ジャップス=デイズ日本人の日々■第2回
ジャップス=デイズ日本人の日々■第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第2回■2022年 5月 地球カルフォルニア「ケン、ケン、待ってよ」 ケン・アサガはジュンに呼びとめられる。カルフォルニア大学バークレー校のキャンパスである。ジュンはクラスメイトであるケン・アサガを追いかけていた。 ケンは日本の情報工学大学を卒業後、カルフォルニアにある現代情報工学の講座を受けるために留学していた。ケンは日本人離れした体格の持ち主であり、日系3世といっても通りそうだった。英会話能力においては、会話学校初まって以来の成績であり、担当教師からパーフェクト=ケンのあだ名をさずけられていた。 ジュン=バルボアはカルフォルニアクイーンに、18歳の時に選ばれた事のある才媛で、22歳の今は、バークレー初まって以来の情報戦略家と教授達から見なされていた。 息せききって、ジュンはケンの広い肩に追いついていた。 「ねえ、ケン、変なうわさがあるの」 「ヘー、うわさだって。ジュン、君独特の『まやかし理論』じゃないだろうね。残念ながら僕は今、リアクションテストの端子はつけてはいないぜ」 ケンはにこやかに答えていたが、ジュンの真剣な顔にどきりとする。「どんなうわささ。君の顔色からすると、大変な事のようだな」「日本人狩りが始まるっていうのよ」「おいおい、ジュン、それこそ悪いジョークだよ。今は第2次大戦前じゃないんだぜ。今は21世紀が初まったばかりだ……」 ケンの笑声もジュンの顔を見ると、ぴたりと止まる。 「悪いけどねえ、ケン、真剣に聞いてほしいの。私のパパの専門分野を知っているでしょう」 「ああ、確か、ジュンのパパ、つまり、バルボア博士のスペシャリティはコミュケーション技術だったね」 「そう、そのパパが、ぜひともあなたに会いたいというのよ」 ジュンの表情も真剣そのものだった。 「わかった。ジュン、バルボア博士にアポイントメントをとってくれないか」「oK、ケン、ちょっとまってね。今、電話をいれてみるわ。研究所にいるかもしれないわ」 ジュンはフォーンで話、しばらくしてから、ケンへ言った。 「いいわ、ちょうど研究所にいるわ。ぜひとも来てくれって、が言ってるわ」「じゃ、わかった。車をとりにいってくる。ここで待っててくれないか」 ケンはジュンをひろい、郊外にあるバルボア博士の研究所へ向かった。バルボア博士の研究所はそれ自体の外形が旧いタイプの電子計算機の形をしていた。高台にあり、ハイウェイの遠くからでもよく目立った。 ケンは駐車場に車を入れ、ジュンと共に、研究所にはいる。 玄関の所にバルボア博士が立っていた。すらりとした長身で、顔はなぜか、ギリシアの哲学者ソクラテスを思わせた。が彼はネゴシエターとしては一流で、政府にも軍にもかなりのコネクションを持っていた。 バルボア博士はケンと握手をして、言う。 「やあ、ケン、久しぶりだね。とゆっくり話をしたいところなんだが、ジュンから聞いてもらったと思うが、君に聞いてもらいたいものがあるんだ」 バルボアはあまりいい顔色はしていない。重大な事態がおこりつつあることがケンにも感じられた。 バルボアはケンとジュンを自分のプライベートな研究室に連れていった。 「君、すまんが、少し席をはずしてくれんか。それにしばらくの間、電話はとりっがないでくれたまえ」 秘書ミス=グリーンにそう言った。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/