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1月1日から中国の"新労働法"が施行されました。
これまでも「中華人民共和国労働法」はありましたが、その中の労働契約規定を改定させて独立した法律にしたものが、「中華人民共和国労働契約法」で、一般には"新労働法"と呼ばれています。 主な改正ポイントを大雑把に挙げますと: (1)~(4)は、日系企業をはじめとする外資系企業の多くが、「そんなこと言われなくても既にやっているよ」という感じの内容です。 労働者とは労働契約を結ぶでしょうし、1年契約の社員となら試用期間は1ヶ月と定めるでしょう。就業規則を、労働組合と詰めるかどうか別として、政府系の労務コンサルタントなどとは相談しているでしょう。会社都合で解雇する場合は、少なくとも勤続年数×1か月分の補償はしているでしょうし、"弱腰の"日本企業ならもっと支払っているはずです。 ただ、労働者と終身雇用契約或いは1年以上の長期雇用契約を結んでいた企業は少なかったのではないでしょうか? 既に対応していたことが多かったとは言え、日系企業の多くはこの"新労働法"施行に向けて、就業規則の見直しや"古株社員"への対応など、労務対策の準備を進めてきたに違いありません。 少なくとも上場しているような日本企業はコンプライアンスが口癖になっていますから、"抜かりの無いように"頑張っているはずです。 特に若手のホワイトカラーの間では、転職によるステップ・アップが当たり前の中国では、ひとつの会社に長期間(3年とか5年とか)勤めている労働者は多くありません。よほど会社にロイヤルティを持つ"スグレモノ"か、転職先の見つからないような"使えないクン"である場合が多いでしょう。 ですから、「長年勤めている社員は終身雇用になる」という(5)のところが、この"新労働法"の肝だと感じていた企業も多かったはずです。 さすがに、アメリカ系の企業は対応がドライでしたね。 ウォルマートやP&Gなどは、"新労働法"により終身雇用の対象になってしまう"古株"のうち、いわゆる"使えないクン"を大量に解雇してしまいました。もちろん、"新労働法"施行前にです。 中国系でも、政府のお膝元でいろいろと気遣いしている北京の清華大学付属の保育園の"古株"先生が終身雇用を目前に解雇された、ようなニュースが話題になっていました。 ただ中国のローカル企業がすべてこの"新労働法"を守るか、と言うと、そんなことはあり得ません。この法律によって保護されるのは、中国の全労働者のせいぜい10%くらいなのでは無いでしょうか。 農村部からの出稼ぎ労働力で成り立っている沿岸部の工場などがこの法律を守ったら、きっと一瞬にして中国は"世界の工場"の座を他の国に明け渡すことになってしまいます。中国の立場を悪くするような決まりを、当局が守りなさいとは言わないでしょう。 ホワイトカラー系だってそうです。 いまをときめく"ネット系"企業であっても、"新労働法"を完璧に遵守するのはごく少数派でしょう。NASDAQに上場しているような著名ネット企業で"働く"社員であっても、労働契約すら結んでいない場合だってあります。労働契約があっても、法律に準拠した社会保険制度を完備していないところだって多いです。 上場企業ならばコンプライアンスが問われるだろうと思うでしょうが、上場しているのはたいてい海外の持ち株会社ですから、子会社、関連会社、孫会社の網の目を広げていけば、"足がつかない"ようになるのです。 さて、労働者が訴えたらどうなるでしょう。 その前に、訴えるような社員は要らない、と言われます。中国では優秀な人材が有り余っています。過酷な労働条件にも泣き寝入りして、働き続けなければならない人材がたくさんいるのです。 もし、日系や外資企業が同じようなことをしたら、どうなるでしょう....。 きっと労働者が訴えるでしょう。訴えると当局も見過ごすことはしないでしょう。きっと、労働仲裁委員会あたりに引きずり出されて、法外な賠償を求められることになるでしょう。 同じような脱法行為が発覚して、賠償を問われる確率は、外資系企業のほうが中国企業の10,000倍くらい高いはずです。だから日系や欧米企業は、"新労働法"を遵守するほうに対応する必要があるのです。 "新労働法"は外資と中国国内企業との労働コストの格差をさらに広げるでしょう。 中国では、法律の上位概念として、国家を指導する"党"があることを忘れてはなりませんね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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