衆議院が解散になって総選挙が公示されて4、5日経った10月19日の東京新聞は、裏金問題で処分され総選挙にも不出馬を決めた塩谷立前衆院議員のインタビュー記事を掲載した;
27日投開票の衆院選で最大の争点となった「政治とカネ」の問題。自民派閥裏金事件を起こした旧安倍派(清和政策研究会)の座長で、党から処分を受けて政界引退した塩谷立前衆院議員(74)が、本紙のインタビューに応じ、「真相解明がない中で、本質的な議論がされていない。だから処分も法改正も、結局国民から支持されなかった」と語った。
裏金事件を受け、岸田文雄前首相も8月に辞任表明に追い込まれたが、塩谷氏は「(辞任が)遅いよね。岸田さんが辞めるなら、こちらの処分は何だったんだ」と首をかしげる。「私か党のために辞めて収まるなら良かったが、収まらなかった。『犠牲』にもなれなかったという意味では、犬死にだ」と話した。
派閥への捜査では、パーティー収入のキックバック(還流)の不記載が長年続いていたことが明らかになった。塩谷氏は「還流があることは知っていたが、不記載は知らなかった」と改めて釈明。一方で「不記載の自覚があった人もいたはずだが、調査が不十分なので、事実は不明のままだ」と述べた。
事件後、自民内の派閥がほぼ解散したことについては「派閥をなくしてどうするのか。議論がしにくくなるし、派閥は『クラス分け』と呼んでいたが、人事でも適切な評価に必要だった」との見解を示す。先の通常国会で政治資金規正法が改正され、国会議員の責任が一部強化されたが「場当たり的な議論だけで、(政治とカネの)本質的、本音の議論がされていない」と訴える。
党内には衆院選がみそぎになるとの見方もあるが「選挙結果がどうなるにせよ、国民の信頼回復は簡単ではない」と指摘。「多くの声を聞いて政策立案する『仕事』をしようとすれば資金はかかる。国会議員が何をしているのか、本来もっと発信が必要だったかもしれない」と振り返った。
文部科学相や党総務会長、選対委員長などを歴任した塩谷氏は1990年、父・一夫氏の地盤を引き継ぎ、政界入り。初当選時から清和会に所属し、第2次安倍政権下で事務総長を務めた。今年4月、派閥幹部だったことを理由に、党から「除名」に次いで重い離党勧告処分を受けた。9月に引退を表明した。
(大杉はるか)
★用語解説★ 自民派閥裏金事件
東京地検特捜部が捜査した政治資金規正法違反(虚偽記入)事件。安倍、二階、岸田の3派閥は、派閥パーティー券の販売ノルマを超えた利益の各議員への還流分や、収入額の一部を政治資金収支報告書に記載せず「裏金化」していた。不記載額は2018~22年で計17億円超。今年1月、3派の会計責任者や、不記載額が「3500万円以上」の国会議員ら計10人が立件された。
2024年10月19日 東京新聞朝刊 12版 3ページ 「裏金事件『調査不十分』処分受け引退 塩谷前議員」から引用
裏金事件が「しんぶん赤旗」のスクープで世間の知るところとなり、岸田政権は政治資金規正法の一部を改正して「20万円以上の献金は、献金した企業名を明記する」となっていた法律を「5万円以上の献金は」と変更し、派閥は解散する(麻生派だけは解散せず)、裏金議員で金額が多額の者、責任が思いと見られる議員(例えば塩谷議員のような)に離党勧告を出す、等の「改革」を断行したのであったが、一向に内閣支持率は向上せず、岸田氏は次の総裁選挙には出ないと宣言して「党内刷新」のイメージを作る演出をする以外に方法はない、と言うことになったのであった。だから、早めに「離党勧告」に従って「党のためになるなら」と離党した塩谷氏のような立場の前議員は、「なんだ、自分に対する処分は全然意味がなかったじゃないか」とほぞを噛むことになったのであった。しかし、この記事の中で、塩谷氏は「多くの声を聞いて政策立案しようとすれば、資金はかかる」などと言ってるが、そんな言い訳が「だから、裏金も実は必要なのだ」などということにはならないわけで、インタビューした記者も、黙って聞いてないで、鋭く突っ込みを入れるべきだったのではないかと思いました。