて、 出発してゆきしました。 <注意その1・しずかにしずかに、寝てる人をおこしてはだめだよ> <注意その2・いつ、だれにみられるかわからない。いつでもにこにこ、わらっているんだよ。> <注意その3・このしごとはいのちがけだよ、気をぬいてはダメだよ。> <注意その4・むやみに、人に声をかけてはいけないよ。声でばれてしまうかもしれない。> <注意その5・この小屋にもどるときは気をつけてね。> 一番ちいさなおじいさんと、グスタフさんが残りました。 「わたしは、るすばん役だよ。グスタフ、さぁ、行っておいで。 私はここでまっているか、こまったことがあったら、すぐにしらせるんだよ。」 5) グスタフさんは夜のみちを、そーっと歩きます。 最初に足をとめたのは、白い壁のおうちのまえ。 コン、コン、コン、 こっそりノックをすると、スーっとドアがひらきました。 グスタフさんは、ちいさな声で「メリークリスマス。」 なかにはあおいセーターのおとこのひとと、おなじいろのセーターをきた女の人がいいました。 「メリークリスマス。右の奥の部屋で、ねています」 グスタフさんが右の部屋にはいると、おとこの子がひとり、寝ています。 グスタフさんは、こえをださずに、こころのなかでいいました。 「きみのほしいものは、これだね。ちゃんと、あずかってきたよ」。 グスタフさんは、そおっと、<あおい海が、きらきらとかがやく地球儀>をまくらもとにおきました。 「そしてこれは、おじさんたちからだよ。」 <いちごジャムの小びん>をそのよこに置きます。 すやすやすやすや。グスタフさんがしずかにしずかにうごくので、おとこのこはぐっすり寝ています。 この子は、あしたのあさ、地球儀をみて、どんなかおをするのでしょう。 グスタフさんがその家をでるとき、 あおいセーターのおんなのひとがいいました。 「ありがとうございました。らいねんもまっていますね。」 にっこりわらって、グスタフさんはあるきはじめました。 サク、サク、サク。雪がふりはじめています。 6) つぎにグスタフさんがノックしたのは、屋根に丸いまどのあるおうち。 シマシマの洋服を着たおとこのひとが、やっぱり小さな声で「メリー・クリスマス」。 おとこのひとがあけたドアのなかをグスタフさんがのぞいてみると、 ちいさなおんなの子と、おかあさんが寝ています。 おかあさんは、こえをださずに、ちいさくおじぎしました。 「この子のほしいのはこれですね」 おかあさんはだまったまま、ゆっくりおおきく、うなずきました。 グスタフさんは、<赤いチョッキを着たお人形>を、おかあさんに見せました。 そのとき、「くしゅん!」 おんなの子がくしゃみをしました。 グスタフさんはお人形と<あめだまの小びん>をおくと、そーっと、そーっと、そのへやをでました。 グスタフさんが出たあとに、おんなの子がねむそうなこえで、いいました。 「ママ、ママ、いま白いヒゲのおじさんがいたよ。わたし、みたよ。あのひと、だあれ?」 「そうね、ママもみたわよ。あのひとは・・・。」 おかあさんが名前を言うまえに、女の子はすやすや。また、眠ってしまいました。 あしたのあさ、白いひげのおじさんのこと、おぼえているのかな。 7) つぎにグスタフさんがあしを止めたのは、ちいさな黒いおうち。 このおうちには、おとうさん、おかあさん、おばあさんと、二人の男の子がすんでいるはず。 ドアをあけたのは、めがねをかけたおばあさん。 「さて、こまったわ。うちの子たち、まだおきてるんですよ、どうしましょう。」 「えっ、もうこんなおそいのに」 「そうなんです。あの子たちの父親と母親は、今日の夕方にはもどるはずで仕事にでたのですが、 西の島の連絡船が故障しているみたいで、まだもどらないもので。 帰ってくるのを待っているといってきかないのです。」 ほんとうは寝ているよい子にだけしかプレゼントはあげないのですが、 お父さんお母さんがかえってこないうえに、クリスマスのプレゼントもとどかなかったら、 どんなにか悲しいことでしょう。 お父さんお母さんが帰ってくるまで、 プレゼントの箱をみていれば、少しは楽しい気持ちになれるかもしれません。 グスタフさんは、プレゼントを袋から出すと、めがねのおばさんに手渡しました。 「こどもたちとお話することはできないので、わたしはここでかえります。 こどもたちにプレゼントをわたして、窓の外を見るように言ってください。」 おばあさんは、プレゼントをわたしながら、いいました。 「いま玄関のところに、こんなものがおいてあったよ。」 「おばあちゃん、サンタさんがきたの? サンタさんみたの?」 「いいや、見てないよ。ノックの音をきいてでたら、このはこがおいてあったんだよ。 まだ近くにいるかもしれないねぇ」 こどもたちは、おおいそぎで窓のカーテンをあけてそとを見ました。 ずーとはなれたところで、赤い服を着たひとが、歩いていくのがみえました。 7-2) つぎの2階建てのおうちでは、グスタフさんがびっくり。 しましまパジャマのお父さんに案内された部屋には、女の子とおかあさんと赤ちゃんがねていました。「きのうのよるに、赤ちゃんがうまれたんです。」 女の子には、雪のようなまっしろなセーターのプレゼント。 でも、あかちゃんのぶんがありません。 「あかちゃんはなにが、ほしいのかなぁ。」 グスタフさんは、よけいにもってきたいちごのジャムの小びんを3つ、お母さんのまくらもとに、おきました。 「あかちゃんがほしいのはおかあさんのおちち。おかあさん、げんきで、がんばってください。」 8) そのあと、なんけんかのおうちをまわるうち、ゆきはだんだん、つもってきました。 ザクザク、ザクザク。 さてさて、ちいさなおじいさんにまかされた10個のプレゼントをくばりおわったグスタフさん。 なんとか仕事がおわり、つかれてはいるけど、まんぞくまんぞく。 グスタフさんのお仕事はなんだったのかなぁ。 そう、グスタフさんの今夜のお仕事はサンタさんのお手伝い。 あずかったプレゼントを届けていたのです。 北の町のはずれの小屋にあつまっていた7人のおじいさんは、 この町のゆうびん屋さんだったのです。 でも、どうして郵便屋さんがプレゼントを、くばっているかというと・・・。 だって、なれないまちでサンタクロースさんが道に迷ってしまうかもしれないし、 時間がなくってとどけられないことになってしまうかもしれないから。 まいにちの郵便のしごととちがって、 たまにはこういうかわった仕事はたのしいなぁ。 グスタフさんは、しぜんと笑顔がこぼれます。 >>>>>>つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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