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カテゴリ:旅行生活
「ニューデリー駅前の嘘つきインド人撃破」の巻 お祭り騒ぎであまり寝かせてもらえないまま朝5時になり、身支度を始める。外ではまだ時折「ボヨーン」と気の抜けた銅鑼のような音がする。チェックアウトしようと部屋を出ると、明け方の薄暗い敷地内にはまだあちこちに人がいて、さすがに疲れ果てたのか、男も女も地面の上でのびている。踏まないように気をつけながら宿を出て、表の通りに出ると2日間こき使ったオートリクシャーの兄ちゃんが律儀にも待っていて、最後に駅まで送ると言う。駅に向かって快調に飛ばすオートリクシャーの後部座席で早朝の澄んだ空気を体に受けながら、チャンディーガルに別れを告げるのであった。 デリーに戻る特急列車は、またもや定刻にやって来て定刻に出発した。都心に向かう列車のためか、圧倒的にビジネスマンが多く、満席である。今度も二人掛けシートの窓際席で快適なのだが、車両がかなり古いので窓がくすんでしまって、景色が茶色いフィルターをかけたようにしか見えない。車内サービスは行きと同じく、新聞、水、ジュース、ポットの紅茶、ビスケット、軽食などが次々に配られ、それらを消化したり新聞を読んだりしているうちにあっという間にニューデリー駅に到着する。 またもやニューデリー駅に舞い戻り、駅を出て「こりゃ今日も暑いなー」とメインバザールに向かって歩いていたら、顔中に汗をかいたコリアンガール二人組に声をかけられる。「私たち切符を買いたいんだけど、売場はどこなんですか!このヒトたち、駅の外に付いてこいって言うんだけどホントなんですか!」と、隣にいるインド人たちを指さす。んなわけないやろ。またかいな、ニューデリー駅前名物の嘘つきインド人たち。 「あーそれね、うそうそ。こいつらみーんな嘘つきだから。」と言うと、やけに図体のデカいターバン野郎が偉そうに「なんだと!お前は口を挟むな!」と怒鳴る。そいつを完全に無視して「あのね、駅の構内左手の階段を2階に上がると、外国人専用のチケットオフィス(International Tourist Bureau)があるから」とガイドブックのページを見せながら彼女らに説明していると、ターバン野郎がワタシのガイドブックを取り上げ、 「ITBだろ?ITBはコンノートプレイスに移転したんだ!」と、開いたページの上から勝手に「×印」を付けた。むっか~。「こらオッサン!ヒトの本に何してくれるんや。返せ!」と奪い返す。ついでに「ついさっきも見たけど、ITBは元の場所で営業中じゃ!ぜーんぜん移転なんかしてないっちゅーねん」と言うと、「お前は関係ないくせに黙れ!」とキレたターバン野郎が唾を飛ばして叫ぶ。「お前こそ関係ないやろ!あっち行けおら!」と言うと、ターバンに同調するように他のインド人たちが大声で騒ぎ出す。見ると、ワシらの周りを十数人のインド人が取り囲む輪になっていて、「ITBはクローズドだぞ!」「なんだ!」「どうした!」「リクシャーか!」「チープホテルか!」「チャイ?」などと口々に好き勝手なことを叫び始める。「あー、ウルサイうるさい!うるさいっちゅーねんお前らは!」と奴らを蹴散らし、コリアンガールズに早く行けと促して、ようやくその場を離れる。まったくひどい奴らだ。でもまぁこのぐらいじゃ、ワシもまだキレないよ。ここはインドだからね。 ちっ。それにしても余計なことで時間を食ってしまった。駅前の騒動を抜けた後、メインバザールのネットカフェに入ってメールチェックなどして、時計を見ると次の移動までもうほとんど時間がないのに気づく。実は、デリーには『カリムホテル』という名の地元でも有名なインド料理屋があり、今回そこで名物「羊の脳みそカレー」を食うというのを予定のひとつに入れていたのだが、さすがに時間のリスクを犯してまでカレーにこだわるのもなぁと諦め、再度ニューデリーの駅前からプリペイド・リクシャーに乗って空港へ向かう。 途中、信号待ちで路上に停車している際、誰かが近づいてきてワタシの足元をトントン叩くので見ると、片目片腕で両足のない若い男が、車輪のついた手製のスケボーのような板の上に座ってこちらを見上げ、 「マネー」と呟いた。インドで不具者の乞食は山ほど見てきたが、この時ばかりは唐突なご挨拶に一瞬不意をつかれた。停車中の車列の間を縫ってやってきた彼に敬意を表してバクシーシを渡そうと思ったのだが、あいにくタイミングが悪く小銭の持ち合わせがなかった。間もなく信号が変わり、すっかり期待を持たせて片手を伸ばしていた彼を置き去りに、無情にもリクシャーは砂埃をあげて走り出した。すまぬすまぬ。 国内線の「パーラム空港」へは、余裕を持って搭乗1時間半も前に到着。しかし、やはり今回は飛行機の運航がダメで、ワタシの搭乗予定便はまたしても「DELAYED」の表示。搭乗時刻をとうに過ぎ、出発時刻から30分経っても1時間経っても案内はなく、こんなことなら「カリムホテル」行けたなぁと悔やみながら、売店のパンをかじってひたすら待つ。結局、早めに着いたことも合わせて待合室で3時間も過ごし、「もう日が暮れるよぅ」と待ちくたびれかけたところで、やっと搭乗のアナウンスが。他の乗客たちと一緒に滑走路をゾロゾロ歩き、初めての国内線「スパイスジェット」のタラップを登る。 この旅2度目のデリーを慌しく通過し、次の行き先はガンジスの聖地、思い出の地「バラナシ」へと向かうのだ。〈続〉 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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