うちの嫁さんが、
「子ども会の資料を町内の〇〇さんに届けたいのに、
クルマがない」と言って来たので、
「今、事務所の補助者が仕事でクルマを使っているから．．。
近くなんだから、天気も良いし、歩いて行ったら」と言ったら、
「忙しいのに！」と、
私の言ったコトバの３倍くらい文句を言い返されて、
想定外の反論に思わず絶句してしまいました。

忙しく順調に動き回っている人には、
何を言ったところで、決して聞く耳を持ちません。

それは、うちの嫁さんに限らず、
（但し、うちの嫁さんが、
それほど忙しく動き回っているようには見えませんでしたが．．）
かく言う私自身にも、恐らく見事に当てはまることなのでしょう。

順調に忙しく動き回っている時には、
人は誰しも、他人の意見など聞こうとはしないものです。

傍目には素直に聞いているように見えたとしても、
たぶんそれはうわべだけで、
頭の中は全く別のことを考えているのかも知れません。

調子が良いときも、ダメなときも、
パタッと思考が止まるような、
明らかに自分自身のキャパシティを越えた
解決できない重大な出来事にでも遭遇しない限り、
人の話などハナからまともに聞いてくれることはありません。

というより、「聞けない」、「聞く余裕がない」といった方が、
正鵠を射た表現なのかも知れません。

事が順調に動いている時には、
きっと自分の世界がどんどん広がって行っているはずだし、
逆に、うまく行っていない時は、
目の前の状況をうまく凌ぎ切ろうと精一杯だからです。

「忙しい」の「忙」という、この漢字、
立心偏（りっしんべん）＝心　に　亡くす、と書きます。
すなわち、「心を亡くす」と表現されていることからもわかります。

１００％、何ともならない「末期症状に至っている」ことに、
自ら気付いて、
二進も三進も（にっちもさっちも）行かなくなってから、
そこでようやく真剣に他人に相談しようとする人が多いのです。

本当に病んでいる人は、
病んで病んで病み切って、
もう自分自身ではどうしようもなくなって、
それから「なんか調子が悪いです」と第三者に相談するのです。

と言うことは、
相談しようとする時点で既に結論が出ていることになります。

端的に言うと、相談する時点で、
「終わり　The End.」ということです。

悲しいことに、人間は挫折し、どうにも動けない、
止まる状況にならないと真から気付きません。

自分で自分のことは、
一番気付き難い（にくい）、わかり難いものなのでしょう。

順調に動いている状態では、
人から意見されることはもちろん、
人に意見を求めることさえも
億劫になっているはずです。

けれど、そういう状況は傍目にはよくわかります。
よく見えるものです。

昔から、傍目八目（おかめはちもく）と言って、
傍からみていると、不思議なくらい
事実関係がクリアに浮かび上がって見えて来るもので、
利害関係が全くなく、
離れて見ることが出来る立場であればあるほど、
的確でシャープな解決策も見えてくるものです。

しかし、その時、
第三者が安い善意で中途半端に口を出さない方が賢明です。

善意で、口を酸っぱくして意見したところで、
返ってくるのは反論ばかりでしょう。

何を言っても通じないどころか、
逆に悪者扱いにされるのがオチだからです。


もし、どうしても口を出さずにはいられないのなら、
その最後の責任を総て取り、
ムッとするような反論を受ける覚悟で意見しましょう。

「年寄の冷水」とか、言われるかも知れませんが．．．。