日本人の時代■第7回
日本人の時代■第7回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第7回■2022年 三月 中部ヨーロッパ 山岳地帯 ョーロッパ中西部アルプス山嶺の中にその城はあった。巨大コンツェルン=ラドクリフ=グループの議長、ラインハルトの別荘であった。「ラインハルト会長、ホットラインがはいっております」くつろいでいる銀髪のラインハルトの前に腹心であるファーガソンがあらわれた。 「どこからかね」 「情報ネットワークサービスのブキャナン=オーガナイザーだと言っております」 「どんな話か聞いたかね」 「それが、はっきりとはいわないのです。会長がてがけておられるピック=プロジェクトに関する事だと中しておりますが」 「あまり、話をしたくないが」 「話を聞かないと大変な事態をまねくとも申しておりますが」 「え1い、しかたがあるまい」 ラインハルトはしぶしぶフォーンをとった。 壁にかかっているフォーンの画像があらわれ、冷い青い眼をしたブキャナンの顔が出現した。 「ラインハルト会長、初めまして、情報ネットワーク=サービスのオーガナイザー・ブキャナンです。お目にかかれて光栄です」 「で、君が私に話したいという内容は何かね。この強引な連絡手段には、いささか犯罪的なにおいがするね。このホット=ラインに入りこめるはずがないのだ」 「それは会長、おたがいさまでしょう」 「いいかね、ブキャナン君とやら、君たちが何と呼ばれておるか、知っているだろう。君らは情報マフィアだよ。本来は私と話しなどできないどぶねずみなんだよ」 ブキャナンはラインハルトの侮蔑の言葉など、まったく意に関していないようだ。 「じゃ、ラインハルト会長、あなた方のイエロープランはどうなんです」 「何だって、もう一度言ってみろ」 「イエロープランですよ。それも今年、6月1日に発動するビッグプロジェクトだ」 「なぜ君たちがそれを」 「言ったでしょう。我々は情報ネットワーク=サービスです。この地球上で我々の知りえない情報などありはしない」 ラインハルトはいささか、ブキャナンに対する、つっけんどんなしゃべり方を改めていた。 「それで、イエロープランについてどこまで知っているというのかね。それに君たちの我々に対する要求はなんだね」 「最初の質問の答えはすべてです。次の質問に関しては、我々情報ネットワークサービスを,そのプロジェクトに加えていただきたいわけです」 「君たち、情報マフィアを、我々のプロジェクトのメンバーに加えろだと。ブキャナン君、ふざけてもらってはこまる。我々、ラドクリフ企業体の構成メンバーは素姓正しいものばかりなのだよ。それに比して、君たちは何だね。君達は他人の情報を盗みだして、それを他人に売りこんだり、、本人をおどかして金をまきあげるのが商売だろう。商売変えでもしたいと言うのかね」 「いいえ、ラインハルトさん、我々は事業規模を拡大したいだけですよ。イエロープランは我々にとって願ってもないビジネスチャンスなんです」 「君の言いたい事はそれだけかね。考えておこう。君のネットワークサービスの利用方法をね」 ラインハルトは怒りをこらえて、CRTをOFFにした。 「ファーガソン、なぜ、イエロープランが、彼ら、情報マフィアにもれたのだね」 「いえ、わかりません。彼らは各所の情報ラインまいといううわさです」に潜りこむのがう ラインハルトは大きなソファにすわりかかり、頭をかかえていたが、一つの決心をしたようだった。「ファーガソン、いいかね、ヒュルケナー博士を消すのだ」「何ですって」 ファーガソンは驚きの表情を隠しきれない。 「いいかね、二度と同じ事をいわせるな。博士を抹殺し、博士の研究施設を破壊しろ。むろん事故にみせかけるのだぞ」 「わかりました。マスター、あなたがそうおっしゃるならば」 ファーガソンは、抹殺組織「クーラー」の電話番号をインプットし始めていた。 窓の外にはヨーロッパアルプスの山嶺に冷たい光を放つ氷河が見えている。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」