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カテゴリ:本
☆幾世の鈴 (あきない世傳金と銀) 特別巻下・高田郁 ・角川春樹事務所 ・2024年3月8日 第1刷発行 明和9年(1772年)、江戸「行人坂の大火」の後の、五鈴屋ゆかりの人々の物語。 ♣︎幸 学者の子として生まれ、9歳で大坂の呉服商「五鈴屋」に女子衆奉公。商才を見込まれて、4代目から3代に亘っての女房となる。6代目の没後、7代目店主となり、江戸へ移り、「五鈴屋江戸本店」店主となる。 この「幾世の鈴」では、その後の幸の姿が書かれている。 ♣︎賢輔 「五鈴屋の要石」と呼ばれた番頭、治兵衛の一人息子。8歳で五鈴屋に丁稚奉公。江戸本店で手代に昇進し、型染の図案を担当する。9代目を継ぐことが決まっているが、未だ彼が抜けるわけにはいかず、江戸に留まっている。 ♣︎惣次 こと 井筒屋3代目保晴 妻の幸に離縁状を残し、出奔した五鈴屋5代目徳兵衛こと惣次。その後、江戸へ出たあと、手腕を買われ、本両替商「井筒屋」の娘婿となり3代目保晴となる。五鈴屋江戸本店、菊栄を、陰で支えてきた。 ♣︎菊栄 五鈴屋4代目店主の前妻で、幸の良き相談相手。傾いていた生家の小間物屋「紅屋」を立て直したのち、江戸にて、「菊栄」創業。 ♣︎結(ゆい) 幸の妹。音羽屋忠兵衛の後添いで、元「日本橋音羽屋」女店主。 ☆第1話・暖簾 五鈴屋江戸本店を守る7代目こと幸、そして、元五鈴屋の要石と言われた番頭の治兵衛の一人息子、賢輔。2人が大坂に戻り、夫婦になり、賢輔が9代目徳兵衛を継ぐ筈が、この年の如月に起きた未曾有の大火により、五鈴屋江戸本店も焼失。幸いなことに主従誰も欠けず、蔵も無事だったが、再建が叶うまで大阪へもどる訳にはいかない。賢輔には大坂に戻る前にどうしても叶えたい秘めたる思いがあった。 大坂天満、五鈴屋8代目徳兵衛こと周助、54歳。8代目を継いで18年。かつて、周助は同業の「桔梗屋」の番頭だった。桔梗屋が乗っ取りに遭いかけたとき、助けてくれたのが、五鈴屋6代目当主の智蔵だった。桔梗屋の当主孫六は親旦那として迎え入れられた。智蔵は、周助が五鈴屋で勤め上げて別家となった暁に、改めて桔梗屋の屋号と暖簾を引き継がせたいと、桔梗屋の暖簾を大事に預かってくれていた。 五鈴屋9代目当主を賢輔に継がせるまでの中継ぎとして、8代目を襲名した周助であった。賢輔が大坂に戻れば、親旦那の立場で彼を支えることを期待されている。 けれど、孫六も96歳。周助は、五鈴屋を賢輔に託したら、店を出て桔梗屋の暖簾をこの手で掲げたいと心に決めていた。 ☆第2話・菊日和 小間物屋「菊栄(きくえい)」の店主菊栄と、本両替商「井筒屋」3代目保晴のその後を書いた物話。 ☆第3話・行合(ゆきあい)の空 江戸を重追放に、闕所となり、行方知れずになった音羽屋忠兵衛とその女房、結(ゆい)。結は、ずっと姉の幸への嫉妬や憎しみを持ち続けるも、自らも2人の娘の母となり、苦悩の果てに、ようやく辿り着いた境地を書いた物語。 ☆第4話・幾世の鈴 幸と賢輔の話 五鈴屋9代目徳兵衛を継いで10年。賢輔54才、幸61歳。五鈴屋の要石と言われた元番頭の治兵衛、賢輔の父、治兵衛96歳、母、お染76歳。 五鈴屋ほ、初代徳兵衛の創業から100年を迎えた。 還暦を迎えた幸が、9代目店主で夫の賢輔とともに、次の100年へむけて、五鈴屋の暖簾をどう守り、その「商道」を後世に、どのように残すのか熟考し、決意する物語。 「あきない世傳 金と銀シリーズ」は、これで完了と思っていました。ところが、作者の「あとがき」や、本文の中に、次の世代に続きそうな布石が幾つか・・・。それもまた楽しみです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.08.25 11:23:24
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