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2010年07月30日
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 投資の真髄 ~偉大な投資家の言葉に学ぶ~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
〔 第19号 2006/10/30 〕 663部発行


 こんにちは。阿藤寛です。
 昨日知人にあってある企業のポジショントークをしました。
 話せば話すほど、より魅力的に思えてくるのは不思議ですね。

 
         
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
 【main contents】 グレアムの実質利益
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 企業は毎年利益を公表しますが、会計の自由さから
 実態以上に大きな利益を計上することも可能です。

 そういった粉飾利益に対処するために
 グレアムが提唱するシンプルで強力な方法を紹介します。
 

───────────────────────────────――――

 
 グレアムは企業の実質利益を単純明快に定義する。
 
 支払い配当プラス一株当たり純資産額の増加額、
 すなわち通常は任意準備金を加えた
 利益剰余金の変動で示される数字である。                

         

 (『マネー・マスターズ列伝』 日本経済新聞社刊)

───────────────────────────────――――

 企業の利益は会計上操作しやすいものです。
 特別利益を計上したりすることによって、
 実際には悪い決算の見栄えを良くすることができます。
 
 そういったことを見抜くために分析が必要なわけですが、
 このグレアムの方法を使って簡単にチェックすることができます。


 単純に考えて、純利益は配当に回さない限り、
 純資産に組み入れられるはずです。

 資産を切り崩して利益に見せかけることもできますが、
 それでは当然純資産は減ってしまいます。

 また、企業によっては計上された利益が
 どこかへ消えてしまうこともあります。
 
 このグレアムの実質利益を計算することで、
 株主にとっての実質利益を簡単に計算することができます。
 
 新たに組み入れられる数字が
 簿価でしかないという弱点もありますが、
 計算の簡単さと、分析のヒントになるという点で
 とても役に立つ方法だと思います。


 それでは実際に計算してみましょう。
 紀文フードケミファ(4065)の数字を見てみます。

 まず一株あたりの純資産の増加額を調べます。
 それは、今期の純資産から前期の純資産を
 引くことによって求めることができます。


 紀文フードケミファの場合、
 2006年度の一株あたり純資産は508円、
 2005年度は437円です。

 2006年度の純資産増加額は71円になります。
 そこに2006年度に支払われた一株当たり配当18円を加えます。

 これで2006年度の実質一株利益が求められます。
 実質一株利益は89円だったということです。

 2004~2006年にかけての公表利益と実質利益です。

 年度   公表利益  実質利益
 2004    62.7    64
 2005    88.1    89
 2006    89.6    88

 紀文フードケミファは、
 この3年間実質利益と公表利益に差がなく
 ほとんど一致していることがわかります。

 企業が単純なほど誤差が小さい傾向にあるようです。

 
 株式分割や公募増資など資本移動がありますと
 計算が少し面倒くさくなりますね。

 そして、連結決算で構造が複雑な企業は純利益が
 そのまま純資産に組み入れられるわけではありません。
 また、海外比率が多い企業は
 為替の差益の影響も考慮に入れる必要がありそうです。

 すべての企業の分析に役に立つ
 というわけではないかもしれませんが、
 計算してみるとまた違った視点で
 企業をみることができるかもしれません。


 以下少し調べて遊んでみましたので、
 参考にしてみてください。


★実質利益と公表利益にほとんど差がない企業

・スターバックス(2712)
年度 純資産増加額 配当 実質利益 公表利益 
04    132     0   132    133.1 
05    826     0   826    826.1 
06    1149    100  1249   1251.0


★実質利益と公表利益に少し誤差のある企業

・日本オラクル(4716)
 年度 純資産増加額 配当 実質利益 公表利益 
04    -3    110   107   125
05    -17    125   108   133
06     10    140   150   149.5 


・東京製鐵(5423)
 年度 純資産増加額 配当 実質利益 公表利益
04 86 4 90 80.8
05 325 6 321 326
06 218 20 239 218


★実質利益と公表利益の差に開きがある企業

・NTTドコモ(9437)
 年度 純資産増加額 配当 実質利益 公表利益
05   8221    1500   9721   15771
06   6654    2000   8654   13491


・ソニー(6758)
 年度 純資産増加額 配当 実質利益 公表利益
05 308 25 333 175.9
06 329 25 354 122


 この取り上げた例では、紀文とスタバは、
 実質と公表利益の間にほとんど差がありません。
 日本オラクルは純資産を少し崩しつつ配当をしていたことがわかります。

 ドコモは公表利益、ソニーは実質利益が大きくなってますね。


 この公表利益と実績利益の差を切り口に、
 なぜそうなっているのかを調べることで
 より企業の理解を深めることができそうです。

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【本日の関連文献】
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マネーマスターズ列伝

↑単に読み物としても楽しめる上に、
 投資に役立つアイデアが詰まった名著です。
 作者のジョン・トレインさんも敏腕投資家だそうです。





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最終更新日  2010年07月30日 21時06分09秒
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