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2008.04.28
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能のお稽古を始めてそろそろ二年となります。舞台も十数回は観にいきました。
こうやって馴染んでいくと少しずつ能の世界が親しくなってくるようです。
矢来能楽堂の「のうのう能は」今回講義や対談が盛り込まれ、能の舞台だけではなく、多方面から全体的に理解が出来るので、とても楽しみにしています。今回は「物狂い」というテーマです。法政大学の山中玲子先生のお話はとても勉強になりました。「狂い」という言葉の意味合いが、昔と今ではずいぶん違う感覚なんですね。
今日は風姿花伝から解説がありました。憑き物の物狂いはいわゆるこの世の生き物ではなく神仏、生霊死霊の類を現し、古くからあったそうです。しかし、世阿弥は、思いゆえの物狂いという親子の別れ、恋人や妻や夫との別れ、このような思いに狂乱する物狂いの作品を作り、それを得意としたのですね。世阿弥の時代からこのような思いゆえの物狂いが演じられるようになったのです。今日の「隅田川」で、初めてお能の演目で泣く人に出会いました。いままで能の舞台は、一つのアートのように見てきたのですが、今日は心が動いている人たちが多かったです。
子供を亡くした母親の気持ち。舞台では子供に供養しようと母親がお経を上げ始めたときに、何処からともなく子方のお経を上げる声が聞こえます。そして幽霊となって現れる子方の姿と、その子方を追って抱きしめようとする母。この演出はかなりショッキングでした。
単純と言えば単純なのですが、情感がゆすぶられ、泣ける演出に感動しました。
なるほど、物狂いは、人の心の原点のようなところがあり、誰にも分りやすく、そして誰もが感動するものなのですね。これが長く続く物語の魅力なんですね。この作品は世阿弥の息子の元雅の作品です。父親である世阿弥の花のある幽玄の世界と趣が異なり、弱法師やこの墨田川のように、親子の深い情など人生の悲しみを表現する人だったようです。
能の世界は日本人の「もののあわれ」の感覚をよく表現する芸術だと感じますが、この世界にふれると、日本人としての感覚がすこしずつ蘇ってくるようです。






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Last updated  2008.05.27 01:05:57
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