私の人生論　(思考が運命になる)

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  インダス文明

  　紀元前２５００年頃から１５００年頃まで、　インド西北（現在はその大部分はパキスタンに属する）の　インダス川流域に成立した、都市文明です。　代表的な遺跡が、　下流域（シンド地方）のモヘンジョ＝ダロ、　上流域（パンジャーブ地方）のハラッパーなどで、　彩文土器、金属器、印章などを伴う　高度な都市文明が生まれました。　インダス文明は世界最古の三大文明中，　先行するメソポタミア，エジプト両文明を　はるかにしのぐ規模でした。　その都市文明の特徴は、　①街路が整然と東西南北に並ぶ都市計画。　②家屋は焼煉瓦造りで、　下水・井戸・浴場などの衛生施設を持つ。　③公共的な建造物と思われる　沐浴場（宗教的施設）、学校、公会堂、倉庫などを持つ。　④インダス川を利用した潅漑農業と、　水牛、羊、象などの家畜の使用。　⑤彩文土器を使用する。　⑥青銅器を使用する（鉄器は知られていない）。　⑦印章の出土（印章には象形文字が描かれている）。　⑧シュメール人のメソポタミア文明との共通性がみられる、　などです。

  2020年09月11日

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  十戒

  　ヘブライ人を率いて　「出エジプト」の途上にあったモーセが、　シナイ半島のシナイ山で、　ヤハウェ神から授けられた戒律です。　旧約聖書の『出エジプト記』第２０章にあります。　「十戒」（Ten Commandments）は　以下の１０ヶ条からなります。　１．汝は私の他に、何者をも神としてはならない。　２．汝は自分のために刻んだ像を造ってはならない。　３．汝は、汝の神・主の御名をみだりに唱えてはならない。　４．安息日を覚えて、これを聖とせよ。……　５．汝の父母を敬え。　６．汝殺すなかれ。　７．姦淫をしてはならない。　８．汝盗むなかれ。　９．隣人について偽証してはならない。　10．汝の隣人の家財をむさぼってはならない。　この第１条に一神教の原理、　第２条に偶像崇拝の禁止、　というユダヤ教の特徴が現れています。

  2020年09月10日

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  出エジプト

  　旧約聖書に物語られている、　ヘブライ人（イスラエル人）がモーセに率いられて、　エジプト新王国の支配から逃れて　パレスチナに脱出したこと。　旧約聖書によれば、　パレスチナで牧畜に従事していたユダヤ人　（これは後の名称。自らはイスラエル人と称し、　エジプトではヘブライ人と言われた）が、　飢饉に遭遇し、豊かなエジプトに移動して、　農耕生活を営みました。　しかし新たなエジプトの王（ファラオ）が　イスラエル人の豊かな生活をねたみ、　奴隷として都の造営などに使役することにしました。　ファラオはイスラエル人の反発を恐れ、　男の子を皆殺しにすることを命じましたが、　一人の男の子だけは葦船に乗せられて助けられました。　その子が成長してモーセとなったのです。　モーセに率いられたイスラエル人は　エジプトから脱出しましたが　紅海を前に追いつめられました。　モーセがヤハウェ神に祈ると、　紅海がまっぷたつに割れて道が出来、　イスラエル人は逃れることができ、　エジプト兵があとを追ってその道に踏み込むと、　海はもとどおりになって溺れ死んでしまいました。　エジプトから逃れたイスラエル人は、　シナイ半島のシナイ山で　神からモーセに十戒が授けられました。

  2020年09月09日

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  アクエンアテン

  　アメンホテプ4世　（英: Amenhotep IV、紀元前1362年? - 紀元前1333年?）は、　古代エジプト第18王朝の王（ファラオ）　（在位：紀元前1353年? - 紀元前1336年頃?）です。　彼の行った改革は、アマルナ改革として有名です。　アテン神を崇拝し、　治世5年目（前1367年ごろ）に　アテン信仰の導入を始めましたが、　伝統的な神々への崇拝を禁止しませんでした。　この頃、アテンへ捧げる神殿の他に、　従来の神々へ捧げる神殿も建築しています。　しかし即位5年目に名前を　「アテンに仕える者」を意味するアクエンアテンに改名し、　即位7年目にアテン神へ捧げる　首都アケトアテン（現アマルナ）を建設し　王朝発祥の地テーベを放棄し、　首都を遷都し即位9年目に入ると、　アメンホテプⅣ世は旧来のエジプトの神々を排斥し、　アテンが唯一の神であると宗教改革を推し進めました。　この改革に関しては、　アメン・ラーの力に対抗する　王の試みのひとつであったと考えられます。　アメン（アモン、テーベの町の守護神）を祭る神官勢力が　王を抑えるほどの強い勢力になったことを　アメンホテプ4世が嫌い、　宗教的権力を王権と一本化することを狙ったのです。　彼らの宗教ではアテンのみならず、　伝統的なエジプト宗教と同じく　王たるアメンホテプ4世自身も神であるとされたから　実際には二神教でした

  2020年09月08日

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  海の民

  　紀元前１３世紀末から紀元前１２世紀初頭に掛けて、　東地中海で活動した民族ですが、　その系統や実体は不明で、　さまざまな名称をもつ民族からなる集団であったようです。　原住地は小アジア西海岸とエーゲ海諸島という説が強く、　彼らが移動を開始した理由は不明ですが、　「海の民」は単一の民族ではなく、　複数の異民族によって構成された混成集団で　飢饉が原因で豊かな土地をめざして移住を企てたのです。　その結果ヒッタイト、ミケーネ文明を衰退に追いこみ、　エジプト新王国にも侵入するなど、　西アジアに大きな変動をもたらしました。　東地中海沿岸地域に侵攻し、　破壊・略奪を行ったとされる「海の民」は、　侵入地に定着し、そこで新しい天地を切り拓いていく　という生き方を選ばず、彗星のごとくあらわれて、　去っていく――のこるは破壊の跡だけでした。　バルカン半島からエーゲ海を経由して、アナトリア、　そして最終的には、北アフリカに位置する　エジプトのナイルデルタ地域にまで到達した｡　ヒッタイトやギリシャのエーゲ諸王国を滅ぼすなど　強い力を保持していましたが、エジプトでは敗北しました。　「海の民」は、　実態の把握ができない集団ではありましたが、　歴史上、確かに存在したのです。

