Barney / Barney Wilen (RCA)
このCDがまた復刻されるらしい。バルネ・ウィランのリーダー作ではあるが、ケニー・ドーハムの一世一代の名演のひとつとして、猫麻呂にとってはマタタビのような作品なのだ。最初の"Besame Mucho"は調律の狂ったピアノのイントロから始まる。音感のいい人にはちょっと辛いかもしれないが、これも場末のライブハウスのような感じでよい。(ただし、このライブはパリのクラブ・サンジェルマンでのライブなので、本当は場末ではない。)このひなびた感じがドーハムにはピッタリなのだ。まさに哀愁のトランペット。こんな鉛色のベサメ・ムーチョが他の誰に演奏できようか。ウィランの後に登場するジョーダンが、これまた塩味の効いたソロで良い。B級度満点の演奏である。2曲目が"Stable Mates"。こぶしの効いたドーハムのソロを夜中にしみじみと聴いていると、「ジャズファンやっててホントに良かった」と思う。ウィランのソロもどことなく必死さが伝わってくる。続いて3曲目"Jordu"、4曲目"Lady Bird"、5曲目"Lotus Blossom"と、ジャズマンの書いた佳曲が並ぶ。こういうファンの琴線に触れるような選曲がニクい。全てにコメントを書き始めるとキリがないくらい、聴きどころ満載である。6曲目"Everything Happens to Me"はウィランのソプラノサックスをフィーチャーした曲。ドーハムの演奏で聴きたかったな・・・。7曲目は"I'll Remember April"。ビー玉をぶちまけたようなジョーダンのピアノがフィーチャーされている。ドーハムはまたお休みだった。"Temon Dans La Ville"は"Walkin'"に似たダサダサなブルースだが、このメンツだから今更ダサくても構わないだろう。ドーハムの臭っさーいフレーズがキまりまくっているのが面白い。このCD、一家に一枚常備すべき名演と太鼓判を押したい。猫麻呂ポイント:★★★★★(5.0)Barney / Barney Wilen (RCA)Kenny Dorham(tp), Barney Wilen(ts,ss), Duke Jordan(p), Paul Rovere(b), Daniel Humair(ds)Recorded on April 24 and 25, 1959