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2019.09.17
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☆神様の御用人シリーズ・浅葉なつ
・発行所=(株)KADOKAWA アスキー・メディアワークス文庫

神様の御用人1=2013年12月25日 初版発行
神様の御用人2=2014年5月24日  
神様の御用人3=2014年11月22日 
神様の御用人4=2015年5月25日
神様の御用人5=2015年12月25日
神様の御用人6=2016年8月25日 
神様の御用人7=2017年8月25日 
神様の御用人8=2018年11月24日 

さて、これから私が記すのは、現代の日本に生まれ、葬式には僧侶を呼び、クリスマスにはケーキとチキンを食べ、正月には神社に初詣に行くという、ごく一般的な家庭で生まれ育った1人の人の子の話である。彼もまた、多くの人がそうであるように、神をただすがるだけの存在としてみていた者だ。
神である私にとって、人というものは、雲間から降りしきる雨粒か、季節に散りゆく木々の葉か、それとも過ぎ行くそよ風のような存在であるが、私の長すぎる記憶のなかに、一点の鮮やかな彩を残した彼の話を、戯れに書き残しておこう。いつか私の鱗が色あせる頃まで、この物語が受け継がれ、明日の人の子へ手渡されるなら、それもまた、儚き世の一興である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ある日、良彦は豆餅を喉に詰まらせて苦しむ老人を助けた。老人は良彦の手を握り、深々と頭を下げ、「敏益(*1)はいい孫を持ったもんじゃの。今日はお前さんに用があったんじゃ」と言い、風呂敷包のなかから文庫本より少し大きいサイズの、緑色の冊子を取り出した。「色々あったんじゃが、孫のお前さんに手渡すことになった。あとのことは狐に聞いてくれ」という謎の言葉を残し、良彦の前から忽然と消え失せた。それは表紙に美しい布が張られた手の込んだ物だった。中を見ると、全体の3分の1に、もはや暗号にしか見えない一文が毛筆で黒々と書かれており、様々な形の朱印が押されていた。
翌朝、昨夜閉じた筈の冊子が開いた状態になっており、そこに新しい文字が増えていた。薄墨で「方、位、神」の3文字だけ・・・。

(*1=良彦の祖父、先代の御用人)

神様から一方的に「御用人」に指名されたフリーターの若者、萩原良彦。御用人には給金も無ければ交通費も出ない。神様の願いを叶えるために、不承不承ながらも、アルバイトで稼いだなけなしの金を注ぎ込み東奔西走するうち、いつしか「人」として成長していった一人の若者のお話。

《主な登場人物》
♣︎荻原良彦
主人公。25歳のフリーター。
野球しか取り柄がない青年。野球推薦で大学へ進み、運良く強豪の社会人野球チームを持つ企業に就職した。だが入社後すぐに膝の半月板を痛め手術を余儀なくされた。時を同じくして経営悪化により野球部の廃止が決まった。もともと野球入社だったこともあり、膝の痛みを抱え無理が出来ず、活躍の場を失った良彦は、入社半年で自ら辞表を提出してしまった。以降、この春にアルバイトを始めるまでは、ほとんど引きこもりの状態であった。そんな何の取り柄もない彼が、ある日突然、神様の御用を聞く「御用人」に任命されたのだ。

♠︎黄金(こがね)
方位の吉兆を司る方位神(陰陽道の神様)。艶やかな黄金色(こがねいろ)の毛に覆われ、鮮やかな萌黄色の瞳、フサフサと太くて長い尻尾をもち、四足の先の方がグラデーションのように銀毛になっている狐の姿をしている。
不本意ながら良彦のお目付役に収まっている。スィーツに目がない。

♣︎藤波幸太郎
良彦の高校の同級生。神社の跡取り息子。大学卒業後神職の資格を取得。良彦の自宅近くの大主神社(おおぬしじんじゃ)へ出仕(神職見習い)として奉職。権禰宜(神社職員)となる。容姿端麗で外面は良いが、内面は超現実主義者。良彦が御用人であることは知らず、妙に神様のことを調べ回るのを訝しく思っている。

♣︎吉田穂乃香
大主神社の宮司の娘。高校3年生。神や精霊、霊魂などが視える「天眼」の持ち主。良彦と出会ってから1年。徐々に感情が豊かになり、本来の優しさや素直さを出せるようになってきた。

♣︎吉田冷司
穂乃香の兄で、東京の企業に勤めるサラリーマン。霊感はあるものの、不思議なことはすべて「気のせい」ですましてしまう。妹を溺愛する余り、良彦を目の敵にしている。

♣︎その他、八百万の神々

《用語》
御用人
八百万の神の話を聞き、その願い事を叶える人間。先代は良彦の祖父。

宣之言の書(のりとごとのしょ)
薄墨色で書かれた御用のある神の名前が浮かび上がり、?神に受理されると黒々とした墨文字に変わる。御用を達成すると、願い事をした神の朱印が押される。

天眼(てんがん)
神や精霊の姿を見ることができる特殊な目。


作者:浅葉なつ
四国生まれ関西在住の兼業作家。第17回電撃小説大賞でメディアワークス文庫賞を受賞し『空を魚が泳ぐ頃』でデビュー。他の著書に『香彩七色〜香りの秘密に耳を澄まして〜』などがある。本編執筆中に引越しを敢行。新居の決め手は神社が近かったから。




いつも行く図書館で、何故かこの本のタイトルが目に飛び込んで来ました。これまで見たことも聞いたこともない作者です。試しに一巻だけ借りて読んでみたら、面白くてすっかり虜になってしまいました。神様の名前の漢字と読みに四苦八苦しましたが、既刊の8巻を一気に読んでしまいました。過去のペースでいくと、そろそろ9巻が出るはず…。最後に作者は、成長した若者にどんな「ご褒美(結末)」を用意してくれるのでしょう。





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Last updated  2019.09.17 15:21:37
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