  2020年09月07日

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  カデシュの平和条約

  　カデシュの戦いは、前１２８６年頃、　シリア・パレスチナの領有権をめぐり、　エジプト黒人王国のラメセス２世と、　アジアのヒッタイト王ムワタリと　の間で戦われた戦争です。　カデシュは現在のシリア西部の地名で　オロンテス川近くにある交易の要衝でした。　エジプト黒人王国は　早くからシリアに進出していましたが、　小アジア（アナトリア）を本拠とした　ヒッタイト王国が急速に勢力を伸ばしてきたことによって、　両国はシリア・パレスチナの勢力圏をめぐって　争うこととなりました。　一時はヒッタイト軍が優勢でしたが、　ラメセス２世の勇戦によってエジプト軍が態勢を立て直し、　決定的な勝敗は決せず終にわりました。　戦いは、引き分けに終わったのです。　その後、前１２６９年頃には、　エジプトとヒッタイト両国の間で、　平和同盟条約が締結されました。　この条約は現在知られている　世界で最古の国際条約といわれています。

  2020年09月04日

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  ピラミッド建造

  　王の勢力が大きくなるにしたがって、　ピラミッドも大きくなり、　前二七世紀にもっとも大きな三つのピラミッド　（クフ、カフラー、メンカウラー）が建造されました。　なかでももっとも大きなクフ王のピラミッドは、　高さが一四六メートルあり、　平均二トン半の石材を二三〇万個つかっている　と見積られています。　大ピラミッドをつくるのに　一〇万人の労働者が農閑期の三カ月を　二〇年間はたらきました。　その労働者の三分の一が石材をきったり運搬したりし、　もう三分の一は、直接建築にたずさわりました。　そしてのこりの三分の一は　食事の準備や休けい所づくりの雑務をしました。　これだけの人数で　雑務をしなければならないのですから、　いかに多くの人手かがわかるでしょう。

  2020年09月03日

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  強大な王権

  　なぜエジプトではやくから統一国家が完成され、　またその王権が壮大なピラミッドを建造するほどに　強大になったのでしょうか？　それには二つの要因がみられます。　第一に、エジプトでは、　ただ一本のナイル川の両岸で、　幅二〇キロメートルていどの細長い地域にしか、　みどりの地帯がなかったのです。　ナイル川には、　たえず船舶が上下して荷物をはこび、　すべての人が　ナイル川にたよって生活していたので、　利害関係からみても、　一つにまとまるほうが便利だったのです。　第二の要因は、　エジプトが「神王国家」だったということです。　エジプトでは国王が神そのものとされていました。　国王の権威は　いろいろな神の化身として強化されました。　第一に守護神であるタカの化身とされ、　第二に愛の女神ハトホルの化身とされました。　このように、　エジプトの国王は多数の人民を支配し、　また神として尊敬されたので、　多数の人民を動員して、　大ピラミッドを建造することができたのです。　大ピラミッドが建設されたのは、　前二七世紀であり、　一つのピラミッドをつくるのに、　一〇万の人間が動員されています。　ただし、はたらいたのは一年のうち、　収穫からつぎの種まきまでの　農耕をやすんでいる三か月だけです。

  2020年09月02日

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  書記生

  　神官の書記生たちは、　数学は計算や測量調査をするために、　天文学は暦の作成や占星術的な予言をするために、　神学は病気を治し悪霊を退散させるために　というふうに、これらの学問を　かれらの義務課程中で発展させて記録したようです。　かれらは、　化学技術や冶金術や染色法などの知識については、　めったに記録していません。　こういう知識は別な伝統、　すなわち経験を口伝えしていた　職人の伝統に属していたからです。　当時、　聖職者の伝統と手工業者の伝統とのあいだには　溝があったのです。　紀元前1100年ころのエジプトの一文書には、　「どんな重労働もしないようにくれぐれも心がけ、　評判の高い長官になってほしい。　書記生になれば、なんの手仕事もしないですむし、　命令もだせる。　わたしは、かまど口のところで　ワニのような指をして仕事をしている　鋳物師を知っているが、　その男はウジ虫よりも、　もっと鼻もちならない臭いがした。　わたしは、いままでに　役所の委員を命ぜられた鍛冶屋も知らないし、　使節に任命された鋳物師に会ったことはないのだ」　と父が息子に忠告しています。

  2020年09月01日

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  遺体の防腐処理

  　古代エジプトで　遺体の防腐処理をしていた人たちは、　心臓や肺、肝臓、腎臓が　どんな形をしているのかをよく知っていました｡　医学に関するパピルス文書は今も残っており、　古代エジプトの医学と外科手術については　知ることができます。　古代エジプト人は、　病気は宗教的、神秘的な要素と自然の要素が　入り混じってなると考えていました。　治療する者は患者に治療を施しながら、　呪文を唱えていたのでしょう。　とはいえ、古代エジプトの治療法の多くは、　病気を注意深く観察した結果生まれたものです。　怪我や手術のあとの傷口に巻く包帯に塗られた薬は、　傷口を細菌から守り、回復を早める効果がありました。　これは、人類が細菌を知る、実に何千年も前のことです。

  2020年08月31日

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  エジプトの医学２

  　エジプトでも、　神官は重要な役割を果たしていました。　エジプトの支配者であるファラオは神であり、　死後に復活できると考えられていました。　これもピラミッドが建設された理由のひとつです。　ピラミッドは実は巨大な墓石であり、　そのなかでファラオとその親族や要人は　来世での復活を待ったのです。　召使いや犬や猫もともに埋葬され、　家具がしつらえられ、食糧も用意されました。　遺体を保存するため、　防腐処理の方法が考案されました　（来世に到着したときに、身体が腐っていておまけに臭う、　などという事態になっては困るからです）。　防腐処理にあたっては、　まず先にすべての内臓が取り除かれ　（脳は、鉤(かぎ)のように先が曲がった長い棒を　鼻の穴から差し込んで掻き出された）、　内臓は専用の壷に入れられて保存されました。　遺体は化学薬品を使って保存処理されたのち、　亜麻布(あまぬの)にくるまれ、　墓に安置されたのです。

  2020年08月28日

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  エジプトの医学１

  　エジプト人は、　世界を秩序づける過程として、　戦闘とか腕力とかを考えなかった。　かれらの神々は、　強力ではあったが狂暴ではなかった。　国王の支配と自然力の管理とは、　エジプトのほうがメソポタミアよりも手がたかった。　ナイル河は毎年、予言できるほど規則正しく増水した。　エジプトでは、　将来のことが確実で予言できるように思われた｡　メソポタミア人は、　占星術に熱中したからでもあろうか、　天文学の分野ではすぐれていた。　しかし医学の分野では　エジプト人のほうに才能があった。　エジプトの医学文書は　紀元前二〇〇〇年までさかのぼり、　しかも、　紀元前二九八〇年ころのゾセル王の侍医で高官だった　イムホテプの時代の古い資料もふくまれている。　イムホテプは、　伝説によるとエジプト医学の開祖であり、　のちには神の地位を与えられ、　医学の守護神とみなされた人である。

