カテゴリ:本
☆龍は眠る・宮部みゆき ・(株)出版芸術社 ・平成3年(1991年)2月22日 第1刷発行 ♣︎高坂昭吾=週刊誌「アロー」記者 ♣︎稲村慎司=高校生。超常能力者(サイキック)。スキャン=サイコメトリー=透視 暴風雨が吹き荒れるなか、高坂は自転車がパンクして動けなくなっていた稲村慎司という高校生を拾った。自転車を安全な位置に倒し、彼を車に乗せ走り出したが、途中車がマンホールの蓋に乗り上げ、大きくバウンドして動けなくなった。蓋がずらされて、道路に半月形の穴があき、そのなかに雨水が流れ込んでいく音が大きく響いていた。その時視界の隅をふわりと横切っていくものが見えた。開いたままの子供用の黄色い傘と、開けっ放しのマンホール。高坂の動悸が早まった。「ここを動くな」と言い、柄に「1年2くみ もちづきだいすけ」と書かれた傘を慎司に手渡した。息子を探しに来た大輔の両親を車に押し込み、エンジンをふかした。傘を握りしめた慎司は、ぽかんとして目は100m先を見ていた。まもなくマンホールの周囲は人と車とライトで溢れた。なぜ嵐の夜に子供が出かけたのか聞く昭吾に、警官は大輔の両親が取り乱しており、未だよく分からないと言う。 翌朝一人で自転車を取りに行き、しばらくして帰ってきた慎司はひどく青ざめて見えた。てっきり慎司が犯人かと勘違いした昭吾に、彼は「犯人は、赤のポルシェ911、川崎ナンバー、運転者は脇にブルーのラインのスニーカーを履いている。若い男。二人連れ。一人はブード付きの赤いパーカーを着ている。二人ともとても急いでいた」といった。 昭吾を人気のない広々とした造成地に連れて行った慎司は、握手するような形で手を握り、視線をそらし、遠い目をして周囲を見回した。昭吾は、すぐ前に座っている慎司の気配が消えてしまったように感じた。やがて慎司は、まるで歌を歌って聞かせるように話し始めた。子供の頃、友達と一緒に三叉路に立っていた昭吾が、ダークグリーンのトラックの後輪に巻き込まれた事故のこと。そのとき着ていたTシャツの色、母親が昭吾をたしなめた言葉、怪我の程度。そして今でもグリーンのトラックを見ると折れた足が逃げ出すって、誰かに言ったでしょう。そうその人はーサエコー。 何の手品だと詰め寄る昭吾に、自分はフロッピーディスクから情報を読み取るように人の記憶を読み取ることができる。自分が特殊な能力を持つ超常能力者(サイキック)だということを知って欲しい。そして、あなたならマンホールのふたを開けたままにした彼らを探し出すノウハウを持っている筈…。だから手を貸して欲しいと。 サイキック、サイコメトリー・・・。馴染みのない言葉が次々と出てきます。 読んでいるうちに、いつのまにか、「もしかしたら、実際にそのような能力を持つ人がいるかもしれない・・・」という気になってきました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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