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カテゴリ:起業のお話
一般的に言って、日本の社会においては、
一つの仕事をとことん突き詰めて極める姿勢は、 「真面目で素晴らしいこと」と評価されます。 ある部分にだけ執拗にこだわる、 いわゆる「職人タイプ」の人がいて、 「この仕事だけは絶対に譲れない、絶対に負けない」と、 地道に真面目に頑張る人たちが多いので、 世間的評価も比較的高いようです。 しかし、このような一般社会の常識的な評価に引きずられて、 職人タイプの価値観を持ってビジネスに取り組む人は、 現代のビジネス社会においては、 どちらかと言うと「NG」という評価になることが 多いのではないかと私は思います。 ビジネスの世界でオールラウンドにこなせる いわゆる「一人前」と呼ばれる人は、 狭い分野の一つ一つの小さな事にあまりこだわることなく、 全体の大きい流れをうまく見ながら、 仕事をスムーズに流しているはずです。 ある部分にだけ執拗にこだわる人は、 ある部分では飛び抜けて良い成果を出せるかも知れないけれど、 別の部分では全く手を付けていなかったり、 仕事全体が遅かったり滞りがちになっていたりします。 悲しいかな、 こだわりを持つ狭い一点でしか戦うことができない、 バランスのきわめて悪い人が多いようです。 その人だけしかすることの出来ない、 誰も追随出来ない芸術の世界のようなものならともかく、 こと、一般的なビジネスの世界に関して言えば、 徹底的に突き詰めることは 決して良いことではないような気がします。 一昔前、バブルの頃までの時代なら、 特定分野で飛びきりの成果を上げる スペシャリスト(specialist)が脚光を浴びていました。 野球で言うならば、 指名代打のバッターや火消し役のストッパー(ピッチャー)です。 指名代打では守備は一切やらず、 ただバッターボックスで一振りするだけで勝負し、 また、火消し役のストッパーは、 チームが危機にある時に颯爽とマウンドに登場し、 たった1イニングだけのピッチングに登板して、 ピシャリと後続を断ち、脚光を浴びていたのです。 けれど、そんなスペシャリストの時代はとうの昔に終わり、 今は、オールラウンドのゼネラリスト(generalist)が 脚光を浴びる時代になっています。 例えば、イチロー。 打撃、走塁、守備、 総ての面で抜群の能力を発揮しています。 よくよく考えてみれば、 走攻守揃ってこそ、一流選手です。 打撃だけとかワンポイントで投げるだけでは、 決してバランスの良い一流選手とは言えません。 そう考えると、狭い分野のワンポイントだけを 一生懸命に極めようとすることは、 半人前を目指すのと全く変わらないことに気付かされます。 常に全体の流れを見て、 オールラウンドにバランス良くこなせる人が 一人前なのです。 ところで、ビジネスの世界においては、一人前の人間は、 完璧にできる人か全くできない人かのどちらかに分類されます。 全くできない人は、 とてもよくできる優秀なブレーンを探し出しているはずです。 一人前だけど全くできない人は、 自分のできる範囲だけを極めたところで、 結局は立派な半人前になるだけだということをわきまえている クレバーな人なのかも知れません。 中途半端に出来る人は、 実は数多くの人たちがこの範疇に入ってしまうのですが、 いつまで経っても一人前にはなれませんし、 そのこと自体、本人が一番わかっていません。 起業創業する場合、 最初は細々とした会社からスタートします。 小さな会社の場合、 お客さんはほとんど善意で仕事をくれています。 最初は大して期待などしていません。 こだわる必要なんて全く無いのです。 要求された条件は60~80点の出来で、 納期さえきちんと守ればOKなのです。 「自分の代わりなど日本中に腐るほどいる」と思えば、 ある1つの部分だけに徹底的にこだわることが いかに滑稽で馬鹿げたことか、気付くはずです。 儲かる会社は、ビジネスライク(businesslike)に徹していて、 表現は適切でないかも知れませんが、極端に言うと、 「無難に中の上程度で流している」から儲かるのです。 ただ、何か言われたら戦うだけの知識を準備し、 優秀なブレーンがきっとバックに控えているはずです。 もういい加減、半人前を極めることは止めにして、 先ずはバランス良く、一人前になることを目指しましょう。 飛び抜けたスペシャリストを目指すのは、 それからでも決して遅くはありませんから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月30日 07時20分52秒
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