  2020年08月27日

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  人類の転機

  　周囲に存在するものを順次、支配していった人間は、　次にこの自然界を動かしている原理をも支配したい　と考え始めたのです。　誰が太陽を昇らせるのか、　誰が人の生死を定めているのか、　神という言葉も概念も当初はなかったでしょうが、　何者かが自然界のルールをつくっている　と考え始めたようです。　この推論を有力にした理由の一つが、　メソポタミアの古代遺跡から、　女性を象(かたど)ったとしか思われない　土偶が発掘されたことでした。　その用途に、具体的な目的は考えにくく、　それに何か特別な意味を込めていたとか、　拝んでいたという以外には、考えられないのです。　世界最古の神殿と目される　トルコのギョベクリ・テペ遺跡は　約1万2000年前のものです。　この時代に、　人類は間違いなく大きな転機を迎えたのです。　ドメスティケーションを経て人間は、　宗教という概念を考え出したと推論されています｡　古代エジプト人が太陽暦を開発したプロセスも、　時間を支配するという意味で　ドメスティケーションの一形態でした。　しかし、人間が定住生活をし始めた　ドメスティケーションのときに、　人間の脳みそは最後の進化が終わり、　それから今日まで進化していないといわれています。

  2020年08月25日

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  ドメスティケーション

  　ドメスティケーション（domestication）　という言葉には飼育、順応、教化　などの意味があります。　ドメスティケーションは、　今から約1万2000年前に　メソポタミア地方で起きたと推測されています。　ドメスティケーションは、　狩猟採集生活から農耕牧畜生活への転換であったのです。　ヒトが植物を栽培したり、　動物を飼育し家畜化したりするために、　欠かせない条件があります。　それはヒトが定住生活を営むことです。　東アフリカから、より多くの獲物を求めてヒトは、　世界中へ移動して行きました。　ヒトの立場から定住生活を考えてみると、　それは必ずしもいいことばかりではありません。　一か所にずっとみんなで住んでいると、　排泄物の処理だけでもたいへんです。　狭い場所に寄り集まって寝るわけで、　病気が発生したらすぐに全員に感染してしまいます。　そんな生活より、獲物を求めて、　新しい土地へ移動しながら生きるほうが、　ずっと楽ではないでしょうか。　それなのになぜ、ヒトは定住生活を始めたのか。　ヒトの意識が「新しい土地へ移動しながら　獲物を追いかけながら生きる」から、　「自分は動かない。　まわりの土地を支配して生きる」　と変化したからでしょう。　気候の変化が、　移動しても獲物を獲得できなくしたので、　定住せざるをえなかったようです。　こうしてヒトは定住し、　世界を支配し始めました。　植物を支配する農耕に始まり、　動物を支配する牧畜、　さらには金属を支配する冶金(やきん)と、　植物、動物、金属、すべてを　ヒトが支配するようになりました。

  2020年08月24日

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  太陰太陽暦

  　メソポタミアではBC2000年紀には、　すでに太陰太陽暦が使用されていました。　太陽暦の365日に合わせて、　日数を調節してつくられたのが太陰太陽暦　（太陰暦に閏月(うるうづき)を入れて　約11日の短さを補った暦）です。　現代では太陰暦の使用はイスラーム社会だけで、　ほとんどの国が太陽暦を使用しています。　日本は1872（明治5）年に太陽暦へ切り替えるまで、　太陰太陽暦を使用していました。　明けない夜はなく、春はまた巡ってくる。　暦を考え出したことで人間は　円環する時間を管理するようになりました。　けれど、　その円環する時間の中で生きている人間の一生は　回転して再生しないことにも気づきました。　誕生して歩き始め、大人になり、やがて老いて死んでいく。　人間の一生は直線なのです。　青春は戻ってはきません。　自然を司(つかさど)る円環する時間と　人生を支配する直線の時間、　2つの時間があるという概念を知った人間には、　次のような思いが浮かんできたのではないでしょうか。　人生の直線が終わった後はどうなるのか、　どこかに行く世界はあるのだろうかと。　あるいは人生が始まる前は、一体どこにいたのだろうかと。

  2020年08月21日

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  太陰暦

  　実は、　月の満ち欠けは日数を知るのに便利で、　これを利用してつくられた暦が太陰暦です。　歴史的には太陰暦のほうが　早くからメソポタミアで使われていました。　太陰暦で一年を構成すると約364・36日となります。　エジプトで最初に太陽暦がつくられた理由は、　太陰暦だと、　太陽の大回転する日数（約36う・24日）に　11日ほど足らなくなります。　それでは、　農作の恵みをもたらす大氾檻の訪れを、　規則的に把握できないことを知り、　太陽暦を考えついたのです。

  2020年08月20日

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  太陽暦

  　一年という概念に比べれば、　一日の変化の意味は　より理解しやすかったことでしょう。　朝に東から太陽が昇り、　夜になると西に沈み、　また朝になると太陽が昇る。　この一日を小回転と考えれば、　一年は大回転ですが、　一日を何回も何回も繰り返さないと、　一年という大回転にはなりません。　一日と一年の時間差が大きすぎて、　当時のヒトは時の流れを　十分に把握しきれませんでした。　そのときに注目したのが、夜空の月です。　月が見えない夜（新月、朔：ついたち）から始まって、　丸くなる夜（満月）となり、　また細く欠けていく。　こうして月の地球を一回転する周期が、　およそ29回（約29・53日）の夜を　重ねることを学びました。　こうして人は　一日と一月、一年という概念を身につけたのです。

  2020年08月19日

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  ナイルの氾濫

  　人々は、ナイルの氾濫を待ち望みました。　その日がいつ訪れるかを知るためにエジプト人は、　夜空を見つめ、　太陽の動きを観察し続けたのでしょう。　太陽が一番長時間、空に輝く日（夏至）を頂点として、　一番昼間が短い日（冬至）に向かって衰えていく。　それからまた、日射しを伸ばしていく。　そういうサイクルであることを、　古代のエジプト人は学びました。　こうして彼らは、　一年という周期を意識するようになりました。　すなわち地球が太陽を回る周期（約365・24日）を知り、　その知識をもとにして太陽暦をつくつたのです。

  2020年08月18日

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  時間の管理

  　太陽の動きと月の満ち欠け、　そして一日の始まりと終わり。　人間にとって時間との関係は、　まず、　時間をいかに管理するかという問題でした。　その結果として生まれてきたのが暦(こよみ)です。　最古の太陽暦の一つはエジプトで、　ナイル川の氾濫を予知する目的でつくられました。　ナイル川は一定の時期に増水して氾濫し、　そのときに上流から大量の土砂を運んできます。　そして水が引いた後に肥沃な大地を残していきます。　この豊かな大地が　農作物の豊穣をもたらしてくれるのです。　生きるためには　農業がすべてであった時代のことです。　人々は、ナイルの氾濫を待ち望みました。　そして氾濫が訪れる頃には、　日の出直前の空に　おおいぬ座のシリウスが出現することを、　長い歳月をかけて知りました。

