「バラナシでみる夢」の巻
雨あがり 同じ場所 同じ時刻。
いつか見た空全体を覆う虹が
不意に視界に蘇る。
まさにこれは。まさにこれ。
鐘の音が重なり合えば迎えの合図。
神か、犬か。
雑踏の足元をすり抜けてこちらを
振り返り、ニヤリと笑う。
眉間の赤いビンディはまるで
撃ち抜かれた血の色。
「すべて知ってるぞ。」
一瞬にして周囲の音が
地面に吸い込まれる。
静寂。走り去る。また音が溢れ出す。
路地の中からなかなか
抜け出せないで困っている。
風が吹き、ついに景色まで
流されてしまった。
蛇行するトンネルの向こうへと
どこまでも続く光の残像。
その先の先は、忘却の彼方へ。