男爵夫人のひとりごと
大学に入ってバーテンダーのアルバイトを始めたばかりの私が、一番最初に覚えた「ちょっといいワイン」はバローロという名前だった。 渋面の男爵が夕闇に沈む葡萄畑の畝の間を「ハイッ」と馬を駆ってまっすぐに自分に向かってくる光景を勝手に想像して、バローロ、バローロ…とつぶやいていると、メニューに無いワインの名前をつぶやいている小娘を不憫に思ったのか、チーフが行きつけのワインバーに連れて行ってくれた。 それから私の人生はバローロと供にあった。アルコールに強い私はネッビオーロの重さを愛し、イタリアへ旅した際にもこのワインを求めて悦に入った。いつの間にか、重い赤ワイン以外はワインに非ず、と公言するスノッブぶりを呈していた。 …男爵は突然現れた。「俺、イタリアンレストランに行ったことないんで行きたいっす。」と嘘か本当か判断のつきがたい台詞とともに。その男爵は馬にも乗っておらず、走っていたのは葡萄畑ではなく無機質なオフィス街のビルの谷間だったけれど。私は義理で行った合コンで出会って連絡をもらったが、実は顔も覚えていなかった相手をまじまじと見た。 一番近くにあったイタリアンレストランは、カジュアルだったにも関わらずバローロをおいていた。そしてあろうことかその「イタリアンレストランにいったことがない男」はそれを注文したのだ。価格も安く「これがバローロ?」と思うくらい軽かったのだけれど、私の人生のなかで一番の「記念すべきワイン」になってしまった。 その人と結婚して2年。謎の男爵の呪縛がとけたのか、それからの私は憑物が落ちた様に軽口の白ワインを楽しんでいる。気に入りはやはりイタリアのワインだ。太陽の香り漂う明るい口当たりに、陽気な歌のひとつも飛び出してくる。 そして、バローロというのは村の名前であり、男爵(バロン)とは何の関係もない、ということはもちろん知っている。だけどバローロ、バローロ、とつぶやきながらイタリア産の手ごろなワインをあければ、目の前にいる男は今でも馬に乗った男爵に見えてくるものだから、不思議だ。バローロ・ヴィーニャ・ラ・ヴォルタ[2001]年・カブット・テヌータ・ラ・ヴォルタ限定品 Barolo Vigna La Volta DOCG [2001] Azienda Agricola Cabutto Tenuta La Volta ヴェロネッリ驚異の★★★3つ星エクセレント!91点!!ワインスペクテーター91ポイント!バローロ最古の4つ□送料無料セットだからお得!決算限定セット★イタリアワインぎっしり6本約12,000円相当と同格評価も入って8,888円タカムラ ワイン ハウス