  2020年08月17日

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  宇宙の構造

  　古代エジプト人は、　宇宙の構造について次のように考えていました。　世界は長方形の箱のかたちをしており、　その底部の大地はすこしばかり凹んでおり、　頂部の大空は、　大地の四隅にある四つの山の峰に支えられています。　ナイル河は、　大地のまわりを流れている宇宙の河から南方で分岐し、　大地の中央を流れくだっています。　これらの世界は、　原初の混沌とした水から生じたものと考えられ、　神として個性化された　天空・大地・空気、その他の自然物・自然力は、　混沌の男神と女神とが結合してうみだしたもの　とみなされていました。　若い自然界の諸力すなわち神々は、　呪文とか命令をだして宇宙を秩序づける仕事をつづけたのです。　宇宙の河の水平面は、　大空を支えている山の峰々の高さ同じくらいで、　毎日大空を横切って旅をする　太陽神の小舟を運ぶ役目をしています。　小舟はつねに、　宇宙の河の大地の岸辺にできるだけ近よっていたので、　ナイル河の氾濫時には、　冬よりももっと大地に近づくことができたのです。　これは、　太陽の位置の季節的な変化を説明していることになります。

  2020年08月07日

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  エジプトの暦

  　エジプトの天文学についての記録は　のこっていませんが、　碑文や、棺の蓋(ふた)に画かれた天体図から、　エジプト人が大空の赤道地帯の星々を　三六集団に分けていたことがわかります｡　各星団は、　それが夜明け直前に地平線上にのぼるとき、　一〇日周期の集団の一つのはじまりを示しました。　そして一年を、この一〇日周期に分けたのです。　エジプト人は、　一年がほぼ三六五日であることに気づいていたので、　三六のこの一〇日周期に余分の五日をつけ加えました。　こういう発見は、ナイル河の毎年の定期的氾濫　――この氾濫とともにエジプトの新年がはじまる――　と食いちがってゆく日数を、　数年間にわたって平均してなされたのかもしれません。　紀元前二七〇〇年ころ、エジプト人はその暦を、　ナイル河の氾濫時の日出の直前にのぼるソティス星、　つまり今日のシリウス星の出現によって調節しました。

  2020年08月06日

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  エジプトの科学

  　特に〝科学的″と言えた分野は、　計算、天文学、医学の三つです。　まず、十分な作物を植えるにも、　品物を売り買いするにも、　ピラミッドの建設に必要な作業員や兵士を　過不足なくそろえるのにも、　「いくつ、あるいは何人必要なのか」　がわからなければならないので、　計算が発達しました。　次に天体の位置を注意深く記録することが　暦づくりの基礎になるため、　天文学もさかんになります。　太陽や月、恒星は日や月や季節に　密接な関係があるからです。　病気や怪我には当然、介護が要るので、　医学も必要になります。　しかしどの場合にも、科学といっても　呪術、宗教、技術とが渾然一体となっており、　バビロニアやエジプトなどの　中東の古代文明の人々が何をしたのか、　なぜそれをおこなったのかについては、　想像力を働かせるしかありません。

  2020年08月05日

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  アマルナ文書

  　１８８７年、　エジプトのナイル川中流域の　テル＝エル＝アマルナで、　地元民が古代の近東の国際公用語である　アッカド語で記されている楔形文字の刻まれた　多数の粘土板を発見しました。　アマルナ文書には、　エジプト第18王朝のファラオであった　イムホテプ4世　（在位：紀元前1353年～紀元前1336年）の　外交政策と国際関係を示した、　バビロニア、アッシリア、ヒッタイト、ミタンニ　その他の諸国の王からの書簡が含まれていました。　それによると、王たちは互いに「兄弟」と呼び合い、　オリエント諸国からは　戦車や馬、ラピス・ラズリ、銅などが贈られ、　エジプトからは黄金が贈られていました。　またエジプトはミタンニやバビロニアの　王室間の国際結婚を行いっていました。　書簡には、シリア・パレスチナや　地中海東岸の都市国家からエジプト王に対し　「我が王、我が神、我が太陽である王へ・・・」　などの文面が見え、　エジプトへの隷属を示してしていたのです。

  2020年08月04日

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  古王国

  　エジプトで生まれた初の統一王朝が　「エジプト古王国　（古代エジプト王国は、　第1王朝から第32王朝　（プトレマイオス王朝）まで数えられますが、　特に第3から第6までを「古王国」といいます。）」　と呼ばれ、　その第四王朝のころには　シリア・パレスチナに遠征するまでになります。　ちょうどアッカド帝国が　メソポタミアで覇を唱えていたのと同じころです。　毎年のナイル川の氾濫を　正確に予測する必要から天文観測が行われ、　太陽暦が作られました。　太陽とシリウス星が同時に昇る頃、　ナイル川は氾濫したのです。　氾濫が収まった後に農地を元通り配分するため、　測量術、幾何学、天文学が発達しました。　ヒエログリフから派生したワディ・エル・ホル文字と　原シナイ文字（原カナン文字）は　世界の殆どのアルファベットの起源となります。　こうした文明の"光"はほどなく周辺地域を照らしだします。　それこそが、　オリエントから見て東隣のインドに生まれたインダス文明と、　西隣の東地中海域に生まれたエーゲ文明です。

  2020年08月03日

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  領土国家

  　エジプトもまたシュメールと同じころ、　同じように青銅器・文字・暦を土台として　文明度を高めていました。　ただ、土地柄の違いにより、　シュメール文明とは違いもあります。　まず、　メソポタミアの“開放地形”と違って‟封鎖地形”で、　西に砂漠・南に森林・東に紅海・北に地中海という　自然要害に護(まも)られており、　異民族の侵入は難しく、長期政権が栄えます。　したがって、エジプトにはメソポタミアのような　「濠(ほり)や城壁に囲まれた　典型的な都市国家」は発達せず、　エジプト特有の都市国家　「ノモス（古代中国の「邑」に相当する行政単位）」　が生まれました。　これが初めは東部・西部・南部に分かれて争覇し、　やがて地方を越えて大統一（地区統一）に向かつたのは　メソポタミアと同じです。　エジプトでは、　前三一〇〇年ごろから多数の都市国家があつまった結果、　前二九〇〇年までに、　はやくもナイル川流域を統一する領土国家が出現しています。　そのために、エジプト文明は、　メソポタミア文明とはちがった意味で注目されています。

