~MIDI・ギタープログラミングの奥義(15)~
前回のアーミングの続き。
アーミングのプログラムについて、あと少しだけ補足しておこう。
前回の記事と話が前後したかも知れないが、
基本的な所を押さえておきたい。
何も派手にグニャグニャとバーを揺らすばかりがアーミングではない。
控えめに使うのも、さりげなくてまたカッコいいものだ。
まず、アームビブラート。
基本的なアームビブラートは、アームダウンと定位置への戻しの間で行う。
つまり、フィンガービブラートとは逆に、
元のピッチよりも低い所と定位置の間で音程の揺れが繰り返される。
ならば、MIDIでプログラムする場合も、
マイナスの位置から0ポイントにピッチベンドの波を描かないと
アームビブラートにはならないので、要チェック。
もう少し突っ込むと、アームビブラートはフィンガーよりも
ビブラートの揺れが不規則になる傾向があるので、
データ入力もそれを考慮に入れること。
もちろん、低いピッチから定位置を通り越し、
高いピッチまでアームアップして定位置を中心に
上下に揺らすアームビブラートもある。
こちらの方がよりトリッキーに聴こえるわけだ。
プログラムの手法は言うまでもないと思う。
もうひとつ、これは「アームチョーキング」とでも名付けようか...
つまり、アームを使ってチョーキングのように聴かせるテクニックなのだが、
実際のチョーキングとのコンビネーションとそうでないものの2通りがある。
両方ともピッキングする前にアームをダウンしておく。
前者の場合、ピッキングした直後にアームを定位置に戻して
すかさずチョーキングをする。
1音チョーキングでもそれ以上の音程幅をアーミングによって作り出す。
普通のチョーキングと違うのは、
始まりのアームダウン状態から定位置に戻すまでの
「シャクリ上げ」がプラスされること。
たったこれだけでもニュアンスはガラリと変わって、カッコよくなる。
後者の場合は、左手はフラットな状態にしておいて、
ピッキングの直後に一気にチョーキングひとつ分の音程までアームアップする。
聴こえてくるニュアンスも前者とは多少異なる。
プログラムは、前者はシャクリとチョーキングの部分を違うラインで描き、
後者は最初から一気に直線ラインで繋げばよい。
☆フィードバック
フィードバックとは、アンプから出た音で弦を共振させる...
それをピックアップが拾うことでハウリングのような効果を得る奏法だが、
実際のハウリングのような不快な響きではない。
どうやってこの効果を得るのか...
簡単に言うと、あるスポットにハマった時に発生する。
アンプの音量や音質、あるいはギタリストの立ち位置やギターの向きや角度、
さらには使用しているエフェクター等の様々な条件が複雑に絡み合って、
フィードバックが発生するポイントが決まる。
ギタリストはステージ上で事前にそのポイントをチェックし、
最も鮮やかにフィードバックする立ち位置と
ギターの向きや角度を覚えておくのだ。
しかしこれも、耳障りなハウリングと紙一重で、
アンプのパワーが大き過ぎると 、
不要な倍音を引き出してハウリングが発生してしまう事もあるので、
加減が難しい。
この奏法の名手と言えば、
ジミ・ヘンドリックス、ジェフ・ベック、
エイドリアン・ブリューなどが有名だが、
私は若い頃、マイケル・シェンカーのプレイに大きな影響を受けた。
さあ、これをMIDIでプログラムするには一体どうすればいいのか?
予測は困難だと思う。
このプログラムは、単にコントローラー等を操るだけでは表現できない。
発想そのものを変える必要がある。
つまり、鳴っているギターの音を何とかしようとせず、
まったく別物のインストを使うという事だ。
フィードバックの音によく似たキャラクターの音色...
例えば、Pad系にそれに該当するものがあるので、それを使う。
どうやって?
始まりのギターの音量を徐々に下げていき、
その後にフィードバック用の音色を重ねる。
2つの音色が自然に変化していくニュアンスを出す為に、
両者をクロスフェードさせる。
このフェードのラインの取り方が非常に難しいところなので、
しっくりと来るまで何度でもやり直す。
でもこれは一番簡単なやり方で、
もっと緻密にしようとするなら手段はまだある。
自分でフィードバック音を作ってしまう。
どうやって??
アナログシンセのソフトで文字通り音をシンセサイズ(合成)する...
こちらの方がよりリアルなフィードバック音が作れるので、ぜひお試しあれ。
さて...具体的なプログラム法は省略するが、
最後にもうひとつだけギター奏法を紹介しよう。
それはタッピング。
ライトハンドとタッピングを混同している人も多いが、
厳密に言えばこの2つは別物。
ひとことで言うと、振動している弦に対して行うのがライトハンドで、
そうでないものがタッピングである。
しかし、時代の流れと共にその定義も変わりつつある。
ヴァン・ヘイレンによって世界中に広められたライトハンドも、
名プレイヤー達により次第に手を加えられていった。
その代表的な人物がスタンリー・ジョーダンだ。
彼は両手を指板上に乗せて、まるでピアノのようにギターを奏でる。
左手でバッキングをしながら、右手でアドリブソロを弾く。
完全4度チューニングでポジション関係も全弦一律にしてある。
こうなると、エディのスタイルとは大きくかけ離れたものになるが、
右手を指板上で使うテクニックの総称を、
タッピングと呼ぶようになって行ったのかも知れない。