カテゴリ:遊女asomeの「嗜み」
「能の物語」「お能・老木の花」に続く白洲正子さんの『謡曲平家物語』は、世阿弥という人が創り上げた、平家の人々への鎮魂歌としての謡曲の魅力を余すこと無しに伝えてくれます。
白洲さんの語る能の世界は、幽玄の世界、世阿弥の世界でもあるのですね。非常に面白かったのが、白州さんは、幽霊を創り上げたのは世阿弥だとおっしゃるんですね。 死霊、生霊、悪霊の類ではなく、夢幻能の幽霊を作品で創り上げたというのです。能の世界に実際に生きている本人を登場させるよりも、幽霊として登場させ、その幽霊が語ることで、生々しい描写はベールが覆われたように美しく表現され、そして最後にはその幽霊が成仏し、幸せになっていくことが能世阿弥の能物語の特長だということなんです。 世阿弥の独壇場ともいえるこの幽玄の世界、非常に美しく、はかなくそしてあわれです。また世阿弥の出身地である伊賀と平家の関連性を示し、世阿弥が世に残した多くの平家の人々への鎮魂歌を読み進めていくと、おのずと世阿弥その人と、能への理解が深まってきます。 今回の謡曲平家物語は上に上げた二冊の本とは違う側面から能の世界を理解できたような気がします。世阿弥その人への深い洞察と理解が素晴らしいです。 まだまだ能の世界にほんのちょっと踏み入れただけですが、この能の世界を少しずつ理解してくことで、日本人に受け継がれている深い魂を呼び覚まされる気がして、心豊かになるひと時です。白洲さんの本はいつもいつも懐かしき、日本人の魂に触れる場所へといざなってくれる貴重な本なのです。 どうぞ皆様もぜひお読みになってみてください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.02.17 20:52:35
コメント(0) | コメントを書く
[遊女asomeの「嗜み」] カテゴリの最新記事
|
|