  2020年07月31日

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  エジプト文明

  　エジプト文明は、　ナイル川の定期的氾濫によって　肥沃な土地という恵みを受けて形成された文明です。　ナイル川下流の大三角州地帯の古代エジプト人が、　メソポタミア文明の影響をうけて　前５０００年頃から潅漑農業による農耕文明に入り、　ノモスという小国家の分立を経て、　前３０００年紀頃にノモスを統一して　エジプト古王国を成立させました。　古王国の時代に青銅器の使用、　文字（ヒエログリフ）、ピラミッドなどの　特徴のあるエジプト文明が繁栄しました。　人類史上突出した文化を生みだした　古代エジプト王国とその黒人文明は、　「アマルナ文書」「カデシュの戦い」そして「海の民」、　「アクエンアテン（イクナートン）の宗教改革」や　「モーセの出エジプト」など　人類の歴史の流れの中に足跡を残しています｡

  2020年07月30日

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  メソポタミアの占星術

  　メソポタミアの天地創造神話の後段には、　若い神々が腕力で混沌の年老いた神々と闘いつつ、　自然を手なずける話があります。　こういう天地創造の神話は、　古代文明の創造についての　吟唱詩人的な追憶だったのでしょう。　第一に原始部族社会における干拓工事です。　この社会では出産力が一番大切でした。　ついで、この工事は　いっそう綿密な組織をもって継続されますが、　組織の管理者は、命令で支配した神官たちでした。　最後に、メソポタミアでは、　都市の統治者または武人王があらわれますが、　かれらは、　都市が領土獲得の争いをしていた時期にあたって、　武力で統治したのです。　チグリス・ユーフラテス河の氾濫は不定であり、　喜ばれるよりもむしろ怖れられました。　氾濫は、混沌の再来です。　メソポタミアの王朝も変りやすく、　その支配はあやふやで気まぐれでした。　メソポタミアでは、　将来のことはあまりはっきりしなかったから、　なりゆきを見きわめるためには、　占星術をやったり、　いけにえの肝臓をしらべたりするような、　神秘な占い法を求めたのです。

  2020年07月29日

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  メソポタミアの宇宙観

  　メソポタミアの住民は、ギリシャ時代まで、　天文観測の説明に幾何学的方法を用いませんでした。　そのため、　宇宙の空間的様相に関するかれらの宇宙観は、　かれらの科学とは切り離されたままでした。　最初メソポタミア人は、　天地は水に支えられた平らな二つの円盤だとみなしたが、　のちには天空は、　平らな円盤の大地をとりまく水の上にのっている　半球状の円天井だと考えたのです。　円天井の上にはさらに水があり、　その水の上には神々の住居があり、　太陽やその他の天体はこれらの神々であって、　それらが毎日、住居からあらわれて　固定した円天井の上の一定の軌道をたどってゆく　とかんがえました。　神々は、地上の出来事を監督しており、　したがって天体の運行は、　神々が地上の人間に割りあてるべき　運命を指示するものだとされました。

  2020年07月28日

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  天文観測

  　メソポタミアでおこなわれた天文観測で　もっとも精密な観測は、　惑星運動に関するものです。　早くも紀元前二〇〇〇年には、　金星が八年間に五回、　おなじ位置に復帰することが注目されました。　紀元前1000年ころからは、　観測は比較的精密になり、　紀元前七〇〇年からは、　そういう観測が組織的に記録されました。　さらにかれらは、惑星の回転周期のような、　天空の主要な周期的現象の　正しい平均値を計算することができ、　また、天文事象について　すぐれた予言をすることもできました。　たとえば、　日食が一八年目ごとにおこるという、　いわゆるサロス周期を見つけています。　さらに紀元前四世紀には、　天体の複雑な周期的現象を、　多くの単純な周期的現象に効果に分析する　代数学的方法を発展させました。　たとえば、かれらは、　太陰月が平均して二九日四分の一であることや、　この平均からのズレも規則的であり　周期的であることを見出しました。　この方法は、　ギリシャ人によって幾何学的形式に整えられたとき、　天体運動を分析する主要な方法として　近代にいたるまで役立ったのです。

  2020年07月27日

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  暦をつくる

  　バビロニア人は、　占星術を信仰していこともあり、　綿密な天体観測者になり、　数多くの天文記録をのこしています。　かれらは、公定の一年というものをもたず、　太陰月に基づいて測定し、その暦を、　季節的な農業上の祝祭と一致させるために、　ときどき余分の月をつけ加えました。　紀元前二〇〇〇年ころ、　かれらの一年は三六〇日であり、　それを三〇日からなる一二ヵ月に分けました。　バビロニア人は月のほかに、　もう一つの時間単位として　太陽・太陰・五惑星の名を曜日とした週を考えました。　一週間の起源については、　七曜（肉眼で見える大きな星、　太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星）　に由来します｡　一週間はメソポタミアが起源です。　また、一日を一二の二時間分に分け、　一時間を六○分、一分かを六○秒に分けたのも、　かれらです。　さらに、かれらは星座に今日使っている名を与え、　それらを一二カ月にあてはめて一二の集団に分け、　太陽の通過する帯、すなわち黄道帯上に図示したのです。

  2020年07月22日

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  バビロニアの代数

  　バビロニア人は、幾何学の分野では、　半円に内接する三角形は　すべて直角三角形であるごとに気づいていたし、　また直角三角形に関する　いわゆるピュタゴラスの定理は、　特殊な場合だけでなく、　あらゆる一般的な場合にわたって　成立することを知っていました。　バビロニア人の幾何学は、　かれらの算術と同様に、　代数学的な性格をおびていて、　つねに特殊例題の形式で示されていました。　その方法からみると、　バビロニア人は　いくつかの一般的な代数法則を　知っていたことがわかりますが、　分数とともに、さらに割り算が、　被除数に除数の逆数をかけることによって　おこなわれました。　この目的で逆算表が作成されたが、　1＼7のようなあつかいにくい数の場所は、　空白にされたままでした。　平方数や平方根や立方根の表も作成され、　二次方程式や三次方程式をふくむ　問題の解法に使われました。　しかしかれらは、　方程式の係数に　ただ特定の数値をあてはめただけで　数学問題を公式化していました。

  2020年07月21日

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  ハンムラビ法典

  　紀元前1792年から1750年にバビロニアを統治した　ハンムラビ（ハムラビ）王が発布した法典です。　ハンムラビ法典はあとになって石柱に書き写され、　バビロンのマルドゥク神殿に置かれました。　アッカド語が使用され、楔形文字で記されており、　材質は玄武岩で高さは2ｍ25cm、　周囲は上部が1ｍ65cm、下部が1ｍ90cm、　発見当時は大きく３つに破損していました。　「目には目を、歯には歯を」という文が有名で、　‟復薯法”として説明されていますが、　実際には「目を潰された被害者は、　加害者から謝罪されようが、お金をもらおうが、　加害者が牢にぶち込まれようが二度と視力は恢復しません。　その罪を償わせるには加害者の目を潰すより他ない。」　という"同害贖罪法"と呼ぶべきもので、　けっして「目を潰されたら復讐として目を潰し返せ！」　と言っているのではありません。　バビロン第一王朝は、　こうした法整備が功を奏してハンムラビ王の御世(みよ)には　絶頂期に達しましたが、　それも長くは続くことはありませんでした。　やはりメソポタミアに生まれた王朝の宿命でしょう。

