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2009.09.10
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~MIDI・ギタープログラミングの奥義(14)~   
 
☆アーミング  
 
アーミングとは、トレモロユニットのバーを使ってブリッジを動かし、
ピッチを変化させる奏法のこと。  
このプレイの名手といえば、「ロックギターの神」として名高い
ジミ・ヘンドリックス。 
フィードバックを絡めた自由自在で強力なアーミングはまさに衝撃的で、
彼の名は今なお「伝説のギタリスト」として語り継がれている。  
 
他に、ジェフ・ベックのスリリングなアーミングの妙技も実に見事で、
感嘆の一語に尽きる。  
 
そしてこのプレイを語る時、切っても切れない存在が
エドワード・ヴァン・ヘイレンだ。 
フロイド・ローズのユニットを駆使してのエディのアーミングは強力で、
まるでジェットコースターで急降下したような落差が聴く者の意表をつき、
何とも言えない快感の渦に落とし込むのだ。  
 
フロイド・ローズのユニットはそれまでのものとは違い、
音程の変化幅がグンと広く、ナットとブリッジで弦をしっかりと固定している。 
したがってアーミングによるチューニングの狂いもほとんどなく、
思いっきりアームを揺らすことができるという利点がある。   
 
さて、このアーミングをMIDIでプログラムするにはどうしたらいいのか。  
 
弦の張力を変化させて音程を揺らす理屈はビブラートと同じだが、
アーミングの場合は元のピッチから高い方にも低い方にも変化する上に、
揺れ幅が大きく、しかも一定ではない。  
 
さらに、アーミングを単体で使うことはあまりなく、
ほとんどは他の奏法と併せてプレイするので、
プログラムする前には様々なレパートリーが頭の中になくてはならない。  
 
アーミングと絡めた奏法には、トリル、ハーモナイズド・チョーキング、
ハーモニクス、フィードバック等があるが、
フレーズのニュアンスによってはチョーキングや
ビブラートのように聴かせることもよくあるので、
本来のそれとの区別をハッキリとさせることも重要なポイントになる。  
 
では、具体例を少し紹介しよう。  
 
まずトリルとの併用。 
トリルの連続フレーズを弾きながら、徐々にアームダウンしていく。 
当然のことながらピッチも徐々に下がっていくが、
この時のベンドデータ値の推移は、アームダウンするまでは通常どおりの
ピッチ変化だが、ダウンを開始した直後からデータ値はランダムに落ちていく。 
 
左手をフレット上でダウンさせていくわけではなく、
ブリッジを動かして弦のチューニングを根こそぎ変えてしまうのだから、
本来は存在しない狂った音程のフレーズになって次第に落ちていくのだ。  
ということは... 
下がっていくデータ値も計算して割り出した数値には当てはまらなくなる。 
あえてデータ表を見ながらトリルの動きに合わせて狂った音程を入力していこう。  
 
でもこれも、理屈で適当に判断してプログラムするのではなく、
再生をしながらよりそれらしく聴こえるように調節していく。 
その的確な判断を下すには、実演奏の聴き込みが大事になってくるのだ。  
 
次にハーモナイズド・チョーキングとの併用。 
これは、ある意味で現実性に欠くプログラムをする必要がある。 
ハーモナイズド・チョーキングというのは、1本の弦をチョーキングし、
もう1本をフラットの状態にして、
それを同時に弾いて短3度でハモらせるテクニックのこと。 
したがってそれぞれのデータがもともと2つのトラックに分かれている。 
 
これにアーミングをかけるとなるとちょっと厄介なことになる。 
2つのトラックに同じピッチ変化の情報を書き込むだけでも面倒なのに、
ソング全体の都合で2つのベンドレンジが違っていれば、手の施しようがない。 
仮に2つのトラックともレンジ12に合わせたとしても、
一方はチョーキングし、もう一方はしない。 
ということは、
チョーキングする方だけに先にピッチの底上げが生じるわけだから、
2つのトラックに書き込むデータ値の推移は、同じにはならない。 
 
いや、地道に足し算をしていけばできないことはないが、
そこまでしてもそれとは全く関係のない所にもうひとの問題点がある。 
それは、それぞれの弦の音が別のトラックで鳴っているが為に、
ギターらしいリアルな「濁り」が欠如してしまうことだ。 
同じトラック分けでもユニゾン・チョーキングなら
そんなことにはならないのだが、
「場」が違えばいきなり嘘っぽくなってしまう事は
MIDIプログラム上でも起こるのだ。 
 
そこで、ハーモナイズド・チョーキングにアーミングをかける時は、
従来のトラック分けをせずに同じトラックでやってしまう。 
 
どうやって?...と思うだろうが、ここからがちょっとしたトリック。
ハーモナイズドではなく、ダブル・チョーキングを
ハーモナイズド・チョーキングに聴かせてしまうのというもの。 
短3度のハモりをダブルでやると、実際は1本が1音でもう1本を半音でする。 
こうしないと運指的に困難だからだ。 
しかし、MIDIでは同じトラック上でそんなことはできない。 
ならば、元から短3度の関係の2つのノートを同時に1音チョーキングさせた
仮想のダブル・チョーキングのデータを入力して、
いかにもハーモナイズド・チョーキングのように聴かせてしまえばいいのだ。 
 
厳密に言えば、
2本の弦の音が同じタイミングで同じピッチ変化をしているのだから、
多少の違和感は残るが、
トラック分けをするよりは遥かに「それらしい」し、効率的である。 
これは、アーミングを用いない単なるハーモナイズド・チョーキングにも
当てはまるので、覚えていてほしい。 
 
打ち込みMAXに近づけば近づくほど、
こういった「創意工夫」は欠かせなくなる。 
 
続きは次回に。
 





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Last updated  2011.08.13 22:18:08
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