「毎日更新」読レポ第2097 カール・ロジャーズ ピース・プロジェクト頂点「ルスト・ワークショップ」
「毎日更新」読レポ第2097カール・ロジャーズ~カウセリングの原点~著:諸富祥彦発行:㈱KADOKWA第7章 「静かなる革命」 ピース・プロジェクト頂点「ルスト・ワークショップ」 停滞を嫌い、絶えず新たな変化と前進を好んだロジャーズ。1987年2月4日に85歳で亡くなる直前まで、彼は絶えず新たな課題にチャレンジし続けた。核戦争の脅威をつくりだしているのは、核兵器の存在そのものではなく、国際間、人種間、宗教間の反目や憎悪や敵意である。こうした見地から、核戦争に関する論文を執筆し、積極的な提言をおこなってもいる(Rogers,1982b)。 このような晩年の活動の言わば頂点に位置するものが、1985年11月にオーストリアのルストで4日間にわたって開催されたルスト・ワークショップである(Rogers,1986b)。中央アメリカ諸国の緊張緩和を目的としたワークショップでには、3人の前大統領、コスタリカの副首相を含む政策立案者、政府高官、国会議員、大学教授、平和活動家、資金援助した銀行の重役など50人が17ケ国から参加した。主催はコスタリカ平和大学と人間研究センター。責任者はロジャーズと前コスタリカ大統領で平和大学創設者のカラソ博士、オーストリアのある大銀行の頭取が参加者全員の滞在費を提供した。 全体会のファシリテーターはロジャーズが務め、小グループには人間研究センターのスタッフ2名が参加した。最初の3日間は午前中にコミュニティ・ミーティング、午後にスモール・グループ、夜に講演もしくはパーティという日程。最終日の午後には記者会見が入り、夜にもう一度コミュニティ・ミーティングが行われた。 初日、米国市民がニカラグアの政府高官に向かって、「なぜ国民の自由を制限するのか」と迫る場面から開始した。対話というよりも論争風のやりとりが交わされた。2日目になっても参加者の発言は演説風調のものが多かった。 しかし3日目の朝に参加者が相互の感情に耳を傾け始めた。3日目の夜に企画されたホイリゲ・パーティ(葡萄の収穫期に方策を祝ってワインの新酒を飲むオーストリアの伝統的パーティ)は「促進的な出来事」となった。アルコールの効果もあってかコミュニケーションが活発になり、敵対する国の参加者同士がお互いの子どもの写真を交換し、ホームステイの計画をたてあった。別の二人の参加者は、両国が共存できる政策をお互いの政府に提出することを誓いあった。 最終日の午前中、コミュニティ・ミーティングでグループのプロセスはピークを迎えた。最終日の午後に予定されている記者会見の参加者メンバーをめぐって、議論は紛糾していた。しかしカラソ博士の「私はコントラ派に勝ってほしいのでもサンディニスタ派に勝ってほしいのでもない。私が欲しいのは平和だ、みんなで中央アメリカの第三の道を探してほしい」という発言によって雰囲気が和らいだ。あるニカラグアの参加者による「大権力が小国に耳を傾けることもあることをここで確信した。不信はここでは克服された。中央アメリカの問題の話し合いで解決できる可能性がほんとうにあるんだ」という発言で、グループの雰囲気は好転した。 多くのメンバーがグループ体験の意義を語り始めた。ある中央アメリカの政府高官は「当初はこんな方法が成功するとは思えなかった。アジェンダ(プラン・計画」)なしの会合で怪しいと思っていた」と率直に率直に打ち開けた後、「アメリカとニカラグア人が直接ふれあったことに驚いた。平和は我々一人一人の内側で始まることを確信した」と語った。こうして、開始時に存在していた緊張は解消され、大半の参加者が肯定的な感情を抱いてワークショップは終了した。新聞では「稀な政治的・心理的実験」「永続的な平和の過程の触媒。世界の他の紛争でもおこなわれるべきだ」などと報道された。 ロジャーズはこのワークショップの成功要因として、次の点を挙げている。①国際緊張の緩和というテーマが健全であった。②テーマが中央アメリカの死活にかかわる問題であったたため、雰囲気が引き締まり、余計な話題が出なかった。③カラソ博士の人脈で中央アメリカその他から錚錚たる地位のメンバーが参加した。④メンバーはお互いに不信感を抱きあっていたが、ファシリテーターはグループを深く信頼し、動じることがなかった。⑤マスコミを閉め出したので、自由な感情表現ができた。⑥幸運にもホイリゲの時期でよいパーティが持てた。 大統領クラスの参加者何人もいて、中央アメリカの緊張緩和に一定の成果をあげることができたルスト・ワークショップ。80歳の誕生日に余生を国際平和に捧げることを宣言し、「カール・ロジャーズ ピース・プロジェクト」を打ち立てたロジャーズにとって、大きな意味のあるイベントになったことは間違いない。 と著者は述べています。 ロジャーズは、中央アメリカ諸国の緊張緩和を目的とした「ルスト・ワークショップ」で大きな成果をあげた。晩年のロジャーズはこのワークショップで余生を国際平和に捧げることを宣言したようだ。亡くなる直前までピース・プロジェクトの活動をしていた。 このワークショップでは、私は成功の要因を6挙げているが、「②テーマが中央アメリカの死活にかかわる問題であったたため、雰囲気が引き締まり、余計な話題が出なかった」ところの、余計な話題が出なかった=テーマ―(目的・目標)を明確することで、参加者がそれに焦点(フォーカス)することが重要だと思う。それには「④ファシリテーターはグループを深く信頼」=ファシリテーターが参加者を見放さないで信頼し続けることが重要です。参加者すべてに平等に接することが参加者の信頼ともなります。また、「⑤マスコミを閉め出したので、自由な感情表現ができた」たこと=それぞれ、胸の中にある感情を普段は自ら抑えていたもの自由に自己解放ができたのが、この緊張緩和を緩んでいた要因だと思う。 私も川づくりのワークショップで試行錯誤でしたがファシリテーターとして体験経験しました。 ポイントは、私は、「信頼し続けること」「参加者が言いたいことなど自由な感情表現ができる環境」「テーマ―(目的・目標)を明確にすること」だと思う。