どこの子も地域の宝 (ウチの近所の悲しい現状)
近所のエムさんの奥さんはとても内気だ。道で会っても挨拶さえできないほど内気で、その性格故かどうか分からないが、去年入院していたのは精神科だった。(らしい)(らしい、というのは本人に聞いたわけではないからです)エムさんの家には男(小6)男(小5)女(小1)の兄弟がいて、そこに他の2軒の男の子(小2と小1)が合流して通学班を作っていた。が、エムさんちの小5はとても乱暴で通学中に小2と小1の男の子たちを蹴飛ばすは、エム家だけで勝手に走っていってしまうはで、小2と小1の男の子たちのお母さんたちは1学期のウチに切れて怒っていた。夏休み。地区懇談会で怒りをぶちまけたそのお母さんたちは役員さんと相談して通学班を替えてしまった。自分たちの子どもを他の班に組み入れてもらったのだ。そのころエムさんは入院中。事態を知らなかったらしい。9月1日。新しい通学班に入った男の子2人は新しい通学班で早々と通学した。いつもの集合場所にはぽつんと残されたエムさんとこの3人。 私の家からはその様子がよく見えた。彼らはしばらく待っていたが、やがて猛然と学校へ歩き出した。口をぎゅっと結んで。兄弟3人で。 旅行で地区懇を休んだ私がその辺りの事情を全部知ったのは 9月も半ばの頃だった。エムさんは9月下旬に退院してきて、事態を知った。そして、男の子たちの家に電話したという。「どうしてウチの子達だけで学校へ行ってるんですか?」人付き合いのとても苦手だというエムさんが電話をするのはどんなに勇気が要ったろう。40代のエムさんが、20代の気の強そうなママさんに言いたいことが言えただろうか?そして、自分のところの子どもたちにどんな話をしたんだろう。子どもたちはどう思ったんだろう。この話をきいた私が心配になったのは、エムさんのところの次男の気持ちだった。9月以来現在も兄弟3人だけの通学は続いている。どの通学班より朝早く、安全立哨のお母さんたちがスタンバイするより早く学校へ向かって黙々と歩いている。まるで、地域に背を向けるかのように…。自分の乱暴が原因の事態とは言え、近所の何軒かが自分の家を仲間はずれにした、というふうに受け止めているのだろうか。自分たちは地域に大事にされていない、というふうに受け止めたまま、彼は成長するのだろうか。地域に対してどろどろしたままの気持ちを抱えたまま、成長した男。今はまだ小5。周りの大人たちは彼を一人前には見ていないだろう。でも、いつまでも子どもじゃない。……だからこわい。エムさんのところの女の子とウチのカツヤザウルスはよく遊ぶ。通学班が変わった男の子達ともよく遊ぶ。全く関わりがないわけではないけれど、私なんかが踏み込んでいくのにはためらいを覚えてしまう距離感がこの家々にはある。どの子も地域の宝。成長して、地域を支える大人になって欲しい、大切な宝。心底悪い子なんてそうはいないはずだ。色眼鏡で見て、自分のところの子どもだけが大事、と言う考え方で対処していたらとんでもないことになる。来年度、エムさんの長男が卒業し、通学班は一度元に戻されることになる。今度こそ話し合う、と言っていた、男の子のお母さんたちが子どもたちの心を優しく守ってあげられるような歩み寄りが、今度こそできるといい、と思う。そして、来年度6年生になる次男君が、心豊かに成長していてくれるよう、このオバサンは心から祈っている。