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テーマ:ドキドキしちゃう(318)
カテゴリ:会社生活
警官の後を追って1ブロック先の角を曲がると、十数メートル前方の路上で、警官たちが男を取り囲んでいる光景が目に入った。男は刺身包丁を握ったまま、仁王立ちで身構えている。「包丁を下に置けー!」と叫ぶ声。動かない男。「下に落とせー!」と再度叫ぶ声。「ガチャーン」という音がして、男が固まった姿勢のまま包丁だけを道路に落としたのが見えた。直後、大柄な警官のひとりがものすごい勢いで男に飛びかかり背後から羽交い絞めにしたかと思うと、そのまま柔道の投げを打つような感じで思い切り地面に叩き付けた。それが合図のように、残りの警官たちも一斉に男の上に倒れこむ。影になってよく見えないが、ボコボコにされているようである。 そのまま、1台のパトカーの後部座席に男は無理やり押し込まれ、警官たちもぎゅうぎゅう詰めで乗り込んだ。なんだ意外とあっけなく終わったなと思いながら走り出すパトカーを見送ろうとしていると、中から再びひとりの警官がこちらに走ってきて「ご主人たちー、名前を連絡先を教えてもらえませんかー。詳しい話を聞かせてもらいたいんやけど、いまちょっとバタバタしてて!」と叫んだ。いまちょっとバタバタってアンタ、他所事みたいに言わんでもわかってるよ。ともかく、我々ふたりの名前と電話番号を教えると、「後日また状況きかせてもらいますんでー」と言って、警官はパトカーに飛び乗り、ケタタマシくサイレンを鳴らして走り去った。 【その後立ち寄った、近所のコンビニ店員の証言】 店員:いらっしゃいませー。 我々:あのさあ、さっきのこのすぐ前の道路で包丁持った男がふらふら歩いてたの知ってる? 店員:えーマジですか。あ、もしかしてそのヒト、上下黒の半そで半ズボンじゃなかったですか? 我々:え、そうそう。なに、知ってるの? 店員:そのヒトうちの常連さんですよ。すぐ向こうの雑居ビルの2階に住んでるんですよ。実はさっきもお店に来てたんですけどね、あのヒト、睡眠薬中毒なんですよ。さっきも、ほとんどまともに歩けない状態で「うー、わし何しに来たんやったかなー、うー」とか言って困ってるんで「あんたもう帰りー」って帰らせたんですよ。 我々:刺身包丁持ってなかった?刃渡り30センチぐらいの。 店員:いやあそのときは、たぶん手ぶらでしたよ。 我々:じゃ、その後一旦家に戻って、包丁持ち出したんやなあ。 店員:うーんあのヒト、ふだんは悪いヒトじゃないんだけど、一応、元コレですからねぇ(と頬を斜めに切るジェスチャー)。けど、奥さんもいるんだけどなあ、どうしたんかなぁ。 我々も重度の仕事中毒患者なので、最近特に疲れ気味の同僚のMさんなんかは、つい気がゆるんで深夜の路上で刃渡り20センチ程度の暴れん坊将軍を露出したり振り回したりする危険性があるので気をつけなければいけないよと厳しく注意を促したのであった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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