カテゴリ:本
☆パラレル ワールド ラブストーリー ・東野圭吾 ・講談社文庫 ・1998年3月15日 第1刷発行 (1995年2月、中央公論より単行本刊行) ♧MAC技術専門学校 米国に本社を置くバイテック社が社員の英才教育のために作った学校。 ♣︎敦賀崇史 ♣︎三輪智彦 崇史と智彦は、中学時代からの親友だった。同じバイテック社に入社。MAC技術専門学校に入学 ♣︎津野麻由子 かつて、崇史が一目惚れした女性。2人と同じMACに入学。 週に3度京浜東北線で、新橋にある大学の資料室に行く敦賀崇史。彼は毎週火曜日同じ時刻に、並行して走る山手線に乗る女性に一目惚れをした。彼女はいつも同じ場所に立っていた。そんな日が一年近く続いた。資料室に通う最後の日、彼女が乗る山手線に乗り 彼女が立つ位置に行ってみた。だがその場所に彼女の姿は無く、京浜東北線の中にいる彼女の姿が見えた。慌てて京浜東北線に乗り換え、必死に探したが結局会えずに終わってしまった。やがて修士課程を終えた崇史は就職。その女性と会うことは無くなった。 崇史と彼の中学時代からの親友三輪智彦は、米国に本社を置くバイテック社に入社。バイテック社が社員の英才教育のために作ったMAC技術専門学校に入学した。崇史は視聴覚認識システム研究班に、智彦は記憶パッケージ研究班にそれぞれ配属された。 ある日、かつて彼が一目惚れしたあの女性が、あろうことか智彦の恋人として崇史の前に現れたのだ。彼女の名は津野麻由子といい、紛れもなくあの山手線の彼女だった。津野麻由子はバイテック社に就職が決まり、MAC技術専門学校に入学することになったため、智彦は先に紹介しておきたかったのだという。 目を覚ました時、崇史は違和感を覚えた。何かが違うと思ったのだ。だがその正体は分からなかった。キッチンでは津野麻由子が2人分のホットケーキとベーコンエッグをテーブルに並べていた。今週の朝食当番は彼女なのだ。 何かが彼の頭の中で引っかかっている。何がこんなに自分を落ち着かなくさせるのだろう。コーヒーカップに手を伸ばした時、崇史の脳裏に一つの場面が浮かんだ。4人の男女がコーヒーカップを持ち上げて乾杯していた。夢の中の一場面とは思えないほど、あまりにも鮮明だった。 偶然、街で大学時代に付き合っていた夏江と出会った。ずいぶん久し振りだねという崇史に、夏江は、三輪智彦が恋人を紹介するというので、夏江にも一緒に行ってほしいと言ったのを忘れたのと答えたのだった。夏江と話しているうちに崇史はその日のことを思い出した。4人でデミタスカップで乾杯したのだ。なぜそのことを忘れていたのだろう。ならば、なぜいま自分は麻由子と同棲しているのだ。 どの記憶が現実なのか考えれば考えるほど、崇史の記憶は繋がらない・・・。 久し振りに大学時代の友人と会い、聞かれるままに麻由子とのことを話していた崇史の胸に、突然不安がよぎった。彼の思考に疑念が飛び込んできたのだ。記憶がゆらぎ、不鮮明になった。崇史の額から脂汗が出ていた。自分は夢を過去に実際にあったこどのように錯覚しているのだろうか。なぜ急にそのような夢を見るようにたなったのだろう。そのことは、最近まで智彦のことを忘れていたことと何か関係があるのだろうか。いくら考えても筋の通った答えは得られず、重い気持ちを引きずったまま、麻由子の待つアパートに帰った。 記憶の改変は、自分たちが研究している次期型リアリティの究極の到達点だ。 自分の記憶が変えられていることと、智彦が姿を消したことは無関係ではない。この状況を作り出したものの正体はバイテック社に違いない。 智彦は記憶パッケージの研究をしていた。他人の記憶を操作するというものだ。それが完成していたら、現在自分に起こっている現象を説明できることになる。 もしかしたら自分は智彦の実験台になったのだろうか・・・。 ★読後感 「自分が知らない内に記憶を変えられてしまう」などという空恐ろしいことを、男の友情と男女の三角関係に絡めて小説にしてしまった作者。何が飛び出しても驚かない東野ワールドの中でも「得体の知れない恐ろしさ」という点では一番かと。 ただ、現実と変えられた記憶が前後して入り混じり、内容を理解するのが非常に難しく、2度読んでしまいました。 ☆☆(星2つ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.07.02 09:21:07
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