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テーマ:最近観た映画。(40139)
カテゴリ:映画日記
長田弘「いい時間のつくりかた」という詩にさそわれて、朝、自分のためにスコーンを焼く。 ボウルに入れた小麦粉に、切ったバターを入れて指さきで揉みこんでいると、体がゆっくり目をさましていくのを感じる。 焼きたてを半分に割って、湯気の立っているところへ、青森のおいしいりんごジャムをのせていただく。 一日にいい時間をつくるんだ。 とても単純なことだ。 とても単純なことが、単純にはできない。 (長田弘詩集「はじめに…」より) 雨の休日の愉しみに、おいしそうな映画のDVDを二本借りてきました。 「ホノカアボーイ」と「南極料理人」。 両方とも、四回ずつ見る。 「ホノカアボーイ」は、ハワイが舞台。 見るたびにホノカアの景色や風や温度が体の中に入ってきて、三回目くらいからなつかしさで胸が苦しくなるほどだった。 最後の場面も、一回目より二回目、三回目より四回目で涙がたくさん出た。 ビーさん(登場人物のおばあさん。ホノカアに実在した人)の料理は、ほんとにビーさんの料理だった。 ハワイに暮らしてきた、日系人の、おばあさんの。 高山なおみさん(この映画で料理を担当しているのです)がビーさんになりきって…というより、ビーさんが高山さんの体を借りて、レオ(主人公の男の子)のためにもう一度ごはんを作っているみたい。 ごはんを作ることは、愛すること。 ビーさんの味は、どこで誰と暮らしても、レオの中に消えることなく残ってゆく。 もし、レオが誰かにごはんを作れば、その味がまた別の人の中に根を下ろす。 そうやって、ずっとずっと続いてきたんだなあ。 ビーさん特製のマラサダ(ハワイの揚げパン)がとびきりおいしそうだった。 今度、休みの日に挑戦してみよう。 「南極料理人」は、南極が舞台。(対照的だ!) ペンギンもアザラシも、ウィルスさえも生存できない極寒の地で、男八人が約一年の共同生活を送る。 堺雅人演じる料理人の西村さんが、毎日まいにち、男たちのために三度のごはんを作る。 おにぎりに豚汁。特大エビフライ。フルコースにステーキ、手打ちラーメンまで、リクエストに応え何でも作る。 (こちらの映画は、飯島奈美さんが料理を担当しています) 男たちは、「おいしい」とか「いつもありがとう」なんて歯の浮くようなことは言わない。 「いただきます」もそこそこ、一心不乱にがつがつ食べる。 そのようすを、あの素敵な、ちょっと途方に暮れたような笑みをうかべて見守る西村さん。 最初は盛り付けも工夫して、よそゆきの料理を作っているのに、どんどん適当な感じに(朝ごはんにカニとか!)なっていくのが見どころ。 それと共に、西村さんが「オカン」化してゆくのが愉快。 テーブルにつくメンバーも、いつの間にか家族みたいになっている。 お父さんぽい人とか、おじいちゃんみたいな人とか、何となく役割が決まってくる。 毎日一緒にごはんを食べるって、すごいことだ。 台所には、暮らしのリズムと、温度と、祈りが染みこんでいる。 自分の台所をもつことの幸せを思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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