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テーマ:たわごと(26815)
カテゴリ:会社生活
会社の同僚で営業部長のMさんは、肩幅が広くてガタイも良い上、量の多い髪をかなり目立つ茶色に染め、日頃のファッションは海外の「超高級ブランド」で身を固めており、比較的服装の自由度の高い我々の業界の中でもひと際異彩を放つ風貌のヒトである。 Mさんの個性は見た目だけではなくて、その突出した“暴力的キャラクター”によって周囲から「マムシ」と囁かれ恐れられる存在でもある。普段はむしろ堂々として信頼も厚いアニキ分なのだが、一旦、部下が仕事で何かミスでもしようものなら、鋭い眼つきで睨み上げながらドスの効いた声で「おまえナメとんのか?」「殺すぞ!」「死ね!」を連発。有名な語録として「ヤられた仕打ちは一生忘れない」「復讐は十倍返し」など、およそビジネスの場にはそぐわない発言が多々あり、まるでスーツを着た野獣といった感じである。 先日、そのMさんの仕事で夜中まで一緒にプレゼン準備の作業をしていた。Mさんの部下の営業部員や我々スタッフ部門のメンバーなど全部で8名ほどいたのだが、晩飯を食べに行く暇もなく腹が減ったので皆で遅い夜食の出前をとることにした。およそ1時間後、出前の弁当が届いた。皆が各自注文した弁当を開けて食べようとしていたとき、事件は起こった。 「おい」とMさんのドスの効いた声。「入ってないやないか」。はぁ?と皆がMさんの方を見る。立ったまま自分の弁当を睨みつけるMさん。「何がですか?」と部下の一人が聞く。「ワシのハンバーグ海老フライ弁当に、デミグラスソースの小袋が入ってないやないか」。「へ?」と部下。「ソースの小袋が入ってないっちゅうねん!すぐ電話して持ってこさせろ!」と怒鳴るMさん。急いで電話をかける部下。「あのー先ほど配達してもらったハンバーグ海老フライ弁当にでみぐらすソースが付いてないんですけど!」。 さらに待つこと30分。Mさん以外、他のメンバーはとっくに弁当を食い終わっている。腹が減り、明らかにイラついている様子のMさん。ようやく出前が到着し、部下がハンバーグのソースを受け取りMさんのもとへ届ける。それを見たMさん、「カッ」と眼を大きく開き、怒鳴る。「アホかおまえ!」「最初に注文してから1時間半も経っとるやないか。冷えたハンバーグにこのソースかけて食え言うんか!ボケ!死ね!」慌てて、再び店に電話する部下。すると、その受話器を「貸せ!」と横からむしり取るMさん。いつも以上にドスの効いた声で「おたく、どんな商売してますのん?」「一時間半待たせた挙句に、冷えたハンバーグ食わせるんですかおたくの店は?そういう場合は、新しいアツアツのハンバーグ作り直して持ってくるのが筋でしょう?何かボクおかしなこと言うてますか?そうでしょう。客を馬鹿にしとるんですか?ええカゲンにしてくださいよ。それで、いつ持って来るんですか。え、いつ?何時何分!」。飢えた野獣は手がつけられないのだが、怒ってる内容があまりに間抜けで、聞いてる我々は笑いをこらえるのが大変なのである。 およそ15分後、深夜のオフィスの真ん中で、出前の兄ちゃんとともに店の責任者と思われる背広姿の男性が、Mさんの前にひれ伏していた。もちろん、アツアツできたてジュ~シ~のデミグラスソース付きハンバーグ海老フライ弁当を持って。Mさんは最初の冷えた弁当と新しいアツアツ弁当の2つを前に、ひとしきり文句を言った後、「ちゅうことで、次は頼んますわホンマに。ほなコレ、お金」といって、きっちり弁当二つ分の料金を支払ったのであった。そういうヒトである。徹底的に文句は言うが、常にこういう金の支払いに潔いヒトは意外とファンが多いのも事実である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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