カテゴリ:父
気がかりだったのは弟の事である。3歳で父を亡くしたことが、彼にどう影響を与えるかがずっと心配だった。ぼんやりと、自分が父親代わりに少しはならなくてはと思っていたが、私では難しかったと思う。勉強がうまく出来なくて酷く叱ったことがある。結果、まさに彼の不得意分野にしてしまった。自分が口を出したものは、みんな苦手になってしまったかも。(ごめん>弟へ)
でも、心は綺麗なままで育ってくれたと思う。今、かわいい娘の父親となった彼は、むしろ私よりもしっかりしている。何よりも、とても母を大切にしてくれている。(母の事、いろいろありがとう>弟へ) 実は、一昨日(24日)、弟が上京してきたので、彼に聞いてみた。 (名前は仮称で拓郎にしておきます。) 「お父さんのこと、拓郎は知ってるの?」 「ああ、なんとなくは知っている。でも、お母さんに聞いても話さないんだ。ついこの間も聞いたんだけど、借金がどうのこうのとしか話さない。直ぐに話をはぐらかす。だから、聞いちゃいけないんだと思って、それ以上は聞いていない。ただ、自分も、結婚して、子供が出来て、そろそろ本当の事を教えてくれてもいいと思っている。だけど、教えてくれないんだ。」 「そうか・・・、拓郎の想像のとおりだよ。状況からして分かるよね。」 「そうなんだ、それって、やっぱり、自分で・・・って事?」 「そう、その通り。」 その後の彼の言葉を心配したが、拍子抜けするくらい平凡だった。 「ショックだなぁ。そうは思っていたけど。」 彼は、薄々そうは思っていたようだが、確信はしていなかったようである。 しかし、彼はずっと小さい頃から、この疑問を持ちながら暮らしていたことになる。誰かに聞きたくとも、母のことを思うと、誰に聞いてもいけないと思ったようだ。この事を、彼は辛いとか、苦しかったとか、そんなことは私には言わなかったが、母や私同様に、彼は彼で、もしかしたら私なんかより百倍も万倍も悩んでいたのかもしれない。私は、そんなことすら気が付かず、あるいは見て見ないふりをしていたのである。罪だよね。 その後、死んだ場所、その時の事、直前の出来事、親戚の話、いろいろした。覚えていることは、すべて話した。彼は、さかんに死んだ場所の事を私に聞いた。実は、それは、彼もよく目にするビルの一室である。彼は、今度そこに行ってみるという。出来れば、一緒にいきたいと思っている。 すっきりしたなんて言う実感はない。ただ、どうして、28年も必要だったのか不思議に思う。伝えようと思ったきっかけになったのが、TVドラマだったというのは格好悪いけれど、きっと、私も受け入れる準備が出来ていたのだと思う。父と同じ歳になっていた自分が、あの日、ドラマに影響を受けて、父の気持ちを本当に想像してみたとき、突然襲ってきた途方もない悲しみ。それが自分の心の中にあると気が付いた時、話さなきゃいけないと思った。 気がかりなのは母のことである。ずっと弟に本当の事を言えなかったということは、母のしこりは小さくない。いったい、どうした解けるのだろう。このことをずっと弟と話し合った。 一応の結論としては、自然と自殺の話題が出たときに、弟から、「お父さん自殺だったんでしょ。もう、だいたい分かったよ。お兄ちゃんからもなんとなく聞いたよ。」と、静かに知ったことを伝えようにということになった。この役目を弟にお願いするのは少し気が引けたが、その方が、私もいいと思っている。 もし、三人で父の事を率直に話し合うことができる日が来たら、初めて、父の苦しみも終わるに違いない。 ※ 皆さんのコメントでそれに気が付きました。本当にありがとうございました。 終わり お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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