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それは突然だった。
最近は、めっきりと足腰が弱くなり、 内臓にも悪い症状がいろいろとでてきていたマロン。 でも、かかりつけの先生からいただいた薬のお蔭で、 容態は安定していた。 7月4日水曜日。 いつものようにマロンを何度もナデナデして、おやすみを言った。 週末は自宅のベッドで一緒に寝るのだが、 平日はそれができないところに居るので、 マロンとは別々の場所で寝ている。 7月5日木曜日。 朝、マロンの寝床に行ってみると、 いつもはすぐに近寄って来るのに、起き上がる気配がない。 「まだ眠いのかな?」と思い特に気に止めなかったが、 その後何度呼んでも私のところに来ない。 この時、初めてマロンの異変に気づき、 慌てて抱き起こしてみると、もう自力で立ち上がる事が できなくなっていた。私はもう、気が気ではなかった。 動けなかったからだろう…その場でオシッコをしていて、 マロンの身体は酷く濡れて汚れていた。 無我夢中で、浴室で綺麗に洗った。 でも、四本の足の自由がきかないのはもちろん、 もう首も座らない状態に… 懸命にマロンをあやして身体を拭いてあげると、 苦しそうにかすかな鳴き声を出す。 私は、胸が張り裂けそうになりながら、 「マロン…よしよし…大丈夫だよ…パパがついてるからね…」 と何度も声をかけ続けた。 そして、優しく頭を撫でてあげると、 いつものように嬉しそうなため息を漏らすのだ。 ドライヤーで毛を完全に乾かして、毛布の上にそっと… 時計を見ると、まだ先生の病院の診療は始まっていない時刻。 その時が来るのを祈るように待ちながら、先生のところへ。 即座に先生の診察が始まる。 体重と体温の計測。触診と聴診器での診察。 血液を採取したあと、超音波で内臓を視る。 モニターには怪しい映像が映る。 卵巣に腫瘍ができて、そこから出血している可能性があるとのこと。 しかし、腹部を開いて患部の出血を直接止める外科手術は、 あまりにもリスクが高いので、できない。 先生のくだした判断は、点滴と同時に、 止血剤とその他の必要な薬剤をマロンの体内に投入することだった。 速やかに処置をしていただいて、血液検査の結果を見てみると… 以前からの治療箇所の悪化ではなく、 まったく関係のない部分の発病である事が判明。 とにかく、出血が止まるのを待ち、 午後にもう一度診察をすることにした。 マロンを連れて帰る。 ぐったりとした様子は変わらないが、 先生の処置のお蔭で少し楽になったのか…穏やかに横になっている。 午後の診察までの間、やらなければいけない仕事にかかる。 途中で何度も手を止めてマロンの様子を伺う。 「マロン…ちょっと待っててね、また先生のところに行くからね…」 しばらくは静かな呼吸だったが、次第にそれが荒くなってくる。 そして食べたものを吐く。苦しそうだから、 身体を起こして背中をさする。心配で心配で仕方がない。 私は、早々と仕事を終えて、午後の診察に備えた。 15時、仕事終了。片付けをしてまたマロンの様子を確認。 15時15分、午後の診察までにはまだ少し時間がある。 荒れた呼吸ではあったが、意識はしっかりとしていたので、 私はマロンの傍を離れて病院に行く準備を… 15時40分、「よし、今出発すれば、午後の診療が始まる少し前に着く」 はやる気持ちを抑えてマロンに駆け寄る。 一瞬、自分の眼を疑った。…マロンが、死んでる。 「えっ?嘘だろ、マロン…嫌だよ…起きてくれよ…」 荒れた息で上下に大きく動いていたお腹は微動だにせず、 眼は薄く見開いたまま、眠るように息絶えていた。 その身体に触ると、まだ生きているかのように暖かい。 絶命してから、殆ど時間が経っていないんだ… 心の底から、どうしようもない後悔の念が込み上げてきた。 「こんなことになるなら、仕事を終えて先生のところに行くまでの間、 ずっと抱っこしていてあげれば良かった…」 涙は、滂沱となって流れ落ちる。 マロンから目を離していた空白の25分間… いったい、そのどこで逝ってしまったのか?… 神様…どうかその瞬間に戻してください。 マロンは、私の腕の中で旅立つことを何よりも望んでいたに違いない。 それなのになぜ、そうしてあげられなかったのか… なぜ、マロンの臨終に立ち会うことができなかったのか… それを思うと、悔やまれて悔やまれて仕方がない。 マロン…ごめん、間に合わなくて、本当にごめん、 苦しかったろ?辛かったろ?ひとりで淋しかったろ? ……ごめんね…マロン… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.07.08 22:23:29
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