宇宙から還りし王(山稜王改題)第5回
宇宙から還りし王(山稜王改題)第5回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ ふらふらしながら、リーファー鳥はケインをねらう。ずりおちたケインの体の上に全体重をかけ、足爪でケインをひきさこうとする。ケインの足は岩場の突出部分にかろうじてかかっている。ゆるんできたロープがケインの体におちてきた。ケインはロープの一端をつかみ、残りを投げる体勢をとる。素早く、後へ体をのけぞり、リーファー鳥の首にロープをかける。一まきしたのち、端を岩にかけ、全体重をロープにかけて、飛びおりる。岩場をケインは落下する。一瞬何かにひっかかり、降下が止まる。上の方から声にならない絶叫が響いてきた。大量の血が雨の様にふってくる。ガクンと再びケインの体が墜ちる。ケインは何とか足場をみつけ、そこに踏みとどまる。大きなかたまりが、壁にぶつかりながら、墜ちてくる。リーファーの頭部がちぎれておちてくるのだ。がりーファーの眼は、不思議に安堵の色をたたえていた。一瞬だったが、リーファーの眼の色をケインは忘れることができないだろう。 「くっ、リーファー」 ケインは壁の王で、何かわけのわからない感情の爆発があり、涙を流していた。しばらくは、その岩場でむせび泣いている。 ケインはもう後戻りはできない。リーファーは彼の前任者の1人だった。リーファーに何かあったのか、ケインには理解できなかった。理解しようとも思わなかった。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/