岩崎宏美は昇ったり降りたり
人生、何が起こるかわからない。突然のことながら「岩崎宏美」のコンサートに行くことになった。夕方、ちょっと仕事の手を休めてデスクで雑誌などをパラパラめくっていると、天才営業部長のTさんが寄って来て「あのさあ、これから岩崎宏美のコンサートいかない?」と言ってきた。「は。なんですト?イワサキヒロミ?」と思わず聞き返すワタシ。「そう。岩崎宏美。得意先の招待でさぁ、あとうちの若いコ3人と一緒に行くんだけど、どうも年代が離れすぎてて知らないらしいんだよね。キミならボクとも同世代だし」って、アナタ42才、ワタシ37才。世代は違います。会場はオフィスからそう遠くないので、終ってからまた仕事に戻る事にして、とりあえずお付き合いすることにした。一緒に行ったのは、T部長とワタシ、28才と25才の女子、29才男子。年少組の約3名は、岩崎宏美の歌といえば、「ものまね王者決定戦」のコロッケとか、「懐かしのヒット歌謡」といった企画番組で目にしたことはあるものの、リアルタイムではまったく記憶にないという。そりゃそうだな。今回のコンサートツアーは、「デビュー30周年記念」だそうだから、デビュー当時は彼らは生まれてないもんな。それにしても、デビュー30周年って、いったい今何才?と思ったら、今年45才だそうな。ふーん、15才でデビューしてたんですな。時間ギリギリに到着すると、約1,000席あるコンサート会場は、驚くことに満席。しかしさすがに年齢層は高いぞ。平均50才といったところか。男女はほぼ半々だが、客席をパッと見た色のトーンが、なんだかこげ茶色な感じというか。ステージは非常にこじんまりしていて、中央にプチ・タカラヅカ的な、手すりが付いた5段ぐらい昇ってすぐ降りる、演出用の階段がセットされている。舞台の左には4人編成のストリングスが、右には同じく4人編成のバンドがスタンバイ。アップテンポのオープニング曲が流れ、ついに宏美が舞台に登場である。おぉ、若い!45には見えないぞ。それになかなかキレイじゃないか。昔のあのオカッパロングの頃よりもずっと洗練されたオトナのイイ女、という感じだ。ステージでは、昔の大ヒットメドレーありーの、土屋昌巳による新曲ありーの、ユーミンや山口百恵の名曲カバーありーの、と熱唱に次ぐ熱唱。しかも一曲歌うごとに、例のプチ・タカラヅカ階段を昇って降りて、昇って降りて、歌って踊って、宏美は忙しい、忙しい。かつて商社マンと結婚し、二児の母となり、離婚し、今また歌う彼女の生き様をまるで凝縮したような舞台演出ではないか。てなことを考えながらも我々リアルタイム世代は、それなりに自分の当時の思い出を頭に浮かべながら若干の郷愁とともに聴いていたのだが、若いヒトたちは、「コロッケと同んなじー」などと言って、ただゲラゲラと笑っていた。観客は「ひーろみー!」とはさすがに誰も叫ばないものの、「シンデレラ・ハネムーン」なんかに合わせて、大阪のおっさん&オバハンたちが激しく頭をふりながら手拍子する姿はなかなかスゴイものがあった。なんだかよくワカラナイ熱気と興奮に妙に刺激を受けたワタシは、その後一旦会社に戻って仕事を片付けた後、午前2時頃から仲間とともにカラオケボックスにでかけ、朝の4時まで「筋肉少女帯」を絶唱したのであった。あぁ・・・疲れた。