カテゴリ:「ジェンダーと哲学」の本
久々に瀬戸内さんの小説を読みました。その前に読んだ『謡曲 平家物語』では、白洲さんは世阿弥の作品のことを書きつつ、あるいは世阿弥そのものに迫って、なぜ平家物語を題材することが多かったかを解き明かしています。白洲さん、そして瀬戸内さんという、女性として、いい男を知り尽くしているお二人が、これほどまでに入れ込む世阿弥という人についての尽きぬ魅力を、この瀬戸内さんの小説で垣間見たように思います。
作者である瀬戸内さんが冒頭に語り、そして世阿弥の語りとなり、最後は世阿弥の晩年の地、佐渡で遣えた沙江の語りとなっています。そしてもしかしたら、沙江は瀬戸内さんの化身なのかもしれないと、まるで能舞台をみるような変化がまた味わい深いのです。60歳で出家している世阿弥と重ね合わさる瀬戸内さん自身の人生。作家として、物を書くということの終わりのない探求。全部仕上がるまでに3年以上かかったそうですが、魅力ある味わい深い作品です。 世阿弥と言う、この上なくいい男。男をも魅了してやまない男、そして女には限りなく優しい、知性と才能にあふれた、美しき日本の男、それはもう、イケメンなんてもんじゃない、絶世の美男子だった世阿弥にぜひお会いしてみたかったです。 いくつか体験した能の舞台を思い出しつつ、また謡いの美しいリズムの流れに乗りながら、 あっという間に読んでしまいましたが、とても爽やかで、至福感を味わえる小説です。 これを機に、能の世界にふれてみていただくといいのかもしれません。能は人々に至福感 をもたらすためにあるという、いかにも日本的な真髄を体験できる芸能なのですから。 「秘すれば花」この言葉に秘められた美しき日本人の魂をぜひとも取り戻したいですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.02.17 20:50:36
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