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カテゴリ:生き方
これは、ニューヨークのある大学病院で、ある医師が体験した実話です。
小児科病棟にナンシーという名の小さな女の子が入院して来ました。 ナンシーは3歳になっていたのですが、身体が生後1歳半程度の大きさにしか、成長していませんでした。 本来なら可愛い盛りであるはずなのに、やせ細って、まるで「猿の干物」のような痛々しい姿でした。 病院の医師たちは、何か成長出来ない原因があるとみて、様々な検査をしましたが、異常は全く見当たらず、病気というわけではありませんでした。 色々様々な手段を講じましたが、ナンシーは少しも成長しないばかりか、声を出す元気すらありません。 入院して3ヶ月経った頃、看護師の一人が主治医に、「ナンシーの家族が一度も面会に来ていません」、と告げました。 そこで、すぐにナンシーの両親に呼び出しを掛けました。 ところが、ナンシーの両親は、一向に病院に現れませんでした。 主治医は堪り兼ねて、入院時に書き込まれ提出されていた書類を元に、住所を探し訪ねて行くと、ナンシーの両親と見られる若い女性がドアを開けました。 しかし、「ちょっと待って下さい」と言うなり、主治医の顔も見ず、奧に姿を消してしまいました。 主治医は居間に通されはしたものの、そのまま放っておかれました。 書斎では、ナンシーの両親であるらしい男性と女性が、パソコンの画面に向かって、必死な形相で論文か何かを打ち込んでいます。 かなりの時間が経ちました。 母親とおぼしきその女性がやっとキーボードを打つ手を止め、医師の方にやって来ました。 父親はコンピューターの画面に向かったまま、訪問者である医師の方に視線を向けようともせず、ただひたすら、画面の作業に没頭していました。 「あの子は必要なかった。子供はまだ欲しくなかったんです。」 母親は口を開くと、真っ先にこう言い放ちました。 聞けば、この両親は、世界的に有名なビジネス・スクールの最終学年に在籍しているとの事。 このスクールでは、毎年多くの優れた経営者を輩出し、またその授業内容の厳しさでも有名でした。 「今書いている論文に、自分たちの将来が、明るい未来が、かかっているんです。だから必死で書いているんです」 母親はやつれ切った表情で言いました。 「だから欲しくなかったんです。でも、勉強が忙しくって、堕ろせなかったんです。あの子は、こんな忙しい時に生まれて来て、厄介な子なんです」 「兎に角、論文さえ済んだら面倒を見ますから..」 そう言うと、母親は、追い立てるように、医師をドアに導きました。 その間、書斎で画面に向かっていた父親は、たった一度も、医師の方を見ようとも、話を聞こうともしませんでした。 ナンシーの主治医は黙って病院に戻りました。 次の日、主治医はナンシーを陽あたりのいい、人の行き交う廊下に移しました。 ベッドごと! そして、そのベッドを置いた廊下の壁に大きな張り紙をしました。 『私はナンシーです。 あなたがここを通る時、もし急いでいるなら、ナンシー!と呼んで、微笑みかけてください。 もし、あなたに少し時間があるなら、ナンシーと呼びかけ私を抱き上げあやしてください。 もし、あなたにゆっくりと時間があるなら、ナンシーと呼んで私と一緒に遊んでください。私を抱き上げ、頬ずりし、あなたの胸や腕や声のぬくもりを私に伝えてください』 早速、ベッドの脇を通りかかる医師、看護師、患者さんたちがそれを実行し始めました。 ある人は、通りすがりに名前を呼んでにっこりと微笑みかけ、ある人は、立ち止まって頬ずりし、あやし、愛情いっぱい注ぎました。 また、ある人は、抱き上げ、自分の病室や庭のお散歩に連れ出しました。 誰もが時間をゆっくり取れても取れなくても、優しい言葉で温かい心を伝えていきました。 そうして、3ヶ月が経った頃、ナンシーの体重は正常な3歳児にほぼ近づき、可愛い笑顔を見せて笑い、言葉も急速に覚え始めました。 自分の事で精一杯な両親でも、ナンシーに対して食べ物だけは与えていました。 しかし、本当に人間を育てる「愛情」を与えていなかったのです。 病院の医師や看護師、入院患者、見舞い客たちは、「人間が人間として成長するために、最も大切な不可欠なもの」があるという事をナンシーを通して思い知らされました。 与えたはずの人たちが、逆にナンシーからそれを教えて貰っていました。 いいえ、与えて貰っていたのです。 最も大切なものを。 <モーニングセミナー新聞> (18)人間は生かされている (h20.12/10発行) http://nitte.heteml.jp/rinripdf/pdf/h20-12-10.pdf (19)人を愛し、故郷を愛す (h20.12/17発行) http://nitte.heteml.jp/rinripdf/pdf/h20-12-17.pdf (20)柔軟に広く目を見開こう (h20.12/24発行) http://nitte.heteml.jp/rinripdf/pdf/h20-12-24.pdf A3 PDFファイルです。参考にして下さい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年12月31日 06時40分15秒
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