  2020年07月20日

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  バビロン第一王朝

  　アーリア人は、　アナトリア半島に入植してヒッタイト王国を、　シリア地方に侵入してミタンニ王国を建設しましたが、　これによりシリア地方の先住民だったアムル人たちが　故地を追われて流民化していきます。　アムル人は四方に散らばっていきましたが、　特に東方のバビロニアに多く逃れ、　その地にあった「ウル第三王朝」を亡ぼして　自分たちの国を造ってしまいます。　それこそ、かの有名な「バビロン第一王朝」です。　しかし、"開放地形”のメソポタミアに　秩序を恢復させるのは容易ならざる事です。　そこで、第6代ハンムラビ王は　法整備を徹底させることで秩序の恢復に尽力します。　それが「ハンムラビ法典」です。

  2020年07月17日

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  領域国家

  　メソポタミアの　チグリスとユーフラテス両河川の流域に　多数の都市ができると、　このような（能率のよい）社会生活の方法が、　周辺にひろまっていきました。　そして、　都市文明がまっさきに伝わっていったのは、　メソポタミアからかなり近い、　エジプトのナイル川流域でした。　前三二〇〇年ごろから、　ナイル川流域にも　多くの都市国家が形成されていなした。　エジプトに似て、メソポタミアでも、　都市国家のあいだにたえず戦争がおこりました。　他人を支配して利益を得たいのは、　人間の共通の欲望です。　都市国家のあいだにたえず戦争がおこると、　やがて一つの都市が周辺の数個の都市を支配する例が、　しばしばみられました。　そして長年ののちには、ついに一つの中心的な都市が、　一つのまとまった領土を支配するようになります。　すなわち、統一的な〝国″が形成されていくのです。　ところが、統一国家　（ある範囲の領土を支配するので「領域国家」ともよばれる）は、　文明開化のもっともはやかったメソポタミアよりも、　むしろエジプトのほうにはやく成立しています。

  2020年07月16日

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  アッカド帝国

  　メソポタミア最初の古代帝国で、　アッカド市を中心としており、　その周辺地域は聖書においてもまた　アッカドと呼ばれていました。　アッカド語とシュメール語の話者が、　この国の下に統一されました。　こうして生まれた都市国家は、　初めシュメール地方・アッカド地方・アッシリア地方　それぞれの地方の中で争覇が行われていましたが、　やがて前2500年以降になると、　それぞれの地方を乗り越えて　覇権争いが起こるようになります。　こうして前2334年、ついに覇権闘争を勝ち抜いて、　全メソポタミア地方を統一したばかりか、　シリア・イラン高原にまで遠征する　大統一（地区統一）王朝が生まれました。　これがアッカド帝国です。　しかし、メソポタミアは　所謂(いわゆる)“開放地形”と呼ばれ、　四方から異民族が　侵掠(しんりやく)しやすい地形であつたため、　この地方に生まれた国は、　めまぐるしく王朝交代を繰り返す　歴史を歩むことになります。

  2020年07月15日

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  文化と政治権力

  　古代国家は租税を搾り取り、　平和を維持することには関心を持ちますが、　それ以外には関心を持ちません。　古代国家は、従属する共同体間の　横のコミュニケーションを推進することには　関心を持たないのです。　古代の社会は、　読み書き能力を普遍的なものとし、　広範な住民大衆を高文化に組み入れる手段も、　知識層の理想を実現する手段も　持ち合わせてはいないのです。　知識階層がせいぜい達成できることは、　彼らの理想が　正当ではあるが実践不可能な規範として　修得されることを保証することだけです。　その規範は尊重され、崇拝され、　宗教的熱狂の周期的爆発に際しては、　切望されるでしょう。　しかし、所詮それは平時には、　遵守されるよりも破られることによって　尊重されるような規範なのです。　おそらく、農耕・識字社会に関する　中心的かつ最も重要な事実は、　文化と政治権力という二つの潜在的なパートナーが、　社会におけるほとんどすべてのことに対して、　いずれの側も相手に対して　好意を抱くことはないということです。

  2020年07月14日

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  農耕と集権化

  　二つの決定的かつ特異な分業形態　――政治権力の集権化と文化・認識の集権化――は、　農耕・識字政治体の典型的な社会構造にとって　特別な意味を持ちます。　少数者が支配階級を形成し、　圧倒的多数者である直接農耕従事者、　つまり農民から厳格に分離されています。　支配階級は、戦士、祭司、聖職者、行政官、都市市民です。　士・商・工・農の階級制度の萌芽です。　重要なことは、彼らは、　文化的同質性よりも差異の方を重視します。　つまり彼らは、　諸階級の不平等性と支配階級の隔たりの程度とを　控えめに見せるよりも、むしろ誇張します。　ありとあらゆる仕方で　様々な支配階級が差異化されればされるほど、　諸階級間の軋轢と曖昧さは少なくなります。　システム全体が　文化的裂け目の水平的な分割線を好むのです。　そのような分割線がない場合には、　システムがそれらを発明し、補強します。　遺伝的・文化的差異は、　実際には機能に応じて差異化されて　諸階級となったにすぎないものに起因し、　後に差異が強固となり、　権威と永続性とを付与されたのです。

  2020年07月13日

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  王政

  　メソポタミア南部は　チグリス・ユーフラテス両河から運ばれてくる　沃土(よくど)に恵まれ、　その先陣を切るのにふさわしい土地柄。　とはいえ、利点と欠点は表裏一体。　この両河は、平時シュメールの人々に沃土をもたらし、　富と繁栄をもたらしますが、　ひとたび機嫌を損ねれば　たちまち大きな氾濫(はんらん)となって　田畑も家屋敷も人命もすべてを奪う　"双子の暴れ龍”となって暴れ狂います。　このころの洪水伝説が後世に語り継がれ、　のちに『旧約聖書』に取り込まれて　「ノアの洪水伝説」となりました。　シュメール人の都市国家は　初め「民会(ウンキン)」によって運営された　民主的なものでしたが、　たびたび起こる大洪水から復興するためには　‘‘強力な指導者"がいた方が　運営上都合が良かったこともあって、　やがて王制へと移行していきました。　伝説に拠れば、　洪水後に最初に王制となったのがキシュで、　その後、ウルク・ウル・ラガシュなど　ぞくぞくと都市国家が建設され、　"肥沃なる三日月地帯"に移住してきていた　セム系民族たちにも　都市国家建設が拡がっていきます。

