この春、地方銀行の支店が新規開業するとかで、
「〇〇銀行設立準備委員　××」
という名刺を持った銀行員の方々が、
地域をくまなく挨拶回りしています。

この１ヶ月ほどの間に、私の事務所にも、
入れ替わり立ち替わり銀行員の方が
おいでになりました。今日でたしか５人目。

地域密着の新しい銀行として、
その地域社会に早くとけ込もうと
積極的に個別訪問を繰り返しているのでしょう。

それ自体、別に悪いことではないのですが．．。

「新しい銀行ができます」と、
ごく一般的な挨拶を一方的にして、銀行員の方が帰った後、
「もしも、私が銀行設立準備委員会の責任者だったら
一体どういった営業活動を企画し、指示するだろうか．．。」
と、ふと思いました。

例えば、私自身にアプローチをするとしたら、
一体どういう手法をとってくれたら嬉しいだろうか？
と考えてみました。

私の希望としては、私の名刺をその場でじっと見てくれて、
「あらぁ、ホームページを持ってるんですね。
一度見せていただきます。」
などと言われたら、ちょっと喜ぶだろうなぁ。
（でも、ほとんど表情には出さないだろうけど．．）

そして、その二日後くらいに再び私の事務所を訪れて、
「ホームページ見ましたよ。
メルマガも出されているんですね。すごいですねぇ。
まだ一つだけしか見てませんが、
興味深い内容のメルマガなので、
登録させて頂きました。」などと言われると、
一気にその銀行員に対して親近感が生まれ、
その銀行員の方の顔を立てて、
定期預金をするかも知れないなぁ、
などと思いを巡らせました。

そういえば、最近、
「お宅の文章は素晴らしいので、
是非とも出版されたら」と騙して、
全国のメルマガ発行者から
「あなたのメルマガを出版します」と持ちかけては、
法外なお金を巻き上げた詐欺事件がありました。

メルマガ発行者の心理を巧みについた、
その個別できめ細かい抜群のマーケットリサーチには
犯罪ながら感心してしました。

自分が一生懸命取り組んでいることに
強い関心を示してくれて、
そのうえ、「文才がある」などと持ち上げられたりすると、
何の疑いもなく財布の紐は緩むのでしょう。

少々お金を騙し取られたとしても、
「自分を認めてくれた」という思いに、
ある程度は納得した人もいたのではないか、
と私は勝手に思うのです。

このようなメルマガ発行者への出版のアプローチは、
あなたの起業創業する業種の
マーケットリサーチでもきっと参考になるはずです。

「木を見て森を見ない」経営は、
一般的に「悪いこと」の例えとして使われています。

しかし、個人が新たに起業創業する場合には、
一般的に森は見るけれど、
個別の木はほとんど見ていないので、
結局、失敗してしまう人が圧倒的に多い傾向にある、
と聞いたことがあります。

つまり、一般的な森に憧れて起業創業しても、
現実の一本一本の個別の木々はほとんど見ないで
行動してしまうのでしょう。

だから、先に取り上げた、「あなたのメルマガ出版」の
ターゲットへのアプローチが
飛び抜けて優れて見えるのかも知れません。

しかし、ここまで、この文章を書き連ねて来てみて、
「ちょっと待てよ．．」と思いました。

「あなたのメルマガ出版」の顧客へのアプローチは
抜群に優れているのに、何故ダメになったのでしょうか．．．。

そう考え始めると、
冒頭でご紹介した、〇〇銀行の行員の皆さんのような
徹底的に誠実にコツコツお客様を回るという手法も、
まんざら悪いことではないのではないか、と思えて来ました。

要領が悪く、非効率的で、
すぐに良い結果には結びつかないことは明かだけれども、
時間をかけて、地道にコツコツと誠実に積み重ねて行った結果、
築かれた「信用」という安心感は揺るぎなく絶大で、
決してお金だけでは購（あがな）えないものだということに
気付かされたからです。

あなたが今、考えている起業創業の目標は、
単に「効率的なお金儲けの方法」で
とどまってしまってはいませんか？
要領の良さだけを追求していませんか？

「お金儲け」は、あくまでも途中目標に過ぎません。

儲けたお金を使って、あるいは儲ける過程において、
自分や社会に何を達成するのか、を
常に考えていなければなりません。

最終的には、
起業創業されるあなた自身の「生き方」の問題であり、
あなた自身の人生の「基本姿勢」に収斂される、
基本中の基本の問題に行き当たるのです。

もし、未だ、
その「基本中の基本の問題」に
ほとんど答えが出ていなかったとしても、
常にその問題を意識し、
答えを出そうと考えている姿勢が大事なのです。



＜ご参考＞
目標に関する私のメルマガをざっとリストアップしておきます。

目標が見えない
－自分のことは見えにくい－
http://www.nbn.ne.jp/bellnet/sougyou/essay/h17/mokuhyou.htm

具体的数値目標から
－目の前の第一歩の大切さ－
http://www.nbn.ne.jp/bellnet/sougyou/essay/h17/gutaiteki.htm

峰廻路伝
－回り道のように見えても－
http://www.nbn.ne.jp/bellnet/sougyou/essay/h18/houkairo.htm

明確で具体的な目標を
－８０対２０の法則－
http://www.nbn.ne.jp/bellnet/sougyou/essay/h18/80-20.htm

目標を紙に書く
－思考を具体化する－
http://www.nbn.ne.jp/bellnet/sougyou/essay/h19/kaminika.htm