メロンパンに人生を賭けられるか
最近、近所の駅前に「メロンパン」の移動式販売カーがよく出没するので、見かけると時々買うのだが、これがなかなか盛況で、たかがメロンパンごときに先日は寒い中を20分も並んで待たされた。どうも近頃はあちこちのTV番組で紹介されたりしていて、この「移動販売のメロンパン」がちょっとしたブームになっているようなのだが、実際に焼きたてのアツアツを買って食べてみると、確かになかなかウマイ。形は真ん丸で、メロンの香料もついていないので、これは厳密にはメロンパンというよりも「サンライズ」じゃないのかと思うのだが、いずれにしても、通常のメロンパンに比べて一回りは大きいと思われるこのパンをガブリと噛むと、クッキー状にこんがり焼けた表面の生地がカリリと香ばしいのだが、中身を割ると一転して、まるで崩れ落ちる新妻の着衣の隙間からのぞく太腿のごとくモッチリとした白い生地から、甘い香りの湯気が鼻孔をかすめてふわりと立ち昇る。(おぉ官能的表現)しかし、このメロンパンの移動販売という商売、店舗の名前を見ているといくつかの組織があるようだが、基本的にはフランチャイズ方式で運営されているようだ。ちなみに、近所の駅前によく出ているのは比較的新興勢力の「メロンちゃん」というグループで、販売カーのボディには店名ロゴと一緒に、キャンディキャンディもどきの不気味な女の子のイラストが描かれている。試しに「メロンちゃん」でネット検索してみると、この運営元とみられるサイトが見つかった。この中に「移動式メロンパン 開業者募集中!」というページがあり、見ると「1日800ヶ売り上げた時のシュミレーション(平均それぐらいは売れるとか)」というのがある。途中の計算は割愛するが、1日800個×25日稼動で、月間20,000個。その結果、月間純利益=737,000円 年間純利益=884.4万円。なのだそうである。なるほど、そういえば近所の「メロンちゃん」のお兄さんも脱サラ組っぽい雰囲気だったけど、この不況・リストラの嵐の中、サラリーマン生活に見切りを付けて「これならイケル」と勝負に出たのかもなぁ。この収益計算を見ればワタシでも「いっそ脱サラして、独立開業した方がエエかも」という思いが一瞬脳裏をよぎるが、いやいやしかし冷静に考えるとそういうワケにもいきますまい。勘違いしてはいけないのは、今は「ブーム」なのだ。ブームが去れば、どうなるのか。もともと日本人には頻繁にメロンパンを食う食習慣なんてない。しかも、今は寒い季節だからこそ「焼き立てアツアツ湯気湯気パン」が食欲をそそるが、コレ、真夏の灼熱の炎天下に食べたいか?梅雨の時期はお客が来るのか?病気の時はどうするのか?うーむやっぱワシにはできんなぁ。なんてことを考えながら、人生の勝負に出られない小心者のワタシはあくまで「お客の立場」として、移動販売に賭けるお兄さん達に「たまには買うから、ブームが過ぎても頑張ってネ。」とささやかにエールを送るのであった。