  2020年07月10日

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  都市生活

  　まず、都市生活のために、　市長にあたる指導者や、　統治機構（政府）が必要になります。　また、だれかがかってなことをすると、　みなのめいわくになるので、　あるていど住民の生活を規制するために　法律も必要になります。　政府と法律は、　都市時代になってから重要になったのです。　つぎに、　都市時代にはいってからのもうひとつの特徴は　「分業」にあります。　食糧生産の進歩により、　農業に従事しなくとも生活のできる人がしだいにふえ、　このような人びとが、　さまざまな新しい仕事をするようになったのです。　たとえば、　神殿をたてる建築師、　金属の道具をつくる鍛冶屋、　都市をまもる兵隊、　あるいは都市に必要な物資を外部からもってくる　商人などがあらわれ、　活躍しはじめました。

  2020年07月09日

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  三内丸山遺跡

  　この遺跡は　今から約5500年前位から人々が生活を始め、　約1500年の間続いた一大縄文都市の跡です。　出土する遺物からは、　食料とする動物が大型からイノシシ・ウサギなどの　中型、小型の動物に変わってきた事、　針葉樹に変わってブナ・ナラなどの　広葉樹林が広がってきた事、　石器が「打製」から「磨製」へ変わってきた事、　クジラ・マグロなどの大型海洋動物を食べた事から、　集団による共同作業での狩りが定着していた事　などが窺われます。　そして、高度な技術に基づく大型建造物の存在と、　計画された集団生活の定着化が見られます。　縄文時代の三内丸山遺跡は、　幾つかの竪穴式住宅と大型竪穴式住居、　高床式倉庫などを持ち、　子供の墓地・大人の墓地、ゴミ捨て場などもある　都市だったのです。

  2020年07月08日

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  都市のはじまり

  　紀元前四〇〇〇年ごろ、　チグリス・ユーフラテス両河川の流域には　（中流や下流にも）、　すでに百人から数百人の人口をもつ　多数の集落がつくられていました。　もともと両河川の流域には沼地が多く、　ジャングルがしげっていました。　さらに野獣やトカゲなど、　いろいろな動物もすんでいました。　人びとは、まずジャングルをきりひらいて、　耕地にかえるとともに、　危害をくわえる動物を追いはらわなければなりませんでした。　また、河川の水を有効に利用するために、　濯漑網をつくることが必要でした。　そのうえ、洪水から作物をまもるためには、　堤防もきづかねばなりません。　そこで、河川の流域に数千人の人びとがあつまって、　いっしょに仕事をするようになったのです。　これが「都市」のはじまりです。　ただし、都市とはいっても、　わたしたちが現在住んでいる都市とは、　かなり意味がちがいます。　当時、居住民の半数以上は、まだ農業に従事し、　昼間は都市のそとではたらいていました。　それでも　多くの人びとが一か所にあつまって居住するようになると、　社会生活に大きな変化が生まれてきました。

  2020年07月07日

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  人間関係の宗教

  　日本人は儀礼をひじょうに尊重します。　儀礼はそれぞれの宗教において、　自らの信仰を表現するために定式化された　行動のしかたをいいます。　初詣も儀礼の一種ですが、　葬儀、法事など、死者に関する儀礼も　われわれが守っているもので、　儀礼を宗教の三要素（「教義」と「教団」と「戒律」）に　さらに加えてもよいでしょう。　教義、教団、戒律をあまりかえりみず、　儀礼のみを行うので、　日本人の宗教は形式的と非難されますが、　では、なぜ儀礼に執着するのでしょうか。　それは、むしろ、　人間関係を重視する傾向のあらわれです。　ヨーロッパの宗教改革以来、　信仰は個人のものであるという考え方が　大きく支配してきました。　それを基準として、　日本人の宗教は本ものではないと非難することは、　正しくありません。　人間関係に立脚する宗教もまた存在するからです。　一方、　個人にとってかけがえのない宗教と考えているものを、　日本人一般の宗教の考え方から、　誤解することのないようにも注意しなければいけません。

  2020年07月06日

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  呪術の原理

  　呪術の原理には、　二つの法則が働いていますが、　いずれも、　原因と結果を間違って推理したもの　とフレーザーは見ています。　「一つは、類似は類似を生むという原理、　第二は、かつてたがいに接触していたものは、　物理的な接触のやんだあとまでも、　なお、相互作用が続いていると考える原理」で、　前者は類似の法則、　後者は感染の法則と名づけています。　類似の法則にもとづいて行われる呪術を、　類感呪術（homeopathic magic）、　接触または感染の法則にもとづく呪術を、　感染呪術（contagious magic）といっています。　類感呪術は、敵に危害を加えようとするとき、　敵をかたどった像を作り　その像を刺したり焼いたりすると、　相手が傷つくという呪の方法で、　感染呪術は、敵の髪、歯、衣服の一部など、　敵の一部であったものを手に入れ、　それを害することによって、　相手が損害を受けるという呪です。　病気の治療にも、　こうした呪術がとり入れられているのです。

  2020年07月03日

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  呪術－まじない－

  　病気は人間にとっての大きな苦痛で、　宗教は、　人間の苦痛をいやすことを目標としていますから、　古代から現代にいたるまで、　宗教と病気とのかかわりには、　深いものがあります。　釈迦が四つの真理（四諦：したい：　仏教が説く4種の基本的な真理。　苦諦、集諦、滅諦、道諦のこと）　の中のまず第一にとりあげたのは　「人生は苦である」という認識です。　苦を四つに分類して四苦とよびました。　四苦とは、生老病死の四つで、　これに、　愛する人々と別れなければならない苦、　憎んでいる人々と会わねばならない苦、　求めても得られない苦、　感覚・官能がはげしい苦、　の四つを加えて、　八苦とします。　この基本的な苦の中に、　「病気」が入っています。　キリストの言行を記した　『新約聖書』の「福音書」の中には、　病人を治療した奇跡の物語が多く含まれています。　また、　人々を宗教に入信させる具体的な動機として、　貧・病・争の三つをあげることもあります。　ここでも、経済的な不安、　人間関係の中の争いと並んで、　病気があげられています。　医学の発達した文明社会においても、　医術によらないで病気がなおると唱える宗教は、　あとをたちません。　ときに、病気なおしの宗教と、　やや軽視したいい方をされることもありますが、　批判された側の、　病気もなおせなくて何が宗教か、　といういい方にも、一理あります。

