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☆モンスター・百田尚樹 ・幻冬舎文庫 ・平成24年4月15日 初版発行 あの日、私は公園で幼馴染の男の子と遊んでいた。名前はエイスケ。2人で冒険しようと知らない道を歩くことになった。見知らぬ道と家々に魅了され夢中で歩き回るうち、帰り道が分からなくなった。その男の子は、泣きじゃくる私の肩を抱き「大丈夫、大丈夫」と何度も励ましてくれた。エイスケは親が迎えにきてくれたときまで決して泣かなかった。あの夜、私はエイスケに恋をした。 エイスケは私が一番好きだと言ってくれ、大人になったら結婚しようねと言ってくれた。 しかし、至福の時代は突然終わった。彼の一家が引っ越して行ったのだ。 母は、私に「ブス」と言い続け、可愛い顔をしていていたが勉強ができない姉には「馬鹿」と罵った。私はその姉にも「ブタ、ブス」と言われ、私も姉に「低脳」と言った。 思い出の中の王子様、英介と高校で再会した。けれど、再会した彼は、あの日の少女が私だと分からなかった。英介に新しい恋人ができた。恋をして、自分の顔には美のかけらも無いこと悟り、自分の顔と体型が一層嫌になった。英介の目が見えなくなれば、私の醜さも見えないのに・・・。私の中に狂気が芽生えてきたのはその時だったのかもしれない。事件を起こしてしまった私は家族にも見放され、故郷を追われた。 鈴原未帆と名前を変え、贅沢もせず働いたお金で二重まぶたにしたことをキッカケに、美容整形にめざめた。女の身体を武器にして稼いだお金をつぎ込んで、ますます美容整形にのめり込んでいった。 私にとって、整形は最高のレジャーであり、生きがいだった。整形の喜びと面白さは、一生懸命作った作品を、丁寧に磨いていく感じだった。一千万以上かけて作った作品を、より良い作品に仕上げるためには金も時間も惜しむつもりはなかった。 古いペンションを改築した高級レストランは、町一番の美貌のママと、シェフの料理が客を呼び、繁盛した。怪談かなにかの話のとき「昔、この町にモンスターがいたんですよ」という客がいた。私は冷静を装いながらその話を聞いた。私がそのモンスターだったことを誰も知らない……。 中2階のプライベートルームのマジックミラーから店を眺める。今日もお客がいっぱいだ。もう少ししたら、テーブルに挨拶に行こう。私が挨拶に行くとお客が喜ぶ。特に男性客は皆、目を輝かす。 私はひたすら英介を待った。いつ現れてもいいように、毎日、最高のメイクをしていた。私は運命に賭けた。いや、運命を信じた。必ず英介は来る……。 その日は突然やってきた。何気なくプライベートルームの小窓から、4人連れの客の姿を見た時、目眩を起こしかけた。その中に、夢に見た男 ー 英介がいたからだ ………………。 「永遠の0」の作者のイメージで読むと、この作品は戸惑ってしまうかもしれません。人が「美人だと思う顔」には、顔の各パーツのサイズに、ある法則があり、美容整形はそれに基づいているのだとか。オドロキでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.04.08 17:01:22
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