地下道1949■第15回
地下道1949■第15回(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ ビルの前に乗り捨ててあった、ベンツを目ざとく見つけた男達がいた。ソビエト、MGBのエージエントだ。彼らは銃を構え、ビルヘはいっていく。 ムサシの大きな背が、彼らの目にはいった。ムサシは,鉄の首を、残った右手でしめあげようとしていた。MGBのエージエントの男達の消音読が火を吹いた。ムサシは鉄の体の上に倒れる。そのショックで、鉄の意識がもどってきた。鉄の上に、ムサシの血まみれの体が、のしかかっていた。三人の男が、物色している。ロシア人だ。ナイフに手をのばし、一人の男に投げた。一人の男のノドに当る。男は窓ガラスをつきやぶり下へ降ちる。残り二人 は消音拳銃を発射するが、弾はムサシの死体にのめり込むだけだ。 倒れていた竜が、おきあがりざま、二人の男へ向け撃った。一人は即死。残り一入は手にあたっただけだ。挙銃をおとし、逃がれようとした。 乾公介は,MGBのエージェントの監視を続けていた、その部下からの、至急の報告を受けた。ムサシのアジトの前に車を止め、音の聞こえた二階へあがろうとした。 ロシア人は階段の踊り場で一人、日本人が立っているのに気がつく。日本人は、落ちつきはらった様子で銃をむけた。それから、消音器で、その男の額をぶち抜き、ゆっくりと二階へあがってきた。「待て、打つな、俺は君達の味方だ」「何、味方だと、変な所にころがりこんできて、何者だ。おっさん」 鉄が、ムサシの体をようやく押しのけ、立ちあがっていた。 竜は、頭をふらふらさせながら、かろうじて、銃をこちらに向けていた。竜に一瞬の変化が起った。しばらく、乾の顛をながめていたが、驚いた様子で言った。「兄さん、兄さんじゃないか 。俺だよ。弟の竜介だよ」「ああ、竜介!」 乾の口に、にがいものが走る。汗がでる。だきしめている。「死んだものと思っていた」くそっ、何んてことだ。よりにもよって弟が。しかし、あのプランは完遂しなければならない。と乾公介は,思った。だきしめていた竜介をはなし、言った。「いそげ、ここはまかせろ。新手がやってくるぞ」 窓から、五台の車が停車するのが見える。「恵、妹の恵は、どこだ」 竜がさけぶ。一部始終を見ていたらしく。恵はしぱられ、気を失なっている。 鉄は、恵をかつぎあげる。竜もあとに続く。兄の公介も続いている。抜け穴の入り口にはいったところで、公介はいう。 「それじゃここでか別れだ。私はこの穴を塞ぐ」「何だって、兄さんはどうするんだ。」「まかせて分け、俺は荒事にはなれているんだ」「またあえるね」竜が、兄の顔を見上げて、心を込めていう。しかし、公介の心は乾いている。「もちろんだ。必ずお前達を捜し出すぞ。さあ早くいくんだ」三人が抜け穴に消えたあと、公介はダイナマイトをしかけ、抜け穴の入り口を、吹きとぱした。 公介の後には、音も立てずに五人の男が近よっていた。公介は、銃口をゆっくりと、下ろした。「乾チーフ、これでよかったんですか」間があった。公介は、やがておも重しげに、「そうだ、作戦終了だ。あとはソ建軍が動き出すのを待つだけだ。すまんが一入にしてかいてくれないか」 公介一人を置いて、五人の米軍OSSのエージエントは下へ降りていった。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/