  2020年07月02日

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  社会とはなにか

  　社会とは、複数の人の集まり（群衆）です。　それ以上でもそれ以下でもありません。　複数の人が集まると、複数の思いが発生します。　その思いが目的ごとに枠組みをもつと　国家とか、経済とか、学校とか、家とか呼ばれる　言葉を与えられた制度（システム）になります。　古代から現代まで国民を幸福に保ち、　繁栄と呼ぶ状態にするには、　万人に雇用される機会を与えることです。　国家の第一の任は、　できる限り多種多様な製造業、工芸、手工芸など　人間の思いつく限りのものを奨励することです。　第二の任は、　農業と漁業をあらゆる方面で奨励し、　人類だけでなく地球全体が頑張るよう強制することです。　国の偉大さと幸福は、　豪奢を規制し倹約を進めるようなつ　まらない規制からくるのではなく、　この方針から期待されるものです。　というのも、　あらゆる社会の喜びは常に大地の果実と　人々の労働の成果にかかっているのです。　この両者が結びつけば、　それはブラジルの黄金やポトシの銀にもまさる、　もっと確実でもっと尽きせぬ、本物の宝なのです。

  2020年07月01日

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  宗教の定義

  　常識的に創唱宗教といっているものを、　要素で説明してみましょう。　それは「教義」と「教団」と「戒律」です。　教義は、信仰の対象と内容を公式に規定するものです。　信条といってもよいでしょう。　大部分の宗教は、人間の目には見えない存在　――超自然的とか超越的とかいう――　を信仰の対象と認め、　それと人間とのかかわりを、　どう信じればよいか定めています。　教団とか教会とよばれるのは、　教義、信条を同じくする人々による、　信仰のための組織団体です。　何々教とか何々宗、何々派、何々教会　というような名称をもちます。　神職、僧侶、牧師、神父、教師など　それぞれのいい方のある宗教の専門家がいて、　俗人の信者を指導する関係が成り立っているのです。　戒律は、信者である者が、自分の信仰を表す証明として、　「……するな」という禁制を守ることです。　ユダヤ教における、モーセの「十戒」であり、　仏教もまた、俗人の信者であっても、　最低限に守らなければならない「五戒」があります。　「……せよ」という形をとることもありますが、　破ってはならぬ戒律のほうが、　信者の意識を強く規制します。

  2020年06月30日

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  3つの宗教

  　現代社会に影響を与えている宗教は、　3つに大別できます。　セム的一神教、インドの宗教そして東アジアの宗教です。　インド生まれの宗教の代表的なものは　ヒンドゥー教や仏教で、　東アジアの宗教としては儒教や道教、　そして日本の神道などがあります。　中国で完成した禅や浄土教は、　必ずしもインド仏教とはいいがたい側面もあり、　区別が難しい宗教です。　この3つに大別された宗教以外に、　今も生き残って世界の人々に　大きな影響を与えている宗教はありません。　なお、　セム的一神教の3つの宗教　（ユダヤ教、キリスト教、イスラム教）　を合わせた信者の数は、　21世紀の今日、世界で50パーセントを超えています。

  2020年06月29日

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  天変占星術

  　天変占星術は、　バビロニアや支那のような　東洋的専制主義の政治体制の下で、　君主の利害を予測するために発生しました。　君主の利害は天下国家に関することなので、　これを一名〝政治占星術″ともいいます。　天変は神のお告げです。　そこで君主はことあるごとに神官や占星術師に相談し、　その意見に従って政治的決断を下します。　つまり占星術師は最高政治顧問です。　君主は彼らにたえず天変の観測をさせ、　天変が生じれば、過去の記録に照らして、　その地上への影響を解釈させ、　君主に報告させます。　天変と地上の事件の間には、　必然的・決定論的な因果律が働いているのではなく、　事前にいちはやく天変の示す予兆を察知して、　起こるべき地上の事変に備えれば、　悲劇を避けることが可能だと考えていたのです。　今日の天気予報と同じような原理です。　そして天変の報告を受けた君主は、　謹慎したり呪術師をやとってお払いをさせたりして、　災厄から逃れようとしたのです。

  2020年06月26日

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  天文学

  　将来を予測したいという欲求は、誰にでもあります。　そこで占いは古くから発生していました。　しかし、　星、天体で将来を占う占星術が成り立つためには、　天体への関心が前提となります。　今日、　まとまった形の占星術が存在したことが　文献上確かめられるのは、　古代．バビロニア（前七世紀頃）と　中国（前四世紀頃）においてです。　真っ昼間に、　あれよあれよという間に太陽がむしばまれて　黒くなる日食を見て、　古代人はびっくりしたに違いありません。　その驚きがいい伝えになり、　文字を持っている民族ならばそれを記録しました。　そのときたまたま外敵が攻めてきたとします。　天災と人災の区別がはっきりしていない当時には、　誰しも日食が外敵の侵攻を起こさせたと考えました。　そこで、　この次に日食が起こったら　また外敵が攻めてくるのではないか、と心配します。　このようにして、　日・月食、慧星・流星・新星の出現などの天変の記録と、　外敵の侵入、天子の死、叛乱、洪水、ひでり、飢饉などの　地上の大事件の記録が　子に孫に何代にもわたって累積されてゆきました。　そして、　天上と地上の事件の間に何らかの相関関係があるものとし、　その間の経験的法則を見つけようという学問が成立しました。　これが天変占星術です。

  2020年06月25日

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  定住と宗教

  　食料の確保にあくせくしているヒトは　世界と自分が同時に存在することの矛盾について、　気づきません。　気づかなければ、　この矛盾は合理性の瑕疵　あるいは生活上の支障としては表れません。　しかし定住生活で人生に余裕ができると、　この瑕疵が苦痛を引き起こします。　人生のあるときに、　周りのヒトと通じない気持ちになるときです。　世界をともに感じとる仲間がいないとき、　ヒトとの接触がまったくなくなるとき、　きわまりない孤独を感じるときがそうです。　逆に言えば、　孤独に伴う苦痛は　人生のこの瑕疵からくるといえます。　だれでも、　自分が死ぬときを考えると孤独感に悩むでしょう。　自分だけ難病にかかってしまったとき、　あるいは年をとって子供が出ていき、　同年代の配偶者も友人も皆死んでしまったとき、　離婚や死別によって配偶者や家族を失い　一人だけで生きなければならないとき、　あるいは仲間から落ちこぼれるとき、　故郷を遠く離れ帰ることができないとき、　人はさびしくてたまらなくなります。　仲間とともに暮らし続けることができる人々が　経験しなくてすむような孤独感が問題です。　ヒトはきわめて強い孤独感を感じない限り、　客観的現実世界と自分の存在矛盾に　疑念を持たずに生きていけます。　現実世界と自分との関係に関する疑念は、　深い孤独感に落ち込んだ人だけが感じる謎で、　宗教や哲学が出家や隠遁や瞑想を奨励していることも、　孤独な環境を故意に作ることによって、　存在の謎を顕在化し神秘化することが　宗教や哲学の使命であると思われます。

  2020年06月24日

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