「このえびフライはフライというよりも、ジャンプだね」
と、いつも昼どきの大衆食堂で顔をあわせる工事現場の男が言った。えびは確かに、皿の上で跳ねているのだが、巧すぎてつまらない冗談に、僕はわりばしをくわえて「うー」とうめきごえをもらした。えびはなおも跳ねている。横に添えてあるキャベツの千切りとレモンの輪切りとタルタルソースをそこらへんに撒き散らしている。紅いプラスチックボデーのテレビからは、二十一世紀の日本にふさわしい政治関係のニュースが流れているのに、僕にはそれがなぜか、あのころの万博の映像に見えて仕方がない。芸術はばくはつだっ!と僕の心がつぶやいたとたん、目の前に座って飯をもしゃもしゃ食っている工事現場の男の頭から、ヘルメットが吹き飛んだ。それを見たほかの客はとりあえず唖然としているが、厨房のアルバイト店員と女店主は知らんぷりしてネギ炒飯を作っている。「ネギ炒飯にワンタンいっちょぉお待ち!」 吹き飛んだヘルメットは「安全+第一」のマークをぴかりとさせながら、空を飛んで月面着陸し、つきのあばたをさらに細かく建設した。飯の上には月のかけらがぱらぱらぱらと降ってきたが、男はそれには無頓着で、黙々とかきこんでいる。ああ、無生物みたいな人間なんだなぁ、なぁんて思ってみたんだけど、僕のカツ丼の上にだって、それは降ってきている。横になったカツは、その仕打ちに少しむくれているのか、何も言わない。
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青いのーとぶっく
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