たべるトンちゃん
思い返せば、小、中、高校とずっと図書委員をやっておりました。成績というものに関心がなかったので、興味の持てない授業中はもっぱら読書時間と化していました。もちろん何度も本を取り上げられ、職員室へ返してもらいに通いました。「そんなに本が読みたいなら図書委員でもやったらどうか?」毎回同じような経緯で図書委員の役割を持たされました。そんなわけで遠い昔の学校時代、図書室はとても馴染み深い場所でした。小学生時代の6年間、図書室でほとんど毎月のように読み返した本があります。「食べるトンちゃん」絵本界では有名な初山滋の絵本の復刻版なのですが、シンプルな絵で、コマ漫画のような感じです。この本をなぜ毎月のように手にとったのか?マンガのようで読みやすかったということもありますが、それよりも私を惹きつけたのはその内容でした。トンちゃんは子豚です。食いしん坊のトンちゃんはお菓子も、石炭でも、シャボン玉でもなんでも食べてしまいます。ある日、知らないおじさんがやって来てトンちゃんを何処かへ連れて行ってしまいました。最後の頁は「たべる とんちゃん は トンカツや に かはれて ゆき たべられる とんちゃん に なりました。 おしまひ ビィ」という一文で終わっています。初めて読んだときは大変なショックでした。「こんな終り方あるの?」その後、何回も、あの終わり方は自分の思い違いではないか?自分の夢の中のことではないかと、図書室に行くたびに確かめずにはいられなくなりました。もちろん結末はいつも同じなのですが…。何年か前、古書店で同じ絵本をみつけ、すぐさま買い求めました。すぐに確認した最後の頁はやはり「たべるとんちゃんはたべられるとんちゃんになりました。」……今日も久しぶりに、結末を確認してしまった私です。無自覚な「たべられるトンちゃん」にならないように気をつけたいと思います。