【幸せのカケラ~最終話~】
ココまでの話は、コチラ。-------------------「やっと触れた」 信二は、一般病棟に移った沙織の手を握って、深いため息をついた。「よく頑張ったな。もう大丈夫だからな」「信二の顔色の方が悪いよ。病気みたい」 そういうと、沙織は小さく笑った。 細くなった指には、ぶかぶかになったオモチャの指輪がはめられていた。「俺、夜もずっと祈り続けてたんだ。だから、かなり寝不足。沙織が一人で苦しんでるの、見てる事しかできなかったから」「毎日来てくれてありがとうね。もう大丈夫だよ。先生も、正常値だって言ってたし。拒絶反応も起こしてないって言ってたし。まだしばらくは、入院続くけどね」「いいんだ。俺、毎日来るから。沙織の隣で寝てやってもいいぞ」「そんなこと言うと、おじいちゃんに怒られるよ」「そりゃ怖いな。じいちゃん怒るとすげーからな」 二人は笑いあって、もう一度、手を強く握り合った。「指輪、新しいの買わないとな。これじゃ、ぶかぶかだし」「ううん。これが良い。それに、また食べられるようになったら、元に戻るよ。きっと」「そっか。そうだな。今の沙織、抱きしめたら、骨が折れちゃいそうだしな」「少しだけ、抱きしめてくれる?」 沙織は、ベッドに寝たまま、手を広げた。 信二は、体重をかけないように覆いかぶさると、優しく沙織を抱きしめた。 信二の肩が少し震えていた。 沙織のぬくもりを感じる事が出来て、初めて、沙織が生きてる実感を得ることができた。「信二君の泣き虫」「・・・うるさい」 おわり